同志社大学のビジネスプランコンテスト・New Island Contest 2012 の1次審査、2次審査の審査員を仰せつかって思い立ったことを今日は書きたい。

同志社大学のリエゾンオフィスとその公認団体であるDVT(同志社ベンチャートレイン)という起業サークルが共催するこのコンテストは、1次の書類選考、2次のプレゼンテーションを経て、来年2013年1月12日最終審査が行われ、グランプリ、準グランプリ、New Island賞、オーディエンス賞、NICT賞などが選ばれる予定だ。

1次審査には52のビジネスプランがエントリーされ、そこから25プラン(1チーム棄権があったので実際は24プラン)が2次に進み、12月12、13日の2日間にわたってプレゼンテーションと質疑応答の審査を行い、最終審査に進む5プランを選出した。

これら5プランの内、少なくとも2、3のプランは、あと少し磨けば、シードアクセラレーターが投資して動き出してもおかしくない水準のものだ。

時代は移り変わって、スマホアプリなどの分野では起業のハードルが低くなり、従来のベンチャーのように、IPOかそこそこの規模でのバイアウトしかエグジットがないというような状況ではなくなっている。アプリそのものやサイトの売買、アクセラレーターからVCへのリレーといった、軽快なエグジットが一般化しつつあるネット、IT分野では、起業そのものがカジュアルなものになりつつあると言って良いのかもしれない(個人のキャリア論としての「起業」という選択については、また別の稿で論じるとして…)。

ただこうした起業環境の変化は分野としては限定的であるし、そもそもシードアクセラレーターすら東京にしかないわけで、地域的にも限定的な変化であるということは認識しておかなくてはならないと思う。

正直私のここのところのブログの論調としては、「関西でベンチャー、ベンチャーって言ってもなあ、そもそもVCも機能停止だし、IPOマーケットもガタガタだし、このまま萎むしかないわなぁ」「ベンチャーよりも、社会的企業の育成なら関西を“聖地”にできるかもしれないし、実際実例も多い。そっちの方に力を入れるべきかなぁ」という感じで書いてきている。これそのものは、今もあまり認識として大きな変化はない。

ただ今回のコンテストの1次、2次審査の審査員務めて、同志社の、そして関西の学生諸君のベンチャースピリットの健在ぶりを目の当たりにすると、少しばかり長く生きてきた者の務めとして、彼らの思いが実を結ぶ手立てがないものかと考えてみたくもなる。

そこで思いついたのが、関西主要私立大学が湯水のように使っている学生集めのための広報予算を、インターカレッジのシードアクセラレーターの設立・運営に回し、「関西の○○大学では、ビジコンで好成績なら本格的な起業のためのサポートと資金供給が受けられる」というのを全国の高校生に浸透させていき、関西に優秀な学生を呼び込む(実際のところは関西の優秀な学生がこれ以上流出しないという方が適切かもしれない)とともに、社会的企業としてのシードアクセラレーターを通じて関西の学生のベンチャースピリットを受けとめ、醸成していく装置がつくれないかというアイデアである。

シードアクセラレーターをビジネスとして考えた場合、正直割の良いビジネスには絶対にならない。東京で成立してしているものを検証しても、それらはある意味若くて柔軟な頭脳を、既存のネットベンチャーやITベンチャーがシンクタンク的に利用するという意味合いが大きい。だから儲からなくても、ある程度エグジットがつけられて、大損さえしなければOKという訳なのだろう(孫泰蔵さんのように使命感のもとにノブレス・オブリージュを体現しているような方ももちろんおられるが…)。

しかし、そうした産業基盤のない関西でこれを成立させようと思っても無理がある。だから別のスキームでシードアクセラレーターの構築を考えてみる必要がある。既述の広報予算もあるけれど、関西の主要大学には必ず「○○大学ファンド」なるものがあって、これを東京の既存VCなどに管理させて、大学周辺のベンチャーに投資しているが、投資手法は従前の日本のVCスタイルで、手取り足取りというのとは程遠いから、結局芳しい結果は出ていない。こんな馬鹿馬鹿しいことは速やかにやめて、そうした原資も広報予算同様、“関西インターカレッジ・シードアクセラレーター”に突っ込んだ方が良い。

今回の同志社New Island Contest 2012 のように、外部審査員の公平かつ厳正な評価の下で選ばれたビジネスプランを投資検討対象としてスクリーニングし、“インターカレッジ・アクセラレーター”に資金拠出する各大学のビジネススクール教員やOB・OG起業家に投資委員会の委員になってもらい、投資だけでなく、ハンズオンのサポートを行っていく。その結果エグジットして、東京に出ていく企業があってもOKとし、無理に関西に縛り付けたりしない。そうしたルールの下でやってみてはどうかと私は思う。

大学側にもプロモーション上のメリットがあり、学生の士気も上がるというポジティブフィードバックはこんなところから創れないだろうか。もちろんビジネスとして儲かるといほどのもではないから、これを民間企業がやるとか、ケチな関西財界に期待するなんてことは考えても無駄である。インターカレッジの社会的企業型アクセラレーターが損を出さなければ各大学の広報予算が大幅削減できるくらいのことは起こり得るのだから、関西の主要大学の経営陣の皆様には是非ご一考願いたい。

自ら動きだして、ジリ貧を突破しないと、東京一極集中で自らの大学の価値が毀損するのに、そう長い年月はかからないということは、そうしたお歴々の方が切実に感じているはずだから。



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