今月火蓋が切って落とされた2014就活戦線。最近はリクルートスーツ姿も街角で目立つようになってきた。

年末まで説明会をやっている企業もあるので、当然学生さんもフル回転なんだと思うけれど、お正月休みというブレイクが少し入るので、年明けからの動き方の参考になるように、就活生がまだまだ誤解していると思われるポイントを三つ取り上げたいと思う。そこから必勝戦略もいくつか見えてくるだろう。

まず第一の誤解は、就活に「偏差値思考」をそのまま持ち込んでも上手くいかないのに、それで失敗する学生が結構多いということ。そもそも就活と大学入試は全く別物なのだが、競争というと入試位しか経験がないのが学生だから、ついついそのモノサシを持ち込んでしまう。。一番簡単な例を挙げると、就活人気企業ランキングで100位とか200位にも入らない企業でも内定を獲得するのがとても難しい企業もあるし、人気企業ランキングで上位だけど内定獲得がそんなに難しくない企業もあるということだ。

結構ニッチだけどその業種に人気があり、業界では知られた企業であるため、応募者が多い割に採用数が少なく激戦になって、当然なかなか内定が取れないといようなケースだ。私の知っているケースだと輸入家具のメーカーとか、特定分野のコンサルティング会社等でそんな例がある。一方で、銀行とか人材ビジネス、SIerなどは労働集約型で採用数が多いから、比較的人気企業でも内定を取るのは難しくない。このあたりの事情も踏まえてエントリーをしていくべきだろうし、一般的な知名度のない企業に落ちたからといって凹む必要など全くない。でも意外とこれが多くて、そこから鬱状態になっていく学生もいると聞く。そんなことを回避するには、どこでも良いわけじゃないけど、既述の業種に限らず、比較的採用数の多い企業で内定をキープしておくのも戦略的には正しい(正直に言うと、そういう会社は内定辞退数もある程度織り込み済みだから、迷惑をかけることもあまりない)。

第二の誤解は、第一の誤解ともリンクするのだが、就活における「重みづけ」「選考に回る順」を間違っていることが結構多いということだ。キャリアセンターからもやかましく指導されるので、とにかくエントリー企業数を増やそうというのはわからないでもないが、時間はどの就活生にも平等で、全てのエントリー企業に全力投球できるわけではない。だからある種のフィルタリングが必要なのだ。

はっきり言おう。OB・OG訪問や会社説明会は、そのフィルタリングとセールス(自分を売るための)ためにあるのであって、志望企業をよく知るためのものという考えを過度に持たない方が良い。もちろん、そうした接点から社風なり、勢いなりは見えてくるが、それは「教えてもらうもの」ではなくて、あくまで「感じ取るもの」だ。むしろOB・OG訪問や会社説明会は、選考スケジュール、選考方法の重点ポイント等の情報収集の場、そして自分をインフォーマルに、選考が始まる前に売り込む場と「クール」に位置付けた方が良い。就活ではON YOUR MARKというスタートの合図はない。志望する会社の人間に接した時から勝負は始まっているし、逆にそのあたりを押さえていれば、複数回チャンスのある企業なら、選考を後回しにするというオプションだってあるのだ。また志望する企業の中には、選考に手間のかかる会社もあるかもしれない。こういう会社は判断が難しいのだが、私の経験則や持っている情報から言うと、合理的だけど選考に時間をかけている会社は、しっかり人材を見極める会社だから、余程志望順位が低くない限りは、きっちり対応して、最終選考まで残った方がお得だ。数年前に同志社大学の講義で、「ベンチャーで働く」というようなテーマで講師をさせて頂いた際に取り上げた3社の内の1社は、今年見事に株式公開を果たした絶好調のネット生保だが、この会社の新卒選考は、手間のかかる課題をこなさなければならないので有名だ。だから応募者の多くが途中でドロップアウトするので、見かけの倍率は高いけれど、実質倍率は大したことはないと聞く。

まとめると、就活は「意味ある情報の入手・取捨選択・アウトプット」を行う、所謂インテリジェンス、高度な情報戦であり、確かな情報に基づく戦略・タイムスケジュールの構築と、それに基づく実践的なリソース配分、いついかなるアクションがあっても適切なリアクションがとれるような準備が不可欠であるということだ。

そして最後に第三の誤解。これは企業の選択軸に関するものだ。「キャリアのドアにはドアノブがない」というのが実際には正しいし、おそらく適職というものは、仕事をせずにはわからないものだろうと思うが、それでもどのキャリアのドアの前に立つかは自分で選ばなければならない。その際、何らかの基準が必要だが、これを曖昧にして就活に飛び込む学生が多すぎる。それでは一つ一つの選考にも力が入らず、面接にも説得力がなくなってくる。ここは確率論でいくしかない。仮に選択軸を「お金」「安定」「チャンス」の三つに絞り込むとしよう。

会社によっては、もちろん全てを手に入れられることもあるだろうが、それは個人差もあるから、一般的傾向で語るとすると、「お金」を重視するなら総合商社かメガバンクというのが妥当な志望選択になるだろう。これは現実にトラックレコードがあるから仕方がない。特に総合商社の場合、冬の時代がまたやってこないとも限らないが、それでも「安定」も併せて手に入れることができるだろうから、就職ランキングの人気業種になるのも当然だ。但し、起業などのチャンスからは、どういう仕事を与えられるかにもよるけれど、縁遠いかもしれない(プロパーの商社マンはとても優秀な人が多いが、給料が良いこともあって辞めないので、総合商社出身の起業家はそう多くはない。私の古い知人で総合商社出身の起業家に聞くと、同期で起業したのは彼を含めて100名程度の内たった2名だそうだ)。またメガバンクも人気企業ランキングの依然上位だ。研修制度をはじめ、しっかりとしたゼネラリストとしての素養が身につくという意味ではメガバンク以上の環境はないのかもしれないが、だいたい51歳くらいで殆どの人は現場からいなくなるし、50代で銀行に残れる人はほんの僅か。グループ企業に出れる人も少数で、人事に出向先を斡旋してもらえる様な人も限られている。よってメガバンクは途中からのキャリアを自作できる人でないと本当はお奨めできる選択肢ではない。また、こんなことは50代で考えても仕方がないので、できるメガバンクのバンカーは、30代前半ぐらいまでにさせてもらえる経験は目一杯させてもらって、伸びそうなベンチャーにマネージャーで転職し、役員に上るというようなキャリアを歩む人が多い(もちろんデキル人限定)。DeNAのボードメンバーとかはその例になるだろうが、高給に動きを鈍らせていると、EXITがなくなる可能性があるので要注意。「何でもできる人」はレベルが低いと「何にもできない人」にすぐなってしまう。

その次の「安定」を選択軸にする場合、公務員を除けば、薬品とか食品とか化粧品といったメーカーが志望企業としてスクリーニングされるだろう。もちろん企業の個体差もあるし、M&Aもこれから頻発するだろうから、個人として万全かどうかは別にして、こうしたメーカーは日本の人口が1億を切るまでまだまだ時間があるし、景気が悪くなったからと言って、飲む薬や食欲が半分になるわけでもないから、安定企業である可能性はやはり高い。また業種柄、総合商社やメガバンクよりはずっとのんびりしているので、精神衛生上またはワークライフバランス上はお奨めできる企業だ。そして実は穴場なのが、こうしたメーカーにBtoBで製品を提供している企業。これらは学生があまり就活で光を当てていない企業が多いが、これらの業種の仕入先や取引先を有報などで調べると面白い企業に行き着く可能性は高い。競争無しで入社して、一生安泰(?)を目指すなら、是非実行してみてほしいアプローチだ。

最後の選択軸の「チャンス」は漠然としてしているので、仮に起業して成功するチャンスという解釈に限定すると、一にも二にも現在成長中で、まだ3年~5年は伸びそうな、ベンチャーを少し超えたレベルの企業に行くべきだと思う。ネットなら新御三家の一つとされ、ハイパフォーマンス人材の育成に注力し人事制度構築にも余念がないS社とか、既述の数年前の同志社大学の授業でも取り上げた、女優MのブランドCMで売り出した新興SPAアパレル企業のC社などは、社内起業だとかグループ内起業だとかいうのもまだまだありそうだし、特にC社などはまだ入社のハードルもそんなに高くはないだろう。そういうところは是非志望リストに加えておくとよい。仮に起業に至らなくとも、勢いのある会社で仕事した経験は転職マーケットで一定の評価が得られるからだ。

今日は就活生の「三大誤解」にスポットをあてて、そこから見える就活の必勝戦略のポイントを見てきた。もちろんまだまだ引き出しはあるので、このブログなり、セミナーなりで、これからも継続的に紹介していくこととしたい。