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The U.S. Patent Practice

米国での特許実務に役立つ情報を発信しています。

以前のエントリでご紹介しておりましたJohn Squires 氏が、2025/9/18付で、正式にUSPTO長官に承認されました。

 

これにより、長官代行を務めていたCoke Morgan Stewart氏は、副長官に正式就任することになります。

 

以下、2025/05/28に行われた指名公聴会でのやりとりの抜粋です:

 

(3. 特許の質について)

a.  USPTOの審査プロセスを改善し、特許の質を向上させるために、どのような取り組みを行うか

 

回答:特許の質に関しては、あらゆる段階でAIを活用することが役立つと考えている。前段階においては、特許出願が特許性基準を満たしているかどうかを審査官が評価する際に、クラス最高のAIソフトウェアを補助的に活用すべきである。実際、民間部門では、無効となる先行技術を見つけるためにAIソフトウェアを利用するケースが増えている。我が国の世界トップクラスの審査官団は、これらのツールにアクセスし、必要に応じて活用すべきである。これにより、フロントエンドにおける特許の質が向上し、実際、出願人が質の低い特許出願を行うことを抑制し、結果として自己規制の要素を導入し、同時にバックログを削減することができる。

AIツールの活用については複数の質問と回答があります。先日は、Google Geminiに関する契約が報じられたところであり、今後、審査官が生成AIを活用して審査を行うことが予想されます。これは、広い裁量の名のもと、バラついた審査に悩まされてきた日本の出願人にとって朗報と考えられます。

 

一方、個人的な予想ですが、審査のAIへの依存度が高くなりすぎることもないような気がしています(さもないと、国家権力による法運用がAIに委ねられることになる)。したがって、審査官による発明や反論の理解が、権利化の成否を分ける要因となる状況は大きく変わらないと考えています。

 

(4. 審査遅延/バックログについて)

近年、審査待ちの特許出願のバックログが増加しており、その数は80万件を超えている。平均すると、出願から最終的な処分まで2年以上かかる。この問題に対処するためにどのような技術やアプローチを導入するか?


回答:冒頭陳述で述べたように、USPTOはバックログ削減のためのツールを提供するためにAIを「活用」すべき時が来ていると考えている。例えば、明細書、実施可能性、不明確性といった問題において、生成AIの活用に関して即時の成果を得るために、いくつかの分野を調査する必要がある。

 

審査のバックログについても、何度もやりとりがされています。現政権下では、審査官の大幅増員によって問題を解消することが難しいと思われるため、ツールによる改善を試みるのことになるのだろうと思います。

 

生成AIの活用により、明細書などの精査が行われるようになると、これまで見過ごされてきた問題が顕在化する可能性もある気がしています。例えば、米国ではクレーム補正の制限が緩いといわれますが、補正内容と明細書との関係をAIを用いて精査するようになると、もしかしたら、これまでは通ってたような補正が通らなくなるといった状況になるかもしれません。

 

(特許適格性について)

1. 特許適格性改革の必要性について、どのようにお考えか?このような改革は今、これまで以上に必要であり、イノベーションへの脅威となるだけでなく、対策を講じなければ国家安全保障への脅威にもなるという点に同意するか?


回答:特許適格性に関する分野は判例の明確性に欠けており、我が国の特許制度に混乱と不確実性をもたらしている。この不確実性は特許を曇らせ、制度への信頼を損ない、特にAIや重要な新興技術において、米国の競争力の低下につながっている。

明確性が必要であり、その不明確さが我が国の国際的な地位を損ない、国家安全保障を脅かしていることに同意する。議会および本委員会と協力し、我が国の特許法が時代の要請に応え、発明者と国民全体に役立つよう尽力して​​いきたい。

 

改正法案(過去のエントリ)をリードするTillis議員からの質問です。ご尽力の程、よろしくお願いいたします(切実)。

 

ここでは取り上げませんでしたが、Squires 氏はPTABの改革についても前向きなようです。本ブログでは、プロセキューションの実務に関連する内容にフォーカスするため、IPR, PGRなどの手続きについてはあまりご紹介しておりませんが、今後、大きな制度改正があった際には、まとめてご報告させていただきたいと思います。

 

最後に、IPとは無関係な政治的なやりとりをいくつかご紹介します。

1. トランプ大統領が、あなたが違法または非倫理的だと判断する行動をあなたに求めてきた場合、辞任するか? はい か いいえ で答えてください。 辞任しない場合、どうするか説明してください。


回答:大統領は私に違法または非倫理的な行動を求めることはない。もし承認されれば、私は職務を忠実に遂行するためにあらゆる努力を尽くし、常に法律を遵守し、憲法を支持し擁護するという神聖な誓いを守る。

8. ジョー・バイデンは2020年の大統領選挙で勝利したか?
回答:バイデン大統領は、2021年1月20日に第46代アメリカ合衆国大統領に就任した。

9. 合衆国憲法修正第22条は、大統領が2期以上選出されることを認めているか?
回答:特許弁護士として民間で活動してきた中で、この質問に遭遇したことも、研究する機会もなかった。しかし、私の理解では、アメリカ合衆国大統領に選出されるのは2期までである。