一級建築士である私が設計した物件をはじめ、インテリアや家づくりについて情報発信しています。

また、築52年の中古住宅を購入しリノベした記録、日々の暮らしについても書いています。

 

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今年の冬は電気料金の値上げが家計を圧迫しそうです。

 

更にラニーニャ現象の影響もあり、気温は低く降雪量も例年以上になるとのこと。

 

 

そうなると少しでも暖房費を抑えようと、24時間換気扇を止める人が増えてきます。

 

でも24時間換気を止めても問題ないのか?

 

今回はその辺について書いてみようと思います。

 

 

 

24時間換気とは 

 

建材などに含まれる化学物質が原因で頭痛やめまいなどが発生する、いわゆるシックハウス症候群が社会問題化し2003年の建築基準法改正で義務化されたのが24時間換気です。

 

2時間で家中の空気が全て入れ替わるようにしましょう、ということで新築住宅等への24時間換気設備の設置が必須になりました。

 

 

施行から間もなく20年が経とうとするこの法律、下の図を見ると一定の効果があったのは一目瞭然です。

 

住宅リフォーム・紛争処理支援センター公表

 

 

しかし2014年以降増加傾向になっているのが気になりますね。

 

超高気密化が進む建物に対して、適切な換気設計が行われていないのかもしれません。

 

 

 

 

冷たい風が入り込む給気口 

 

24時間換気の方式は第一種~三種の全3種類。

 

ちなみに今回は採用率の高い三種換気を前提に書いていきます。(二種換気は住宅でほぼ採用されません)

 

 

換気扇を使って屋内の空気を屋外に排出する、というのは一種も三種も同じですが、屋外から新鮮な空気を取り入れる給気方法が異なります。

 

一種の場合は換気扇と同じく機械で強制的に取り入れるのですが、三種は自然給気口といって壁に穴が開いてるだけのシンプルな構造です。

 

 

 

ちなみに我が家も三種換気で矢印で示したところに自然給気口があります。

 

冬は屋外の冷たい空気が入ってくるので、それを少しでも緩和しようとエアコンの吹き出し口近くに設けました。

 

 

どのような給気口も基本的には開け閉め可能で、冬になると一時的に閉じてる人が多いのもまた事実です。

 

 

 

 

給気口を閉じるとどうなる? 

 

実は給気口を閉じただけでは部屋の暖かさにあまり影響はありません。


 

換気扇を止めない限りは壁やサッシの僅かな隙間から外気を吸い込んできますので、結果的に普段と部屋の暖かさは変わらないのです。

 

 

 

ということで実際に給気口を閉じ換気扇を止めて、どのようことが起こるのか実験してみました。

こちらは我が家の間取りで青丸が給気口、赤丸が換気扇の位置になります。

 

本来は全ての換気扇を回すことで建築基準法で定められる換気量を満たすのですが、今回は✕印を付けた給気口と換気扇を止めて換気量を落としてみます。

 

 

そうすると換気量は約0.3となり2時間での換気回数は0.6回、すなわち部屋の空気の60%しか換気されないという計算になります。

 

建築基準法では2時間で1回の換気を行うことと定められているので、単純に換気量不足ということになりますね。

 

 

 

 

生活臭が気になる 

 

換気量を落として生活するとまずに気になるのが臭いです。

 

夕食後などもしばらく臭いが滞留するため、臭いに敏感な人は特に気になるでしょう。

 

 

続いてCO2濃度も計測してみました。

 

 

三人家族ということもあってか、寝室を含む各部屋でCO2濃度は1,000ppmを超えることはほとんどありませんでした。

 

CO2濃度に関しては家族の人数や部屋の大きさに影響を受けるので、一概に全てのお家でこの数値が出るとは言い切れませんが。

 

 

 

CO2濃度に関してはこちらも

 

 

ちなみにこのCO2濃度、車中では急激に上昇する恐れがあります。

 

先日、子供と2人で10分程度運転しただけで車内の濃度はこれです。

 

 

更に高濃度になると眠気や吐き気など人体に影響が出てきます。

 

「眠くなったら窓を開ける」

 

昔から言われてますが、ちゃんと理にかなっているわけですね。

 

エアコンを外気導入にしておくのも効果的です。

 

 

 

 

部屋の暖かさはどうなった? 

 

正直なところ外気温5~10℃程度ではよく分からない、というのが率直な感想です。

 

とはいえ換気量は確実に減っているので暖房費節約には多少の恩恵があるでしょう。

 

これからもっと気温が低くなってくると、体感的にも暖かさを感じるようになるかもしれませんね。

 


 

 

デメリットも理解しておく 

 

換気量を落とすことで様々なデメリットがあります。

 

近年の建材や塗料は、シックハウス症候群の原因となる化学物質が含まれる割合がかなり減ってきました。

 

しかし完全にゼロではないので体質的に過敏な人は、換気量が減ると体調を崩す可能性があります。

 

これは臭気やCO2濃度よりももっと深刻なデメリットなので注意が必要です。

 

 

 

最後になりますが、

 

建築基準法で定められているのは24時間換気設備の【設置】までです。

 

実際に換気設備を使用するかどうかはそこに暮らす人に委ねられています。

 

 

もちろん計画通りに24時間換気を行うことに超したことはないのですが、場合によっては過剰な換気を行っていることもあります。

 

 

CO2濃度測定や湿度をチェックしながら換気量を調整してみる。

 

自己責任にはなりますが、やってみる価値はあると思います。