━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2010.2.26
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
ウィルコムと日本航空 -ADR申請後の倒産- <編集:HNW>
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『国の信用不安』
約束にもレベルがある。
「個人の約束」から「企業間の約束」、そして「各国政府間の約束」。
日本は、アメリカと合意した[普天間飛行場を
キャンプ・シュワブ沿岸部に移転するとした約束」について
“ゼロベース”で再検討している。
普天間飛行場への移転の是非はあるが、
コモンセンスがある国ならば、政府間で約束したことを
政権政党が変わったことを理由にして反故にすることはない。
契約社会のアメリカから見れば、契約違反であり
詐欺に遭ったような感覚だろう。
一方、格付会社のスタンダード&プアーズは1月26日、
日本の長期国債の格付け見通しを「安定的」から
「ネガティブ」(弱含み)に引き下げた。
日本の財政再建の遅れが引き下げ要因である。
政府間の合意を反故し、800兆円超の借金を抱える日本。
「国際社会における国の信用」は、右肩下がりだ。
それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。
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ウィルコムと日本航空 -ADR申請後の倒産-
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オックススタンダード(株)
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【報道概要】
2月18日、PHSサービスのウィルコムは、東京地裁へ
会社更生手続開始を申し立てた。
金融機関や企業再生支援機構、スポンサー、投資会社との間で
再建計画を合意したプレパッケージ型の破綻である。
【会社概要】
社名 株式会社ウィルコム
業種 PHSサービス
従業員数 1,058名
所在地 東京都港区虎ノ門3-4-7
監査法人 京都監査法人(2009年3月期)
みすず監査法人(2008年3月期)
【破綻情報】
破綻日 2010年2月18日 会社更生法申請
負債総額 2,060億円
※
有価証券報告書を提出しているが、
非上場企業であることを踏まえ、
OX理論の分析結果は掲載しません。
ただ、ここ数年は40点以下だったことをお知らせします。
(2009年は「その他の流動資産」に10,824百万円
【前期:155百万円】が計上されており、
急激に膨らんだ「その他の流動資産」の中身が気になります。)
<ウィルコム:有価証券報告書2009年3月>
http://www.willcom-inc.com/ja/corporate/outline/ir/pdf/200903_Yuho.pdf
【ADR手続きの不調】
日本航空とウィルコムは、事業再生ADRを申請した。
しかし、最終的には法的整理となった。
つまりは、事業再生ADRの手続きにおいて、
「債権者の同意を得られるような再建計画の作成」が
不調に終わったものと思われる。
【金融機関にとってADR】
事業再生ADR手続きにおける債権者は、
基本的には金融機関である。
再生計画の内容が信頼に足るものであれば、
金融機関は債権放棄や借入金の返済スケジュールの変更に応じる。
ただ、そもそも平時において、金融機関は説明された決算内容や
事業計画等に基づいて融資している。
当然、それが計画通りに実現していれば特に問題はない。
この緊急時において、日本航空やウィルコムが、
“今度の計画は必ず実現します!”と言っても
金融機関は“信用できない”と感じたのかもしれない。
それゆえ、日本航空やウィルコムが“ほぼ単独”で行うような
再生計画には実現性が低いと判断する。
その結果、再生するために必要不可欠なスポンサー企業を
交えたプレパッケージ型倒産を選択した方が、
事業再生の実現性が高いと判断された可能性がある。
【スポンサーのスタンス】
スポンサーの視点に立てば、投資は安ければ安い方が良い。
それゆえ、事業再生ADRという“体にやさしい飲み薬”よりも
法的整理という“劇薬”によって
100%減資された会社へ出資した方が“費用対効果が高い”と
判断しても不思議ではない。
JALのスポンサーは実質的には日本国であり、
ウィルコムにはソフトバンクがスポンサー候補として
名前が上がっている。
【総括】
“事業再生ADR申請経由会社更生法”は、
今後も発生する可能性が高い倒産パターンである。
企業審査の観点で言えば、
ADR手続きで利害関係が調整されれば、
事業継続され金融機関以外の債権には影響がない。
しかし、調整が不調に終わった場合は、
法的整理となる可能性が高い。
それゆえ、ADR手続きが始まった段階で、金融機関と
スポンサーの動きに注意を払う必要がある。
そして、たとえ法的整理になっても、
自社の痛みを和らげるように、
事前に対策を講じておく必要がある。
※
JALの再建の目玉として会長に就任した稲盛和夫氏は、
ウィルコムの取締役最高顧問に名を連ねている。
http://www.willcom-inc.com/ja/corporate/outline/index.html
ウィルコムの経営から一線を退いており、
特に問題はないのだが、
「2010年に事業再生ADRから
プレパッケージ型会社更生法申請した2社」
に深く関わりもっている稲盛氏は、“当たり年”と言える。
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【編集後記】
年が明けて、もう2ヶ月。
本当に時間が経つのが早い。
今年もあと残り10ヶ月だけしかない。
(人によっては10ヶ月もあると感じているでしょう。)
やりたいことを着実に実行するためには、公私ともに合理化が必要と感じる。
ただ、合理化には限界がある。
(会計的な表現でいえば、限界利益?でしょうか。)
合理化とともに、事業仕分けならぬ活動仕分けが必要だ。
つまり、「やるべきこととやらないこと」を明確にする。
(経営者視点で言えば、選択と集中?でしょうか。)
“捨てるべきこと(やらないこと)”を決め、
やるべきことに時間とコストを投資しなければならない。
今年の大晦日は、達成感とともに迎えたい。(HNW)
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