いつか~君と行った~映画がまた来る~♪
授業を抜け出して~二人で出掛けた~♫
ばんばひろふみさんの名曲だが、当時、歌手として全く売れずに、「これがダメなら辞めよう」と最後にイチかバチかで当時売り出し中のユーミンに作曲を依頼し、出来上がったのがこの「いちご白書をもう一度」らしい。これが大ヒットとなる。私が若い頃はカラオケでこの曲を歌う先輩方が沢山いた。
映画「いちご白書」は観た事ないが、この歌を聴くと学生時代に有楽町の映画館で観た「紅の豚」を思い出す。たまにTVで紅の豚が放映されると、あの頃の記憶がカラーで蘇る。今頃どんな暮らしをしているのだろうかと、、、
君も観るだろうか~紅の豚を~♪
男とは過去に生きる生き物だ。
さて、昨日、「印刷白書2023」が届いた。毎年この時期に届く公益社団法人 日本印刷技術協会(JAGAT)が印刷業界の概況についてまとめた本。マクロの統計資料から上場企業(印刷分野)の分析、活躍している個社の事例などがあり、参考になる。
印刷産業の市場規模(2021)は4兆8555億円で前年の104%増だ。
4%も増えている事に驚くが、2020年がコロナ禍初年で前々年比の93%と最悪だったことからすると、少し戻ったに過ぎない。
ピークだった1990年の8兆9286億円からすると約半分の54%になっている。
事業所数も13536社で1988年の47500社の3分の1以下に減少している。
2022年の統計はまだだが、紙・インキ・版などの原材料が高騰したので、売価に反映している可能性もあり、2年連続の市場規模拡大があるかもしれないし、長期の下降トレンド通りかもしれない。
いずれにしても、長い目で見れば、さらに市場縮小が続くだろう。
廃業や倒産も確実に増える。
「紙」というメディアはとうの昔に主役から降板している。チラシ、カタログ、DM等の紙メディアに誘発されて購買する経験をしたのはいつが最後だろうか。覚えていない。
因みに業界を代表する大手二社は利益の約半分をエレクトロニクス分野で稼いでおり、社名から「印刷」を消すなど、もはや市場から印刷会社と見られたくないらしい。株価対策もあるのだろう。自社株買いなどもやっているが2社とも東証が求めるPBR1には達していない。
白書の冒頭に今年のKeynoteとして
『 「創注」「連携」こそ、印刷業界の目指すべきこと 』
とある。印刷需要の回復など望むべくもないから、自ら需要を創り出せ。その為にはBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)かマーケティングサポートに進出すべきであると。
確かに、とある企業は大手流通企業の店舗の販促物のデザイン、印刷から各店向けの受発注、そして配送までを一手に引き受けており、持続的に成長し、高収益をあげている。
同じようなことにチャレンジしている会社も知っている。
発注者側は面倒なのでそれら業務をアウトソーシングするのだから、DXを駆使した効率化や発注企業の利便性向上が必須で、それには他社との連携が必要ですよと白書は指摘している。
実はこの手の提言は昔から言われてきた。全国印刷工業連合会(全印工連)も何十年も前から度々提言してきた。昔読んだアメリカで発刊された印刷会社の未来について書かれた本にも明確に示されている。
まともな印刷会社の経営者なら誰もが読み、見聞きしたはずだ。実際にトライした会社も多くあっただろう。しかしその域に達した企業は全国でも片手で数えられるほどだ。
過去の成功体験が邪魔するのか、大きく業態転換できなかった企業が大半ではないか。印刷機等の技術の進化により、同質な製品を各社が提供できるようになり、競争の激しい状況に陥った中で、インターネットという破壊的イノベーションにより、印刷物は主要なメディアの座から陥落し、総需要が減少していく時代に突入。ただ、その頃は業界全体がまだ豊かで、「ゆでガエル」と言われようとなんとか誤魔化すことができた。一か八かでユーミンに作曲をお願いしなければならない状況ではななかったのだ。
しかし、そうこうしているうちに「ネット印刷通販」という次なる破壊的イノベーションが登場し、これまで発注企業にはブラックボックスだった印刷料金が信じられない低価格でHP上に明示されるようになった。
これで業界全体の富がぶっ飛んだ。
ポーター的競争戦略では規模拡大によるコストリーダシップか、差別化でしか競争環境を緩めることはできない。中小企業がコストリーダーシップを目指すのは無理だし、印刷技術がコモディティ化した今、製品で差別化できないなら付加サービスで差別するしかない。こう業界向けの教科書には昔から書いてあったが実行できた企業は極めて少ない。
成功事例に挙げられている会社は顧客からの様々な要請に努力し応えていくうちに自ずと辿り着いたのではないか、そもそも置かれた環境や地理的要因、抱えていた顧客層、設備、人員が大きく異なる中である一つの会社の成功した結果だけ見せられても、誰もそこに至るプロセスを思いつかないだろう。
業界へのこれら提言は最終形としては極めて正しく、素晴らしいものだが、いざ実行するとなると難易度がとても高く、万人に広く再現性のあるものではなかったし、成功事例の前提となる個社の状況やそこに至るプロセスを明示しない限り、参考にはならないというのが私の結論だ。
ただ一つ言えるのは、良い時に何に利益を再投資するか、それが成否を分けた。
「良い時」それはこの業界が好調だった1990年~2000年前後だったと思う。
適切に再投資できた企業がどれくらいあったのか、、
実は難易度の高いBPOやマーケティングサポート等で業態転換などしなくても、より確実な方法があったと思うようになった。
そしてそれを実行した企業は今も隆々とそして堂々と業界の会合にも出席されている。
不動産投資
まだ印刷で儲かっていたころに、今後の業界の厳しさを読み切って、不動産投資した企業は少なくないのではないか。コロナ禍でも家賃収入という安定収益が支えになったはずだ。
2018年秋に新婚旅行でハワイに初めて行ったが、ワイキキのど真ん中で東京の印刷会社の経営者の集団に遭遇した。
遊びに来てますと。
この構造的不況業界でこんな余裕をなぜお持ちなのか?東京には景気の良い印刷会社がそんなにあるのか?と不思議だったが、今思えば、彼らは恐らく安定した不動産事業からの家賃収入で潤沢なのだと思う。過去に賢い選択をしたのだ。
少し調べると、東京には本業の営業利益を大きく上回る不動産からの収益をもつ企業がある。
東京だけではない、コロナ初期に地方の娯楽業界大手の経営者の方とお話しする機会があったが、パチンコホールが開店休業状態の中、
「不動産事業の家賃収入があったから助かった」
と仰っていた。土地などの有休資産を保有していたり、資金等の状況が許すなら不動産投資は再現性の高い確実な打ち手になり得ると思う。
(私は不動産投資は未経験で、なんの知見も有していません、投資は自己責任でお願いします)
ではこれから、私も不動産投資でのリスクヘッジを考えるのか、、
(実際にコロナ初期には銀行から大型案件が持ち込まれた。)
それは無いだろう。
本業に思い切った大型投資をしたので、余った土地もなければ、お金もない、、
徹底した業態化、他社との差別化こそ我々の生きる道だ。
空港ラウンジにて