こんな白昼夢を見た。
ある人が通りがかり、新聞記事をスクラップしている僕に言った。
「相変わらず几帳面だね」
「A型ですから」と僕は答えた。
またある人が通りがかり、ランチョンマットの底辺をテーブルの底辺から3センチの位置にきっちりと平行に揃えている僕に言った。
「君は必ずランチョンマットをその位置に揃えるね」
「A型ですから」と僕は答えた。
26歳の1月から28歳の1月まで付き合っていた彼女が、ある天気の良い日曜日に午前10時から夕方の17時までMTRの前でギターを弾いていた僕に言った。
「そんなに同じことばっかりやって飽きないの?」
「A型だから」と僕は答えて、彼女と夕食を食べに行く準備を始めた。
打ちっぱなし場で練習球に混じっていたロストボールを受付に届けに行くと、一緒に来ていた友人が言った。
「そんな面倒なことよくできるね、構わず打っちまえばいいのに」
「A型だからルールを守っちゃうんだよ」と僕は答えて、キャディバッグの中で綺麗に並んだゴルフクラブの中から五番アイアンを取り出した。
27歳の1月から、35歳の2月まで一緒に暮らしていた女性が言っていた。
「あなたってカップラーメンの粉末スープとかを開ける時、必ず『切り口』って書いてあるところから開けるわよね。別に『切り口』って書いてなくても、力を込めればだいたいどこでも開くのよ」
「A型だから」と僕は答えた。
「でもA型だから、わたしが作った料理も皿にキャベツの切れ端一つ残さず綺麗に食べてくれるのかしら?」彼女は僕の首に手を回しながら言った。
僕は頷いて、彼女の腰に手を回し寝室へと誘った。
ボスの命令でニューヨークに渡り、二年前から計算し尽くされた作戦で袋小路に追い詰めた僕にライバルギャングのボスであるケネディが両手を挙げて震えながら言った。
「お前みたいにしつこくて、用意周到な奴は初めて見た」
「A型だからな」そう言って僕はケネディの額に銃口を押し付けていた、リボルバーの引き金を引いた。
母の一周忌のため、久々に会った叔母が言った。
「あなた本当はA型じゃないのよ。あなたのお母さんが几帳面に育つかなと思って、冗談であなたにそう言ったんだけど。あなた信じ込んじゃったのね。だから、お母さんが亡くなったらあなた本当はO型だって伝えて欲しいって言われてたの。本人の口からは今さらとても言えないって」
「えっ?」
翌日、僕は病院に行って血液検査を受けてきた。O型だった。