自宅は築50年越えの空き家をフルリノベーション

インテリアと家づくりが学べる、一級建築士のブログ

 

 

 

家づくりで頭を悩ます要因のひとつ、間取り。

 

「とにかく動線を短く!」

「家事が楽になるといいな」

「無駄なスペースを作らないように」

「楽しく遊び心のある間取りを♪」

 

 

などなど。

 

あーだこーだ言いながら、何度も図面とにらめっこです。

 

 

 

確かに自分が暮らしやすい理想の間取りを考えることは重要です。

 

 

でもね、よく考えてみてください。

 

 

今まで賃貸の狭い部屋に長年住んでいたのに、突如一戸建てでの暮らしを想像して

 

「きっとこうすると便利だろう!」

「こんな風に暮らしたい!」

 

という、願望だけで作りあげた間取りにはやはり限界があります。

 

 

しかも子供が生まれるタイミングで家づくりを始める人も多いですよね。

 

そうなると今までとはガラッと変わった暮らしが始まるのですが、それを事前に予測するなんてやはり無理があります。

 

 

 

恥ずかしながら私自身も我が家の間取りに関しては後悔してる部分もあります。

 

 

「リノベなので自由な間取りが難しかった」というのは言い訳で、失敗した原因は明確です。

 

未来の暮らしを正確に予測できなかった、これに尽きます。

 

 

というか無理なんですよ、自分自身のことであろうと未来を正確に予測するなんて…

 

 

 

 

また、オリジナリティの強い間取りも注意が必要です。

 

俗に言う、「間取りに合わせて暮らす」ということになりかねません。

 

 

例えば、建築家(と呼ばれる人、自称も)が作る家は、唯一無二の間取りが多いです。

 

その建築家のファンで、その間取りに合わて暮らすのが幸せだ!というお施主さんであれば問題ないですよ。

 

でも建築家と呼ばれる人たちは「同じ家(間取り)を作ってはいけない!」という心理的バイアスがかかってることが多いんです。

 

自身の付加価値を高めるために、オリジナリティに固執し過ぎたり…

 

 

建築家の設計した家は暮らしにくい、これもよく耳にする言葉です。

 

でもこれはしょうがないことなんです。

 

建築家が普通の間取りを提案していたら、商売あがったりですからね。

 

(もちろん皆がそういうわけではありませんが)

 

 

 

そんなこんなで、私はあまり冒険した間取りを提案しません。

 

敷地の大きさや方角が同じ場合は、毎回似たような間取りになります。

 

 

もちろん家族構成やお施主さんの要望、周辺環境や日射取得なども考慮して設計しますよ。

 

オリジナリティ溢れる間取りを提案するほうが喜ばれることも知っています。

 

 

「ここまで私たちのことを考えてくれて嬉しい!」

 

 

でもね、いくらヒアリングを繰り返したとしても所詮は他人なのです…

 

自分自身の未来すら正確に予測できなかったのに、なぜ他人の未来を予測できるでしょうか。

 

 

そもそも4人家族(この家族構成を想定することが多いので)の暮らし方って、皆そんな大差ないんです。

 

それなら、いわゆる普通な間取り(面白みのない間取り)がやはり正攻法なのかなと。

 

 

普通(見慣れた)な間取りって要するに過去の統計結果じゃないですか。

 

ということはそれが一番暮らしやすい可能性が高い、という風に考えるのが自然かと思うのです。

 

 

面積は小さめですが、いい意味で「普通」な間取り

 

 

 

インテリアや内装は気に入らなきゃ変えることが出来ます。

 

しかし間取りはそういうわけにはいきません。

 

 

これから家づくりを始められる方は、今一度間取りについて考えてみてはいかがでしょうか。