羽美は廊下から中庭を見ていた
「あなた今日もカレを見ているのね」
いきなり声をかけられて驚く。この学校の特進科は他人は声をかけたりはしない。だいたい休み時間は自分の机で勉強をしている。他人には干渉している暇などはない
「好きなら告っちゃえばいいじゃない」
羽美は視線を外し
羽美「出来るわけないじゃない」
「フラれるのが怖いの?」
ドキッとする
羽美「私なんかが…」
彼女はフフフと笑い
「そうね、カレは好きな人がいるかもね。なんて言ったっけ、普通科の…確かあなたのお友達の…」
羽美「楠木愛莉…」
「そうそう、楠木愛莉。でもさ、あんな女よりあなたの方が…」
羽美はこの女子に心を鷲掴みにされた気がして怖くなった
羽美「もう授業が始まるから」
教室に逃げようとした。しかし、彼女に肩を掴まれ
「いいの?」
耳元でぼそっと言われ、心の中にその言葉が広がっていく
お昼休み
羽美は地学準備室に入る。地学準備室と名前はついているが、この学校には地学室などはない。今はたんなる物置になっている。普通なら鍵がかかっているが、ドアはすんなりと開いた。窓際に植木鉢が置いてある
「その植木鉢を下に落としてごらん。心がスッとするし、投げる前に、カレの名前を言うんだ。そーすると恋愛が成就するんだよ。これ、この学校の七不思議なんだよ」
と言われると、植木鉢を落とすとほんとにかなう気がした
羽美は植木鉢を持ち上げる。けっこうな重さがあった。これが落ちたら…
急に怖くなる。しかし
「なにしてるの?」
彼女に背中を押され、植木鉢を落としてしまう。下が騒がしいのに気づく
血の気が引き、クラっと立ち眩みがする
彼女が羽美の両肩を掴む
羽美「フフフ、ハハハハ」
羽美が突然笑いだす
羽美「ようやく手に入れた。これでやっと…」
羽美は自分の両手を見つめ、再び笑い出した。この時あの女子は消え、地学準備室は羽美1人だった
つづく