40年近く前に死んだ祖父は生前、家を建てるときの注意として、次の3つを避けるように語っていたと聞く。
・崖の上下
・谷底
・川のそば
これらはいずれも、水害のときに危険な場所だ。こうした場所に家を建てなければならない場合はあると思うが(山間に住むとき、この3つを避けられる場所などない)、危険な台風が近づいているということなので、該当する場所にお住まいの方は、くれぐれもご注意いただきたい。ニュースで案内しているとおり、ウェブ上で見られるハザードマップも有益である。
祖父の言葉を振り返る機会になったのが、通教課程で履修した「地理学II(地誌学)」だった。
4番目にレポ提出した科目だが、提出時は字数を勘違いしていたことと(4単位=4000字制限なので、2単位=2000字制限かと思った。実際には2単位も4000字制限で、1単位が2000字制限)、出題の趣旨をよくわかっていなかったことから、再提出になった(不備レポにならなかっただけありがたかった)。
で、具体的な地域を取り上げて論じる必要があるとの指導を受け、思い出したのが、冒頭の祖父の教えだった。このような言葉の背景には、何か具体的な被災体験があったのではないか?と考えた。で祖父の若い頃、居住地のあたりで発生した大きな災害を探すことにした。
答えは意外とすぐに見つかった。室戸台風の被災地が、祖父の住まいのそばだった。被災地を示した地図を見ると、祖父の家は無事だったようだが、周辺では相当な被害が出ていた。冒頭の3つの場所で被害が出ていたことは、まだ十代の祖父の目に焼き付いていたことだろう。当時被災された方々は気の毒だと思うのだが、そこから祖父のような教訓を得た人が多く出て、その体験談が後世の人の命を守るなら、被災された方々の犠牲によって後世の人たちが守られたといえるだろう。
慶大での科目履修から、思いがけず若き日の祖父に思いを馳せる機会が与えられ、また、改めて祖父に感謝したのだった。