━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2016.11.02
【Alox】 『第三の眼 ~看破する力~』 http://alox.jp/ vol.25
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◆ 目 次 ◆
【1】 今号の一言 『空売り推奨レポートの興隆』
【2】 本文 『今年の粉飾を把握する〔2016年〕- 小売業の窮地 -(1)』
【3】 編集後記 『史上最も“期待値の低い”の米国大統領の誕生』
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【1】 空売り推奨レポートの興隆
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米国の投資ファンドであるグラウカスは、伊藤忠商事の会計手法を問題視し、「強い売り推奨」と指摘したレポートをリリースした。
それに対し、伊藤忠商事は「適切な会計処理を実施しており、当社の見解とは全く異なる」とのコメントを発表している。
さらに、空売り投資家で調査会社シトロン・リサーチは、サイバーダインの株価が割高だと主張した。
さらにさらに、日本のウェル・インベストメンツは、サイバーダインやジグソー、丸紅などを「現在の株価と客観的な財務分析とのギャップ」を指摘したレポートをリリースした。
これらのレポートの内容の信憑性はさておき、「株価が企業の財務体質や将来性と乖離している」と指摘することは、一定の価値がある。
株価≒期待(もしくは美人投票)であることは否定できないが、あまりにも、結果(損益計算書や貸借対照表)に結びついていなければ、それは“IRの上手い企業”でしかない。
もともと結果が伴うのが稀有な業界と言えるバイオ・創薬業界ついて、投資家も結果を無視して、期待値のみで株を購入している。
一方で、著名な企業、東証1部2部に上場する企業、昨今盛り上がっている業界(ロボット、AI、フィンテック)の企業について、ファンダメンタル(結果)と乖離していることを指摘することは必要ではないだろうか。
つまり言いたいのは、企業の開示情報は「マーケットへの一方通行の報告書」でしかない。
その報告には、自社に都合の悪いことは含まれていないと考えるのが妥当である。
「リリース情報の裏を読み、一方通行の報告書を分析する機能」を「強い売り推奨と指摘したレポート」が担っていると言えるのではないだろうか。
それでは、上場企業の“懺悔”報告書というべき「不適切な会計処理に関する報告書」をまとめた定期メールマガジン
「今年の粉飾を把握する」をお楽しみください。
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【2】 今年の粉飾を把握する〔2016年〕- 小売業の窮地 -(1)
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【不適切な会計処理】
例年通り、企業評価の“眼”を更新することを目的として、『上場企業の不適切な会計処理』のリリースをまとめたレポートをお送りします。(長文のため、本日と11月4日の2回に分けて配信します。)
【21件のリリース】
“今年”※は21件の「不適切な会計のリリース」があった。
21件という件数は、昨年と同じ件数であり、ここ7年の中では同率で2番目に多い件数である。
(ちなみに、2015年21件、2014年14件、2013年20件、2012年29社、2011年17件、2010年15件だった。)
※ 集計及び執筆時期の都合上、2015年9月~2016年8月を“今年”と表現させて頂いております。
<不適切な会計処理に関するリリースをした会社一覧>
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※
中央魚類(ホウスイの親会社)、ヨンドシーホールディングス(フジの親会社)もリリースを行っているが、子会社と同じ内容のリリースのため、除外。
<不適切な会計処理 リリース概要一覧表>
http://alox.jp/dcms_media/other/161031_2016dressing.pdf
【不適切な会計処理の型】
粉飾をその手法等に基づき、「売上加工」「利益捻出」「混在」「資金流出」「その他」の5つに分類した。
「売上加工」とは
→架空売上、押し込み販売、売上の前倒しなど、売上を増やす行為
「利益捻出」とは
→売上原価の過小計上や翌期繰延、費用の過小計上や翌期繰越、棚卸資産の過大計上など、利益を増やす行為
「混在」とは
→売上を増やす行為と利益を増やす行為などの混在
「資金流出」とは
→創業者や特定の担当者による商行為の私物化、協力会社との癒着によるキックバック、買収や取引を通じてグループや
協力会社への資金援助など、会社から資金を流出させる行為
「その他」とは
→計算ミス、知識不足などによる計上ミス
【分類別の企業一覧】
<売上加工>
・ユナイテッドスーパーマーケットホールディングス
・曙ブレーキ工業
・フードプラネット
・テクノメディカ
<利益捻出>
・日本食品化工
・住友電設、
・マツモトキヨシホールディングス
・ジョイフル本田
・フジ
・日本ハウスホールディングス
・日本製鋼所
・パスコ
・船井電機
<混在>
・サイオステクノロジー
・メディビックグループ
・三井ホーム
<資金流出>
・小僧寿し
・ジャパンフード&リカーアライアンス
・ホウスイ
・高田工業所
【今年の傾向】
実に、21社中9社(43%)が利益捻出型の粉飾だった。
特に小売業において、利益捻出型の粉飾が多かった。
インバウンドの爆買いの反動、消費不況などにより、小売業は苦境にある。
昨今、百貨店やスーパーの再編、アパレルの小売のリストラをなどのニュースは耳にする。
苦境にある業界は、「利益を作成する可能性がある」と疑っても、損は無い。
次号 今年の粉飾を把握する〔2016年〕- 小売業の窮地 -(2)に続く。
(11月4日10時配信予定)
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