今年の倒産を予測する【2010年】 | OX理論が測る企業価値

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26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2010.1.26
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』

今年の倒産を予測する【2010年】  <編集:HNW>
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今年は、日本航空(JAL)の会社更生法申請で幕を開けた。
グループ3社の負債総額は2兆3221億円となり、
事業会社として戦後最大の経営破綻となる。


これから怒涛のごとく再建へ向けた整理・縮小・リストラが始まる。
行政の怠慢や規制による影響はあったにせよ、
抜本的な対策を“先延ばし”にしてきたツケが回ってきた。
それゆえ、JALには同情の余地はない。


自民党政権が継続していれば、“得意の先延ばし”が
通用したかもしれないが、「チェンジ」を標榜する民主党は
法的整理を選択した。「正しい判断(審査)をした」と言える。


JALは、企業再生支援機構が支援することになった。
ちなみに、2004年にはJALと同規模の会社が企業再生支援機構に
近い役割を担っていた産業再生機構(現在は清算)を利用した。

ダイエーだ。

その後、ダイエーは、紆余曲折を経てライバル会社である
イオンの持分法適用会社となった。


はたして、JALは単独で飛べる翼を得ることができるのか?
それとも、ハゲタカの翼で飛ぶのか?
それとも、ライバル会社の翼で飛ぶのか?

全ては、すでに経営者として伝説の存在となった
稲盛和夫パイロットの操縦次第である。


それでは、OXメルマガ『 S T A N D A R D 』をお楽しみください。


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今年の倒産を予測する【2010年】
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オックススタンダード(株)   
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【2009年の倒産件数(上場企業)】
上場企業の倒産件数:20社  〔昨年:33社〕 <前年比0.6倍>


昨年倒産した上場企業は下記の通りである。


東新住建、クリード、エス・イー・エス、サイバーファーム、
日本綜合地所、中道機械、ニチモ、小杉産業、あおみ建設、
SFCG、トミヤアパレル、パシフィックホールディングス、
エスグラントコーポレーション、アゼル、中央コーポレーション、
ライフステージ、ジョイントコーポレーション、アプレシオ、
シルバーオックス、ロプロ


昨年と同様に不動産・建設業系の破綻が多数を占めた。
その他、傾向としては、アパレル系(シルバーオックス、
トミヤアパレル、小杉産業)の倒産が増えている傾向だ。




【2009年の倒産件数(全企業)】
倒産件数:15,480件    〔昨年:15,646社〕   <前年比0.98倍>
負債総額:6兆9300億円 〔昨年:12兆2919億円〕 <前年比0.56倍>


2008年と比べて、倒産件数はほとんど変わらない。
負債総額は、昨年のような巨額負債倒産(リーマンブラザーズ)が
なかったことから、半減した。




【昨年の倒産件数と比較】  (単位:社)
      <2008年>     <2009年> 
上場      33         20
全企業   15,646        15,480


≪倒産件数推移グラフ≫
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100127_1.pdf



【検証】
昨年の『今年の倒産を予測する【2009年】』では、
下記の予測を記載した。

<倒産件数>
〔上場〕   →  40(±5) 
〔全企業〕 →  16,000(±500)


2009年の結果は下記通りである。
〔上場〕   →  20 
〔全企業〕 →  15,480


上場企業の件数は大外れだ。
全企業についてはほぼ想定の範囲内に収まった。


なぜ、上場企業の倒産件数予測が外れたか?
“後付け”と言われるのを承知で下記の事実を記載する。

【上場廃止基準に抵触して上場廃止となった企業数】
〔2008年〕   12
〔2009年〕   19※

※19社の現状
①倒産        3
②ADRを申請   1
③社名変更    3
④事業継続    12


【事業再生ADRを申請した上場企業】
〔2008年〕  0
〔2009年〕  7※

※あくまでADRを申請した企業数であり、
再生したかどうか不明。


証券取引所によって市場から退場させられる企業、
倒産回避の手段である事業再生ADRを利用する企業が
増えた結果、“想定よりも上場企業の倒産は少なくなった”
と言えなくもない。




【今年は?】
今年は、上場企業の倒産件数は減少する。
非上場企業は横這いか、若干の増加となるだろう。



〔ネガティブ要因〕
①デフレ
物価の下落が止らず、企業収益は悪化している。

このデフレ下でも利益を計上している企業は、
海外の工場や会社の活用により、
生産・仕入コストを極限まで下げている。
そのような生産・仕入システムを構築した企業が
一人勝ちをしており、それ以外の会社は負け組の構図
となっている。


ミクロな観点からも俯瞰すれば、
サラリーマンの昼食はワンコイン500円時代から、
300円時代となった。

牛丼屋をはじめとした外食チェーンは値下げを実施した。
価格は、低価格で固定化している。



②借金漬けの日本
鳩山政権の予算は、一般会計総額は92兆2992億円。
新規国債は44.3兆円となり、国債依存度は48%と過去最高となった。

マニフェスト堅持、景気対策という美名のもとに、
“財政再建”という地味な政策は見向きもされない。

借金大国となった日本。
画期的な財政政策や景気対策がない限り、
将来的には国民負担の増加は避けられない情勢だ。
財布の紐は極めて固い。


JALのレガシーコスト(年金問題)が話題となっているが、
日本全体の借金(800兆円)を考えれば“コップの中の嵐”と
表現しても言い過ぎではないだろう。

<参考:借金時計>
http://www.takarabe-hrj.co.jp/clockabout.html



③円高
<米ドル - 円>
2010年1月22日終値:89.889900

1995年水準の円高である。
1995年の日経平均株価(大納会)は、19,868円だった。

株価2万円時代(1995年)における円高と
現在の株価1万円時代における円高では経済に与える
インパクトが違う。
外需依存の日本にとって、円高による利益減少は避けられない。



④改正貸金業法の完全施行
2010年6月には、改正貸金業法が完全施行される。
総量規制(貸し出し額を利用者の年収の3分の1)の実施により、
資金繰りに苦慮する中小企業が続発するだろう。

※政府内には、完全施行の実施を延長するという話もある。



⑤新興国の隆盛
“先進国の生産委託工場”をしながらも、
自社の技術で企画から生産、販売までする企業が出現した。
中国やインドを始めとする新興国は技術力を上げ、
官民一体となって好景気を演出する。


一方、日本の利益率の高い企業は、
コスト削減を意図して新興国を積極的に活用する。
特に製造業は、規制の多い日本に拘ることなく、
海外シフトを加速させている。

結果、日本の工場・人材・システムは縮小され、
国自体の経済成長は相対的に下降する。




〔ポジティブ!?要因〕
①セーフティネットや中小企業支援
信用保証協会を中心としたセーフティネット、
金融機関に返済猶予などを促す中小企業金融円滑化法などにより、
ある程度の規模がある企業の資金繰り破綻リスクは軽減された。


②環境技術マーケットの勃興
電気自動車、ハイブリットカー、バイオディーゼル、
燃料電池、太陽電池、風力発電、節水技術、リサイクルなど
“エコ”をキーワードとした製品やサービスは、トレンドとなった。
競争は激しいが、これらの製品を開発・販売している企業は
利益を確保できるだろう。


中には、環境偽造を行う企業もあるので注意が必要だ。


③巨大イベントの開催
2月 バンクーバー五輪
5月 上海万博
6月 サッカーワールドカップ南アフリカ大会

スポーツ関連企業やそれを見るための装置や回線業者は、
一時的に利益の嵩上げが期待できる。



④マニア(オタク)市場
狭いターゲットに絞ったマーケット向け製品を
開発販売している会社は、不況をものともせずに利益を出している。
アニメ、マンガ、ペットなどは今後も有望なマーケットだろう。



⑤不況慣れ
昨年末より不況へ突入した。
不況になってから1年が経ち、言い方は変だが、
企業も不況にも慣れてきた。
保守的な対応が普通となり、積極的にリスクを取る企業は
少なくなった。
それは、企業審査も同様で保守的(倒産の可能性も踏まえて)に
取引先の評価をするようになったため、
有事へ対処する力は向上している。



【考察】
『10年間の倒産平均との比較』
例年通り、まず10年間の平均を見てみよう。

<2000年~2009年までの倒産件数平均値>  
〔上場〕      →  15  
〔全企業〕   →  15,841


『日経平均株価との比較』
日経平均株価(大納会終値)と倒産件数を
比較すると下記の通りになる。


<上場倒産件数> <日経平均株価>
2000年   12       13,786
2001年   14       10,543
2002年   29        8,579
2003年   19       10,677
2004年   11       11,489
2005年   8        16,111
2006年   2        17,226
2007年   6        15,308
2008年   33        8,860
2009年   20       10,546
2010年   ?        ?


≪上場企業の倒産件数と株価グラフ≫
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100127_2.pdf

★参考
上場企業倒産件数と株価は、負の相関がある。
株価が高ければ倒産は少なく、株価が低ければ倒産が多い。
考えれば、至極当然の話だが。 

≪上場企業の倒産件数と株価の反比例グラフ≫
http://www.ox-standard.co.jp/pdf2/100127_3.pdf



【総括】
上記の比較や過去からの推移を考慮すると、
今年は下記の件数に落ち着くのではないだろうか。


<倒産件数>
〔上場〕   →  15(±5)
〔全企業〕 →  15,500(±500)




1.参照データ:東京商工リサーチ『全国倒産企業状況』
2.倒産件数のシミュレーションは、相関係数及び2009年度
倒産件数と株価を基準として導き出した数値である。


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇


【編集後記】
今年は、「知行合一」でありたい。

『知行合一(ちこうごういつ)』
中国の明のときに、王陽明がおこした学問である陽明学の命題のひとつ。
論語の為政第二にある「先ず其の言を行い、而して後にこれに従う」が
元になっている。
王陽明は、知って行わないのは、未だ知らないことと同じであることを
主張し、実践重視の教えを主張した。


下記は、知行合一ではあり得ない考え方・行動・言動と思う。
・知っていてやらない。
・そうだと思っていた。
・だから言ったじゃないか。
・まだ本気を出していない。
・やろうと思えばできた。
・時間がなかった。
・仕方がない。
・そうするしかない。
・それ以上、どうしようもない。
・あきらめた。


とにかく行動だ。
評論、批評の類は暇な人に任せておけばいい。
何をしたという実感のない人生を送らないためにも、
「為せば成る」の精神で望みたい。


今年も宜しくお願い致します。

オックススタンダード株式会社
アラーム事業部一同


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