相次ぐ上場企業の破綻-マキ製作所とみらい建設グループ- | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2007.09.28
 オックススタンダードメールマガジン  『 S T A N D A R D 』
             
 相次ぐ上場企業の破綻-マキ製作所とみらい建設グループ-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



 【報道概要<マキ製作所>】
 9月27日、ジャスダック上場のマキ製作所が民事再生を申請した。
 主力である青果物の選別プラント施設の国内需要が斬減を続ける中、
 売上高の伸び悩みと価格競争の激化による収益の低迷が響いた。



 【会社概要】
 社名         株式会社マキ製作所
 業種         農業用機械製造
 従業員数      320名
 所在地        静岡県浜松市東区篠ヶ瀬町630



 【破綻情報】
 破綻日        2007年9月27日 民事再生申請
 負債総額      約123億円



 【OX理論で分析】
 OX格付       BB 【30】(2007年3月連結決算)

 

+++++++++++++++++++++++++++



 【報道概要<みらい建設グループ>】
 9月27日、ジャスダック上場の中堅建設会社、みらい建設グループは
 民事再生法を申請した。みらい建設工業など3子会社も民事再生法

 の適用を申請した。
 


 連結受注高の約6割を占める公共事業の減少と低価格入札の続発で
 利益率が悪化し、資金繰りに行き詰まった。

 みらい建設グループは2007年3月期に競争激化で業績が悪化し、
 繰り延べ税金資産を大幅に切り崩した結果、32の金融機関と結んで

 いるシンジケートローンの財務制限条項に抵触したという。
 


 9月末に34億円の借入金の返済時期を迎え、返済時期の延期を要請

 したが、一部金融機関が反対し、資金繰りに行き詰まった。




 【会社概要】
 社名         株式会社みらい建設グループ
 業種         総合建設
 従業員数      949名
 所在地        東京都中央区日本橋小網町6-1



 【破綻情報】
 破綻日        2007年9月27日 民事再生申請
 負債総額      約580億円



 【OX理論で分析】
 OX格付       BBB【46】(2007年3月連結決算)




 【財務制限条項】
 通常、金融機関が債務者に対して貸付を行う際に、その契約において、
 債務者の財政状況が一定条件以下となった場合には、債務者は期限

 の利益を喪失し、金融機関に対して即座に貸付金の返済を行わねば

 ならないことを約する条項を指す。(exBuzzwordsより)



 みらい建設グループに関していえば、シンジケートローンの財務制限

 条項に抵触し、ある銀行が返済時期の延期(リスケ)に応じなかった

 ため、破綻したといえる。




 【シンジケートローンが抱える問題】
 シンジケートローン(協調融資)は、名前の通り複数の金融機関が

 共同して融資する。複数の金融機関がリスクを分散することができる

 ため、急速に広まっている融資手法である。




 シンジケートローンはその性格上、下記のような問題を抱える。

          複数の金融機関で融資
                ↓
     リスク分散が可能(通常の融資と違い"軽い"融資のイメージ)
                ↓
      金融機関の審査(融資姿勢)にばらつきがある
                ↓
        各金融機関の意思疎通が難しい




 みらい建設グループへ融資した金融機関の中には、
 返済時期の延期(リスケ)に応じる金融機関もあった。
 しかし、返済時期の延期(リスケ)に応じるには全金融機関の承認が

 必要だった。
 

 金融機関の調整を行うアレンジャー(正確にはエージェント)でも
 32の金融機関の意見を調整するのは難しかったと言えそうだ。
 



 【上場企業の破綻は続くのか?】
 9月27日現在で、今年の上場企業の破綻は4社。
 昨年は2社だったから、すでに倍増である。

 これ以降も上場企業の破綻は続く可能性が高いだろう。
 特に、消費者金融業界(グレーゾーン金利廃止)と
 建設業界(談合規制と公共工事の減少)は非常に厳しい状況に

 置かれている。
 
 


〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇



 資金繰り。
 当然過ぎて言うのも恥ずかしいが、資金が回る限りしない企業は

 破綻しない。
 

 一方で、資金繰りに目途がつかなければ、破綻する。

 それゆえ、企業分析担当者は資金繰りの破綻懸念を最優先で分析
 しなければならない。そして、破綻懸念が高いという分析結果になった

 場合、金融機関の融資姿勢を確認する必要がある。

 みらい建設グループの破綻は、上記のような「セオリー」を思い出さ

 せる破綻だった。



発行元 オックススタンダード() http://www.ox-standard.co.jp/