どんなに素晴らしいビジネスモデルも、商品・サービスも、サプライヤーとしての「プレゼンス(存在感や影響力)」を高める動きと一体的に進めないと、浸透させていくのは難しいと痛感する。
「ブランディング」というのも「プレゼンス」を高めることの一部だと思うが、イコールではない気がする。ベンチャー企業がいきなり「ブランディング」と言っても、ヒト・カネ・モノといったリソースに限りがあるわけだから、容易な事ではない。だから、通常ベンチャーの場合、既に一定の「プレゼンス」を持った企業との戦略提携を目指すことになる。
その意味で、現代のベンチャー経営者が備えておくべき資質において、“アライアンス上手”は必須のものだ。よく誤解があるのだが、ベンチャー経営者と話をすると、「私は年長者、目上の人から可愛がられるタイプなので…」という人がいる。それはそれで素晴らしいし、助けてくれる人がいることは大きなアドバンテージだが、それは“甘え上手”ということであって、“アライアンス上手”ということとは全く別物だ。
アライアンスは、人を介在しているとは言っても、あくまで組織対組織の協働関係の構築であることを踏まえておかないと、いつまで経っても、“親分子分”の関係が続くだけで、アライアンスを梃子にして「プレゼンス」を得ていくことはできない。
私の古い友人で急成長の飲食関連ベンチャーの社長がいるが、彼を見ていると、この辺りの「天才」だと思ってしまう。“甘え上手”で且つ“アライアンス上手”。本人に聞けば違う答が返ってくるかもしれないが、独特の嗅覚で、キーマンを嗅ぎ分け、支援を得ながらも、正論を曲げずにアライアンスを成立させてしまう。個人として甘えてよい部分と、何があっても組織として期待に応える部分との峻別が見事なまでにできていて、そしてその価値を理解してくれるパートナーを選び取る“選球眼”が、凡人の目からみると、「天才」と映ってしまう。
個人の天才性は別にして、結局ベンチャーが「プレゼンス」を得て行くためのアライアンスは、パートナーとの適切な期待値の設定、そしてそれを満たすか上回るパフォーマンスを、組織として出し続けていくことからしか生まれないのだと思う。その意味で言えば、いかに優秀なトップが突出してアライアンスにはしっても、決して長続きはしない。むしろアライアンスを成功に導くための秘訣は、内部環境のベクトルの合わせ方にこそあるといっても過言ではない。そしてそうした協働体としてのあり様が、そこはかとなく、もう一段上の「プレゼンス」を創りだしていくのだと思う。