史料批判なき企業審査 -コシ・トラスト事件- | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2010.3.31
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』

史料批判なき企業審査 -コシ・トラスト事件- <編集:HNW>
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


『日本の景況感』

ここ最近、報道や各種リリースによると
「景気が上向きになった」
「株価は上昇基調である」
「二番底リスクを脱した」など、
景気の良い話を目にする機会が多くなった。


しかし、下記のように読み替えるのが適当だろう。
「一部の企業は経営努力により、景気が上向きになった」
「一部の企業は経営努力により、株価は上昇基調である」
「一部の企業は経営努力により、二番底リスクを脱した」

つまり、一部の優良な企業は、自助努力により業績が回復している。


日本全体を一つの企業と捉えれば、
「財務破綻リスクが高く、資金繰りに注意を要する。
国債発行に依存する財政を立て直すことが急務であり、
抜本的な政治・経済改革を行わない限り、
競争力は下降し、ひいては国際的な影響力も失うだろう」

という審査結果になることは、明らかだ。

“ふわふわした景気回復ニュース”は、右から左に受け流せばよい。


それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。


→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→index←←
史料批判なき企業審査 -コシ・トラスト事件-
_______________________
オックススタンダード(株)   
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


【報道概要】
2010年3月16日、金融機関から融資名目で5億5000万円を
詐取したとして、詐欺罪に問われた不動産会社「コシ・トラスト」
社長中林明久被告に対し、東京地裁は懲役4年を言い渡した。

朝山芳史裁判長は「被害額は多額で、優良な融資先を装っており
巧妙」と指摘。一方で、融資した銀行側についても、
「財務書類の不自然さを看過し、粉飾を見抜けなかった融資審査の
ずさんさが被害拡大の一因」と批判した。



【コシ・トラストの手口】
①不動産の転売ビジネスで業績を上げ、金融機関の信頼を得る。
②追加の資金を得るために金融機関の営業担当者を接待や
利益供与で取り込む。
③決算書と納税証明書を偽造する
(金融機関の営業担当者のアドバイスあり)。
④金融機関は、審査によりコシ・トラストへ
総額約600億円の融資した。



【考察】
なぜ、金融機関は、コシ・トラストへ融資してしまったのか?
どうして、審査の段階で粉飾や偽装工作を見抜けなかったのか?


審査する金融機関に協力者(内通者)がいたことも
騙された原因の一つだろう。


ただ、もう一つの原因として考えられるのは、
融資先から提出された資料そのものに対する評価や検証」が
疎かになっていたからではないだろうか。



昨今、金融機関は融資先の決算書や各種情報を手入力や
OCR等でデータベース化している。
必要に応じて、データベースから財務情報や各種スコアリング、
倒産確率等の計算を行い、企業評価をしている。


融資先の情報をデータベース化することは必然だろう。
それは非常に費用対効果が高く、データの“散らばり”や分布、
平均などを把握するのに有用であるからだ。


しかし、データベースから出力された融資先の評価や倒産確率に
依存していては、企業の評価を見誤る可能性がある。


時と場合によっては、融資先と“直(オリジナル)”
触れなければならない。
もちろん、融資先を訪問し、キーマンと会うのがベストだが
それはなかなか難しい。

ならば、せめて継続的に融資依頼がある企業や
巨額融資案件においては、
提出された資料自体の真偽・信頼性を評価検証する作業」が
あっても良いのではないだろうか。



【史料批判】
歴史研究の分野では、史料の一つ一つの有効性・信頼度・信憑性
が異なるため、これを見極める作業がなされる。
(これを「史料批判」と呼ぶ。)

史料は、「いつ」「どこで」「だれが」書いたか、の三要素があり
「そのとき」「その場で」「その人が」の三要素を充たしたものを
“一次史料”と呼び、それ以外を“二次史料”と呼んでいる。


コシ・トラストの偽装資料が、どれほどの出来栄え
なのかは分からない。
しかし、コシ・トラストの資料が“一次史料”と
言える内容だったのか?
提出資料を直接見ることなく、スコアリングや
営業担当者の企業評価を鵜呑みにしてしまっていたのではないか?
今回の事件は、そんな疑問を抱かざるを得ない。



【総括】
人間が無欲にならない限り、悪事を働く企業はなくならない。
それゆえ、必ずや第二第三のコシ・トラストは現れる。
このような会社に対する企業審査として、
史料批判は一つの方法である。

少しでも気になる融資先、投資先、販売先、仕入先があったら、
一次史料(つまりはオリジナル)と向き合うことが必要だ。

そういった意味では、決算書の性質評価をデータベース化
するのは一考だ。

(例)
<入手した決算書の性質>
①取引先から直接入手
②信用調査会社から入手
③興信所から入手
④有料データベースから入手
⑤官公庁より入手
⑥その他
⑦入手不可

<①における確認事項>
・会計事務書の承認印の有無
・決算データの正確性の有無
・勘定科目の異常な数値の有無
・異常な科目に対する融資先の説明の信頼性
・信用調査会社における決算書保有の有無
・信用調査会社より入手した情報と直接入手した情報との整合性
など。


偽装や粉飾に騙されて取引することは、屈辱だ。
それを避けるために、日々審査システムやノウハウを
リニューアルし続けなければならない。




ちなみにだが、弊社のメールマガジンは二次史料に依存している。
正確性は期すべく努力しているが、不正確な部分があるかもしれない。
また、多少ではあるがライターの偏見等が入る場合がある。
そこはご理解の上で、お読み頂けると幸いです。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


【編集後記】
休日の夕方、ジョギングしている。
決まったコースを3周回ったてから、
最後に200メートル近くある登り坂を猛ダッシュ3本で閉める。

ジョギングしていると、日によって
『疲れた、さぼりたい、休みたい、歩きたい』という
欲求(負け犬思考)が湧いてくる。

しかし、『このマイナスの欲求に負けたら、
一生負け続けるぞ。いいのかそれで!!』と
そんな心の声が聞こえる。
そして、走り続ける。


ジョギングの最も大きな効果は、これだと思っている。
体の鍛錬というよりも、精神(メンタル)の強化である。

リニューアルされたメンタルが、物事への対処する力となり、
時によっては火事場の馬鹿力を生む。

飽きっぽい私だが、ジョギング(with mp3player)は
続けていくことができそうだ。

ただ、たまにはサッカーやフットサルもしたい・・。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

本メールの情報は、お客様に対する情報提供を目的とするものです。
本メールの情報に基づいて行われたいかなる損失や損害について、
当社では一切責任を負いかねますのでご了承ください。



発行元 オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.co.jp/