FAQ: 継続出願時に親出願で提出したIDS文献を再提出すべき? | The U.S. Patent Practice

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親出願で審査官によって考慮された (considered) 文献を再提出する必要はありません。

 

言い換えると、再提出しなくても、開示義務 (Duty of Disclosure) は果たしていると考えられます。

 

IDSの基本ルールのおさらい過去のエントリから抜粋)

  • 「出願人及び出願書類の作成並びに/又は出願手続の遂行に実質的に関与する他の者は,. . . 特許性について重要 (material to patentability) である情報を庁に提供する義務を負う」 (MPEP 609の日本特許庁訳)
  • この義務に違反すると、不正行為 (inequitable conduct)として権利行使不能となる可能性がある
  • 不正行為が認められるための要件 (Therasense, Inc. v. Becton, Dickinson & Co. (Fed. Cir. 2011))
    • USPTOを欺く意図 (intent to deceive) (=不注意 (negligence), 重過失 (gross negligence)では不十分)
    • 特許性について重要な情報であること、すなわち、USPTOが認識していればクレームを許可しないと考えられる情報であること
  • この義務は、特許発行手数料納付後、特許が発行されるまで継続する

 

特許庁は、審査便覧 (MPEP) において、親出願で考慮されたIDS文献の取り扱いについて、以下の通り明示しています。

 

MPEP 609.02  II.  A.    

2.  37 CFR 1.53(b)に基づく継続出願、分割出願、または一部継続出願
審査官は、以下の場合の審査において、親出願(国際出願を除く。上記I項参照)において特許庁が考慮した情報を考慮する (will consider)

(A) 37 CFR 1.53(b)に基づいて提出された継続出願

(B) 37 CFR 1.53(b)に基づいて提出された分割出願、または

(C) 37 CFR 1.53(b)に基づいて提出された一部継続出願

出願人が当該情報を特許(公報上)に記載することを希望しない限り、継続出願において当該情報の一覧を再提出する必要はない。

 

USPTOが自ら「再提出する必要はない」と言っているのだから、それに従って提出しなくても、USPTOを欺く意図が認定される可能性はないと考えられます。

 

また、古い例ですが、MPEPの記載に依拠し、IDS文献を再提出しなかったとしても、これが不正行為とは認められないとした判例もあります。 ATD Corp. v. Lydall, Inc., (Fed. Cir. 1998)

 

§ 609に鑑み、出願人が親出願において引用または提出された情報を分割出願において再提出しないことは、不公正な行為とはならない。Transmatic, Inc. v. Gulton Industries, Inc., 849 F.Supp. を参照。 526、31 U.S.P.Q.2d 1225 (E.D.Mich.1994)、関連部分で承認、一部破棄、53 F.3d 1270、35 U.S.P.Q.2d 1035 (Fed.Cir.1995) (親出願に既に記録されている重要な参照については、出願人は継続出願で再提出する必要はない)。

 

また、この親子出願におけるIDS文献の取り扱いに鑑み、孫出願においても、出願のIDS文献の再提出は不要と考えられます。子出願を担当する審査官は、親出願で考慮されたIDS文献を考慮するので、孫出願の審査官は、子出願で考慮されたIDS文献(親出願で考慮されたIDS文献を含む)も検討することになります。

 

従って、継続出願の際に(というより普段から)重要なのは、提出したにも関わらず、考慮されていないIDS文献がないか確認しておくことになります。

 

もちろん、IDSの提出費用(2025年の料金改定に関する-過去のエントリ)を気にしないとか、子出願の特許公報に記載される文献リストに親出願のIDS文献も明示的に記載したいといった理由がある場合には、すべて再提出して問題ありません。