不正のキッカケを探る-ミートホープが自己破産- | OX理論が測る企業価値

OX理論が測る企業価値

26年前、資金繰りに特化した財務分析手法が産声をあげた。
それは、【あらかん】から【OX理論(アラーム管理システム)】へと進化を遂げた。
【OX理論】を土台として、企業分析にいそしむALOX社専属ライターのメールマガジン、それに付随するこぼれ話を掲載。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2007.07.23
 オックススタンダードメールマガジン  『 S T A N D A R D 』
             
 キッカケは前期の赤字
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 【報道概要】
 食肉偽装問題が発覚したミートホープは、7月17日自己破産を

 申請した。負債は約6億7000万円。 6月に牛肉ミンチの偽装が

 発覚し、工場の生産ラインを停止したほか、返品や取引中止が

 相次いでいたという。



 【会社概要】
 社名         ミートホープ株式会社
 業種         食肉加工・卸
 従業員数      100名(系列含む約500名)
 所在地        北海道苫小牧市入船町3丁目3-23



 【破綻情報】
 破綻日        2007年7月17日 自己破産申請
 負債総額      6億7000万円



 【OX理論で分析】
 OX格付       BB【29】(2007年3月単独決算)
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 ミートホープ(分析表1)
 http://www.ox-standard.co.jp/analysis/pdf/meathope.pdf
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 【年々悪化する格付評点】
 2005年      48
 2006年      48 
 2007年      29


 2007年に入って初めてボーダーラインの40点を割った。
 急激に資金繰りが厳しくなっていたと言える。



 
 【仕入債務が減少する一方で棚卸資産の急増】
 
 <仕入債務>  〔千円〕
 2005年    160,850
 2006年    127,426
 2007年     72,013


 <棚卸資産>  〔千円〕
 2005年     59,977
 2006年     86,693
 2007年    147,471


 <売上>     〔千円〕
 2005年    1,464,689
 2006年    1,645,345
 2007年  1,640,860


 仕入債務(買掛金など)が減っているにも関わらず、
 棚卸資産(原材料など)が増えているのは、なぜか?




 【考察】
 単純に考えると非常に不可解な数字です。

 →通常は・・・
 ・棚卸資産が増えれば、仕入債務も増えます。
 ・売上が変わらなければ、商品も仕入債務も変わりません。

 

 →ミートホープは・・・
 ・業者から使い物にならないくず肉を大量で格安に仕入れる
 ことによって“仕入債務”を削減した。
 ・仕入れたくず肉を大量に加工して“棚卸資産”が急増した。
 もしくは、棚卸資産が不良化して不良在庫が滞留した。
 もしくは、棚卸資産を増やして売上原価を減らし利益の最大化を
 はかった。


 といったところでしょうか。

 


 【数字が語る経営者の心理】
 決算書には、経営者の心理が表れる。
 
異常な数値が表れた場合は、どのような経営方針なのか、

 業界で何が起きているのかなどを探らなければならない。

 いうなれば、定量分析(決算書分析)をキッカケとして、
 定性要因(経営方針や社長の心理)を探る。
 これが企業分析の定石であり、スタンダードと言える。




 【異常はシグナルであり、警鐘(アラーム)である】
 おそらく、ミートホープの経営者が不正を働こうと思った思考回路は
 下記の通りでしょう。


 ①2007年度は、前年度が赤字だったことから、何が何でも利益を
  出さなければならなかった。
                 ↓
 ②利益を上げるためには、売上を拡大するか、仕入コストを削減するか、
  在庫を増やして売上原価を減らすか、しなければならない。
                 ↓
 ③くず肉を仕入れることによりコストを削減。
  食肉を虚偽表示して高く販売。

 


 これらの思考回路に基づいて作成されたのが2007年度の決算書である。
 そこには、先ほど指摘したが、棚卸資産などに異常な数値が

 現われている。



 ミートホープは、コンプライアンスの意識が極めて低く、
 利益至上主義の経営方針により、数十年わたって食肉の偽装を

 してきた。利益を上げるためには、うさぎの肉を混入するなど、

 “何でもあり”だった。
 特に2007年度は、上記のような心理から、異常な数値が決算書に

 表れてしまったと言える。


発行元 オックススタンダード() http://www.ox-standard.co.jp/