70代女性
【主訴】
尿漏れ・同じ時期から始まった足首の痛み
【問診】
コロナ自粛により外出の頻度が減ってしまった頃からの症状である。
クリニックに通院すると、『骨盤底筋群を鍛えなさい』と言われる。ユーチューブなどの動画サイトで勉強してやってはいるものの、改善の傾向は無い。薬も服用しているが効果は無い。
同時期に足首に違和感を感じだす。
最近とにかく腰から下の下半身が弱っている傾向がある。
ご主人の介護もしている為、なかなか自分の身体に弱音が吐けない環境。
お尻の筋肉が弱ると泌尿器症状が出る…という事をWEBで調べている間に腰や殿部、足のトリガーポイントを治療する事により改善がある…という国立おざわの記事を見つけて、ご来院されました。
【視診・触診】
足首周りに浮腫が見られる。
動作時痛 底屈(+)背屈(+)
内反(+)外反(++)
短腓骨筋・長腓骨筋触擦時、
腰部の筋緊張(++)殿部の筋肉が小さく、筋力が低下している印象がある。
問診室へのご案内時も、殿筋が弱っているからか歩幅が狭い。
【治療】
初回・2回目‥特に変化は見られない
3回目‥足首の痛みが消失。
以前から楽しみにしていたイベントで、6時間の外出ができたと嬉しそうに報告を頂く。
ただ、尿漏れは依然続いている。
6回目:本格的に泌尿器症状に関わる仙骨上部の多裂筋トリガーポイント&大殿筋仙骨付着部トリガーポイントの処理を開始する。
10回目:尿漏れの頻度が低下。くしゃみや咳をしても大丈夫。しかしまだふとした瞬間にアッ!…という漏れがあり、不安はある。
15回目:尿漏れの症状はほぼ改善する。
歩幅を増やして殿部を使うようにリハビリを指導。
内ももを締めながらスクワットなども軽く指導。
現在はほぼ症状は消失している。
【仙骨付着部トリガーポイントによる骨盤内環境の変化こそが泌尿器疾患に有効説】
尿漏れがあると『骨盤底筋を鍛えなさい』。テレビなどで『骨盤底筋』という言葉が出るようになり、浸透しています。
尿を絞るような、尿を我慢するようにキュッと下半身を絞めるようなイメージをすると骨盤底筋を使います。
骨盤底筋はそもそも骨盤下部をハンモックの様に尿道・肛門などを包むように存在する筋群です。
ただ、『骨盤底筋群を鍛えましょう』というのは、やっといても良いけど...治療とはまた別かな...という感じです。
尿漏れは生活の質を下げ、『私ももう年なのね…』と自信を低下させてしまいます。筋トレだけではなく、泌尿器系に関わるポイントがちゃんとあるので治療が必要です。
国立おざわには前立腺肥大によるものや、前立腺手術後の尿漏れ患者さんも来ます。
効果的な部分は『仙骨周囲のトリガーポイント』です。
仙骨外側縁に大殿筋が付着しています。仙骨上部に多裂筋が付着しています。
この2つの部位のトリガーポイントは泌尿器疾患に非常に有効で、当院では必ず治療する部位です。
加齢により歩幅が狭くなると大殿筋の収縮が悪くなります。しかし脳は以前の様に歩くことを記憶しているので無理に使います。
少しずつ仙骨外側縁の大殿筋付着部にトリガーポイントが出来ます。
歩幅が狭いと、骨盤のねじれ運動が少なくなります。つまり捻る筋肉である多裂筋に負担がかかり始めます。
徐々に多裂筋にトリガーポイントが形成されます。
この2つの部位に共通しているのは『仙骨』です。仙骨からは骨盤内臓器に自律神経が多く分布しています。
トリガーポイントがある部位は交感神経緊張に傾きます。
つまり、仙骨部トリガーポイントは骨盤内臓器の自律神経を乱す為、『骨盤に存在する臓器の機能が乱れる』という事です。
西洋医学では、筋肉から出る症状についての引き出しが少ないと私は思っています。
『筋肉から現れる症状が、想像を超えるほど多い』という事を、知っていくと視野が大きく広がります。