Kroy IP Holdings, LLC v. Groupon, INC.(Fed. Cir. 2025/2/10) Precedential
Collateral Estoppel (副次的禁反言、争点効) とは、同一の当事者間において最終的に判断された争点について、その後の訴訟で再び争うことを禁じる原則のことをいいます。Issue Preclusion (争点効) とも呼ばれ、司法試験にも時々出題されます。
本事件では、Kroy (NPE, non-practicing entity) がGrouponを特許侵害で訴えていたところ、GrouponによるIPR (Inter Partes Review、特許異議申立手続) においてそのクレームが無効と判断され、その後、Kroyは、IPRで審理されなかった類似クレームで改めて侵害を訴えていました。
これに対し、Grouponは、その類似クレームが、IPRで無効となったクレームと「実質的に異ならない」ため、禁反言により、類似クレームに基づくKroyの主張は禁じられるべきと主張していました。
地裁は、禁反言を認めて Kroy の訴えを却下としましたが、CAFCはこの決定を覆しました。これは、
- 争点となっている類似クレームは、IPRの手続きにおいて判断されていないこと
- IPRのPTABによる手続きと、地裁での手続きでは立証責任 (burden of proof) が異なること
(前者は「証拠の優越 (a preponderance of the evidence standard)」に対し、後者はより厳しい「明確かつ説得力のある証拠(a clear and convincing evidence standard)」)
が主な理由となります。
Kroyは、この決定に対して大法廷再審理の申立をしていましたが、これは2025/8/1付で却下されています(反対意見あり)。
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この件を受けて、侵害訴訟における被告側は、IPRを提起できる期間は限られていることもあり(訴状送達から1年以内)、当初主張されている特許のクレームのみならず、関連するクレームすべてについてにIPRで争う必要があります。また、攻撃者側としては、一つの特許について多数の類似クレームを記載しておくことにより、防御側の負担を大きくすることが可能です。
IPRにより多くの特許が無効になりすぎているという批判もあるなか、今回はその効力が限定されるような判決が出された形になります。IPRを含むPTABの手続きについては、改正法案 (PREVAIL)が議論されており、近いうちに制度変更がなされる可能性があります。