きっと「好き」ってこういうこと。(その3) | 「自分のままで“養護教諭”になる」YOUKYOUカフェ・柏木むつき

「自分のままで“養護教諭”になる」YOUKYOUカフェ・柏木むつき

「自分のままで“養護教諭”になる」をコンセプトに、YOU(あなた)とYOU(あなた)を繋ぐYOUKYOUカフェを主宰しています。

いつもご覧いただき、ありがとうございますラブラブ

 

昨日の記事(その2)の続きです。

 

蜜蜂と遠雷の著者、恩田陸さん。

この作品は、500ページの大作ということもありますが、

なんと、「構想12年、取材11年、執筆7年」の練りに練られた作品です。

 

 

 

 

 

 

 

特設ページには、編集担当者さんのコメントが書かれています。

「構想12年、取材11年、執筆7年」とは『蜜蜂と遠雷』のプレスリリースや新聞広告で使ったフレーズで、恩田陸さんの担当歴20年以上になる私にとっても半分以上の年月この作品に携わり、3分の1の年月、月刊連載原稿の催促を続けていたことになります。

 

長く一つの作品にかかわるといろいろなことがあるわけで、その最大が3年に1回、開催される浜松国際ピアノコンクールへの4度もの取材です。

ふつうは4度も取材しません。

取材といってもバックステージを観察するようなことはほとんどなく毎日、会場の座席に身を沈め朝9時から夕方まで審査員でもないのにひたすらピアノ演奏を聴き続けるだけです。

 

2回目以降、毎度「先生また行きたいんですか!?」と呆れたふりをしながらも、

じつは無類のクラシック音楽好きの私は、しめしめとひじょうに楽しみにしていました。

まさに役得です。

 

この作品で私がやったことは原稿の催促以外なにもありませんが、4度の取材には音楽好きの私でなかったら、つきあえなかったかもしれません。それが作品のコクのようなものになっているといいのですが……。

 

私は当初、このコメントを読んだ時、驚愕しました。

そしてその後にすぐにやってきた感情。

「納得」と「畏敬」です。

 

 

長編小説だから、時間がかかるとはいえ、まさか、12年もかけて構想していたとは…。

小説を読んだ時、確かに恩田さんの凄まじいとでもいうべき知識量に衝撃を受けました。

世にいう音楽を専門にしている人に引けを取らない知識。

 

クラシックに関する知識はもちろん、

小説内に出てくるジャズや演歌などの分野の知識、

コンクールの審査に関する知識、

ピアノに関する知識…音楽の世界のありとあらゆる知識。

(少しネタバレになってしまいますが)華道の知識、養蜂の知識…。

 

これもきっと、恩田さんが書くことが「好き」だからできることなのだと思います。

根底にある「好き」の気持ちが12年の歳月をかけても作品をこの世に生み出す原動力になったのだと思います。

 

 

「好き」にはそんな力があるから。

「好き」だからこそ、たとえ困難なことがあっても、やらずにはいられないだろうから。

「好き」だときっと、時間が経つのも忘れてしまうくらい、夢中になってしまうだろうから。

 

 

 

 

 

恩田さんは音楽家ではありません。

恩田さんは作家です。

だけど、この本にはクラシックファンをも唸らせてしまうパワーがありました。

それだけでなく、音楽をテーマにしながら、音楽というものを乗り越えようともしていました。

 

行間に生まれる<余白>。

場面と場面の交錯する<あいだ>。

そこに恩田さんの「魂」が込められていたように感じます。

 

 

私はこの小説を読んで、

音楽を「音楽」と定義した時点で、本来は音楽であったはずのものを「音楽」から外してしまう、

そんな「音楽」のもつ限界にも言及している恩田さんに畏敬の念を抱かざるを得ませんでした。

それは、言葉としての「音楽」の定義でもあると思うから。

 

 

新しい「音楽」の創造に向かって。

 

 

恩田さんはこの小説を通して、ご自身の表現の枠をも破ろうとしているように私には感じました。

 

 

昨日の記事でも書きましたが、

「神様に愛されること」って畏れ多いことであるからこそ、

人がそれを引き受けて生きることにおののいてしまうのも、もしかしたら当然の反応の一つなのかもしれません。

 

 

恩田さんは、神様に愛されることを引き受けた人なのだと思います。

 

 

特設ページには恩田さんのメッセージもありました。

何だか話し方がとってもシャイな感じで、それもまた恩田さんの良さを引き出していました。

 

 

一旦はこのシリーズは終わりです。

長々とお付き合いくださった方、

その合間に「本、買ったよ!」と報告してくださった皆さん、ありがとうございます^^

 

また何か感じたことがあれば、備忘録の形で書き留めようと思います。

 

きっとこの本は、ふとした時に読みなおしたくなる本だと思うから。

 

 


 

 

 

 

あじさい。YOUKYOUカフェ7月以降の先行案内はこちらです音符

あじさい。YOUKYOUプライベートカフェご希望の方はこちらです♡

 

 

文章に愛を込めたインスタグラムはこちらですルンルンこちらをクリック