━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2007.09.04
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
審査マンの存在価値-粉飾を看破せよ-
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【審査マンの存在価値】
先日、債権実務研究会の「決算書の読み方入門」を聴講する機会
があった。講義の中で、千葉商科大学 末松義章氏は、一ヶ所だけ
語気を強めて話された。
「倒産する企業の9割は粉飾しています。
粉飾されていない決算書なんてどうでもいいんです。
粉飾されている決算書から、いかにして企業の実体を見抜くかが
あなた方(審査マン)の存在価値を証明するんです。」
【粉飾のリターン】
倒産する企業の大半が粉飾していると言われている。
なぜ粉飾するのか?
簡潔に表現すれば、
「取引先や銀行さらには株主に自社をよく見せるため」
である(逆粉飾は除く)。
つまり、「業績好調で財務が安定しています」とアピールすること
によって、新規取引や融資、増資、株価維持(吊り上げ)、信用アップ
といったリターンを得ようとしているのである。
【経営者の心理】
経営者の立場になって考えると粉飾の誘惑に負けるのも理解
できなくもない。
下記の場合、経営者はどのような判断をすると思いますか?
<会社の現況> 倒産するかしないかの瀬戸際で資金繰りに
窮している。 今期は、小額の赤字になる予定。
<融資の条件> 今期、黒字ならば融資可能。
粉飾しなければ倒産する状況で、経営者(or あなた)は
どうしますか?
粉飾せずに倒産しますか?それとも粉飾して存続しますか?
(倒産する企業の多くが粉飾していることから、前者を選ぶ
経営者が多いと言えるだろう)
【粉飾は常態化する】
粉飾をする経営者は、まずは一時しのぎの手段として粉飾を行う。
"この急場を乗り越えれば、ちょっとの粉飾なんて問題ないだろう"
と考えて。
実際に、一時しのぎの粉飾を行い、以後は業績が回復する企業も
あるでしょう。
しかし、想定よりも業績が回復せずに、結局は粉飾を繰り返す
体質になるのが大半だ。
しかも、一回粉飾すると次回は、粉飾することに対する心理的な
ハードルが低くなり、最終的には粉飾が“常態化”する。
【粉飾を見抜く】
粉飾も巧妙になっており、看破することが難しいケースも増えて
きている。しかし、まずは初心に返り、数値の変化に注目すべきである。
前期や前々期と比べて異常な変化があった勘定科目、
今期はじめて出現した勘定科目、
粉飾されやすい「その他の流動資産、流動負債」などに注目
するのが第一歩だ。
そして、それらの異常な数値の裏付けを取るのが重要である。
(なぜ、急激に数値が増えたのか?この業界特有の現象なのか?
関連企業に変化はないか?銀行は?経営者は?などなど)
つまり、「数値を見て、なぜなぜなぜと自問自答を繰り返す」ことが
粉飾に対する感度を上げる一つの方法と言えるだろう。
※参考
トヨタでは、「業務において、なぜを5回繰り返せ」と指導している。
発行元 オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.co.jp/