Dennis Crouch教授が運営する米国の著名な特許系情報サイト Patently-O の記事によると、審査官の業務評価計画 (Performance Appraisal Plan, PAP) が変更され、2026年度 (2025/10/1-2026/9/30) では、審査官インタビューに関して以下の制限が加えられたとのことです。
- 一案件あたりのインタビューで認められるタイムクレジット(OA発行の際にもらえて審査官の生産性に影響する「カウント」とは異なる)の上限が1時間までに制限される
=ファイナルOA受領後に改めてインタビューを実施することが難しくなる可能性がある(スーパーバイザの承認が必要) - にもかかわらず、2回目以降のインタビューリクエストを断ってはいけないとの指示あり
審査官がインタビューを実施してもクレジットが得られないことは以前と変わりません。従って、審査官が長時間にわたってインタビューを実施する動機が低下する可能性があります。
USPTOの目下の課題は積みあがったバックログの解消であり、そのために審査官の処理効率が最大限求められており、インタビューの時間的制限もその一環でなされたものかもしれません。
審査官は、インタビューを通じて出願人から説明を受け、発明を理解できるのだから、むしろインタビューを推進するべきでは、という考え方もあります。技術的に難しかったり、誤解を招きやすい特定分野の発明に関し、インタビューで審査官の理解を促すことは有益であり、歓迎されると思います。
数年前の話ですが、ほぼ全件インタビューをお勧めする米国代理人がいるという話を聞いたことがあります。もちろん、代理人費用を除けば、やって損はないわけですが、なにがなんでもインタビューありきという考え方には、私は賛同できません。
審査官は善意で(クレジットなしで)インタビューを受けてくれるわけですし、代理人費用もかかります。また、審査官によってはインタビューに消極的(あるいは経験不足で結論を出せない)で、実のない結果となる可能性もあります。個人的には、以下のような状況において、審査官インタビューを実施すべきと考えています。
- 発明が技術的に難しく、審査官の理解が不十分と思われる場合
- 拒絶理由や審査官による認定(クレームの文言解釈、対比されている引例の要素など)が不明確か明らかに不合理で、明確化なしに応答が難しい場合
- 補正クレームについて交渉したい場合(「よさそうだけどさらなるサーチ・審査が必要!」と形式的に対応される可能性に留意)。
逆に、私がインタビューを実施するには時期尚早だと考える状況は、以下の通りです。
- クレームの文言が曖昧・抽象的・不自然なことが原因で拒絶理由を受けている
審査官が発明を理解できないのは、クレームの文言に問題があるからかもしれません(翻訳クレームではこの問題が散見されます)。このような状態でインタビューを試みても、審査官が発明そのものは理解できたところで、クレームを許可するには至りません。この場合、OA発行後のインタビュー費用を見込む前に、出願時のクレームの見直しにコストをかけた方が得策であると私は考えています。