審査マンの存在価値-粉飾を看破せよ- | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2007.09.04
 オックススタンダードメールマガジン  『 S T A N D A R D 』
             
 審査マンの存在価値-粉飾を看破せよ-
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 【審査マンの存在価値】
 先日、債権実務研究会の「決算書の読み方入門」を聴講する機会

 があった。講義の中で、千葉商科大学 末松義章氏は、一ヶ所だけ

 語気を強めて話された。



 「倒産する企業の9割は粉飾しています。
 粉飾されていない決算書なんてどうでもいいんです。
 粉飾されている決算書から、いかにして企業の実体を見抜くかが
 あなた方(審査マン)の存在価値を証明するんです。

 

 


 【粉飾のリターン】
 倒産する企業の大半が粉飾していると言われている。

 

 なぜ粉飾するのか?

 簡潔に表現すれば、
 「取引先や銀行さらには株主に自社をよく見せるため」
 である(逆粉飾は除く)。


  
 つまり、「業績好調で財務が安定しています」とアピールすること
 によって、新規取引や融資、増資、株価維持(吊り上げ)、信用アップ
 といったリターンを得ようとしているのである。

 


 【経営者の心理】
 経営者の立場になって考えると粉飾の誘惑に負けるのも理解
 できなくもない。


 
 下記の場合、経営者はどのような判断をすると思いますか?
 <会社の現況>  倒産するかしないかの瀬戸際で資金繰りに

              窮している。 今期は、小額の赤字になる予定。
 <融資の条件>  今期、黒字ならば融資可能。

 


 粉飾しなければ倒産する状況で、経営者(or あなた)は

 どうしますか?
 粉飾せずに倒産しますか?それとも粉飾して存続しますか?
 (倒産する企業の多くが粉飾していることから、前者を選ぶ

 経営者が多いと言えるだろう)
 



 【粉飾は常態化する】
 粉飾をする経営者は、まずは一時しのぎの手段として粉飾を行う。
 "この急場を乗り越えれば、ちょっとの粉飾なんて問題ないだろう"

 と考えて。
 実際に、一時しのぎの粉飾を行い、以後は業績が回復する企業も

 あるでしょう。

 


 しかし、想定よりも業績が回復せずに、結局は粉飾を繰り返す

 体質になるのが大半だ。
 しかも、一回粉飾すると次回は、粉飾することに対する心理的な

 ハードルが低くなり、最終的には粉飾が“常態化”する。




 【粉飾を見抜く】
 粉飾も巧妙になっており、看破することが難しいケースも増えて

 きている。しかし、まずは初心に返り、数値の変化に注目すべきである。



 前期や前々期と比べて異常な変化があった勘定科目、
 今期はじめて出現した勘定科目、
 粉飾されやすい「その他の流動資産、流動負債」などに注目

 するのが第一歩だ。



 そして、それらの異常な数値の裏付けを取るのが重要である。
 (なぜ、急激に数値が増えたのか?この業界特有の現象なのか?
 関連企業に変化はないか?銀行は?経営者は?などなど)



 つまり、「数値を見て、なぜなぜなぜと自問自答を繰り返す」ことが
 粉飾に対する感度を上げる一つの方法と言えるだろう。



 ※参考
 トヨタでは、「業務において、なぜを5回繰り返せ」と指導している。 



 発行元 オックススタンダード() http://www.ox-standard.co.jp/