鯨井香生子はイライラしたまま事務所に戻って来る
渡辺美沙「どうだった?」
課長の美沙が声をかける。香生子は美沙のデスクに両手をついて(ほんとうはバンっと叩きたかった)
香生子「聞いてくださいよ、あいつムッチャ失礼なヤツで…」
美沙「あなたは失礼なことしてないよね?」
香生子「殴ってやろうかと思いましたよ」
美沙はこの言葉に焦る
美沙「殴ってないよね?」
香生子「まあ殴ってやろうとは思いましたが、あたしも大人ですから殴ったりしないですよ」
美沙はため息を吐く
美沙「よかった」
香生子「良くないですよ、あんなのが…」
香生子は怒りがおさまらないが、美沙の言葉で我にかえることになる
美沙「あの方は専務よ」
香生子「せ、専務…」
美沙「会長のお孫さんでね」
香生子は頭にのぼっていた血が一気に引いていった。美沙が何かを言っているが、最早耳に入らない
美沙「鯨井さん」
香生子「はい」
やっと帰って来たが、生きた心地がしない
美沙「とにかく連絡取ってみるから、ちゃんと謝ってらっしゃい」
香生子は項垂れたまま自分のデスクに戻る
前田聖子「どないしたん?何かあったん?」
香生子は顔をあげ
香生子「どーしよ~」
香生子は応接室の話から課長の話まで話す。聖子は顔をしかめて
聖子「そりゃやってもうたやな~。とりあえずもう1回会って謝るしかないわな。下手したらクビもあるかもしれんしな」
香生子の頭の中でクビと言う言葉が繰り返し流れている
そんな香生子を見て
聖子「こりゃアカンかも…」
とポツリと言う。香生子はそんな言葉は耳に届かず、頭を抱えていた
つづく