精神プロセス (Mental process) の認定を回避する方法 | The U.S. Patent Practice

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米国での特許実務に役立つ情報を発信しています。

先日、知財実務情報Labにて、特許適格性のお話をさせていただきました。ご視聴くださった方、ありがとうございました。

 

このセミナーでは、ソフトウェア関連発明に絞った形でご説明させていただきましたが、参加者の方から、どういう表現であれば精神プロセスの認定を回避できるかという質問をいただきました。

 

 

スライドでもご説明しましたが、Broadest Reasonable Interpretation (BRI) により、文言を広く解釈した上で、その動作なり処理なりが、心の中で実際に (practically) 実行できるのかどうかがポイントとなります。

 

セミナーでも取り上げましたが、"determine" という単語が精神プロセスとみなされやすい実情はあると思います。これは、決定という動作は人間が心の中で行う典型的な例で、かつ、コンピュータ関連発明でプロセッサが行う処理としてもよく使用されるためです。

 

ただ、この determineという動詞そのものが必ずしもNGなのかというと、そういう訳でもありません。要は、その決定プロセスが、人間の心の中で実際に実行されないようなものであれば、精神プロセスの枠からは外れることになります。したがって、この動詞だけにフォーカスするのではなく、動詞を含む、ひとまとまりの限定として考える必要があります。

 

例えば、USPTOが出している事例のうち、No. 37 「グラフィカルユーザーインターフェース上のアイコンの再配置」という例があります。この例で、determineという単語を使った文言の例があるので、ここでご紹介したいと思います。

 

クレーム1の例(精神プロセス

determining, by a processor, the amount of use of each icon over a predetermined period of time;

(プロセッサにより、所定の期間にわたって各アイコンの使用量を決定する)

→"by a processor"という限定を除き、人が心の中で実行可能(所定期間、アプリケーションのアイコンをずっとみつめて使用量を手動で計測。紙とペンは使ってOK)。これを単純にプロセッサ/コンピュータに実行させるだけでは、依然として精神プロセスの範疇。

 

クレーム2の例(精神プロセスでない

determining the amount of use of each icon using a processor that tracks how much memory has been allocated to each application associated with each icon over a predetermined period of time 

(所定の期間にわたって各アイコンに関連するアプリケーションに割り当てられたメモリの量を追跡するプロセッサを使用して、各アイコンの使用量を決定する)

→プロセッサがアプリケーションに割り当てられたメモリ量をトラッキングする(ことによってそのアイコンの使用量を決定する)=人間の心の中で実行不可能

 

つまり、determineという人間の動作としても使用される動詞が使われていても、コンピュータにしか実行できない具体的な動作についての記載が含まれる場合には、精神プロセスの枠から外れることになります。

 

determine . . . by a processor that . . . (人間が通常実行できない、あるいは実行することが難しい動作を記述。コンピュータしか取り扱えないデータやハードウェア資源を記述するのも一案)

 

長々と書いてきましたが、精神プロセスの認定は、適格性判断の分析の一つのステップ (Step 2A, Prong One) に過ぎず、また、ソフトウェア関連発明では回避が難しいことも多いです。セミナーでも強調させていただきましたが、101条克服の肝は、次の Prong Two (応用への統合)での反論になります。ですので、言葉尻だけに気を取られず、特定分野において解決される技術的課題と対応する構成要素についての主張にフォーカスすることが最も重要となります。