━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━2007.07.23
オックススタンダードメールマガジン 『 S T A N D A R D 』
キッカケは前期の赤字
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【報道概要】
食肉偽装問題が発覚したミートホープは、7月17日自己破産を
申請した。負債は約6億7000万円。 6月に牛肉ミンチの偽装が
発覚し、工場の生産ラインを停止したほか、返品や取引中止が
相次いでいたという。
【会社概要】
社名 ミートホープ株式会社
業種 食肉加工・卸
従業員数 100名(系列含む約500名)
所在地 北海道苫小牧市入船町3丁目3-23
【破綻情報】
破綻日 2007年7月17日 自己破産申請
負債総額 6億7000万円
【OX理論で分析】
OX格付 BB【29】(2007年3月単独決算)
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ミートホープ(分析表1)
http://www.ox-standard.co.jp/analysis/pdf/meathope.pdf
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【年々悪化する格付評点】
2005年 48
2006年 48
2007年 29
2007年に入って初めてボーダーラインの40点を割った。
急激に資金繰りが厳しくなっていたと言える。
【仕入債務が減少する一方で棚卸資産の急増】
<仕入債務> 〔千円〕
2005年 160,850
2006年 127,426
2007年 72,013
<棚卸資産> 〔千円〕
2005年 59,977
2006年 86,693
2007年 147,471
<売上> 〔千円〕
2005年 1,464,689
2006年 1,645,345
2007年 1,640,860
仕入債務(買掛金など)が減っているにも関わらず、
棚卸資産(原材料など)が増えているのは、なぜか?
【考察】
単純に考えると非常に不可解な数字です。
→通常は・・・
・棚卸資産が増えれば、仕入債務も増えます。
・売上が変わらなければ、商品も仕入債務も変わりません。
→ミートホープは・・・
・業者から使い物にならないくず肉を大量で格安に仕入れる
ことによって“仕入債務”を削減した。
・仕入れたくず肉を大量に加工して“棚卸資産”が急増した。
もしくは、棚卸資産が不良化して不良在庫が滞留した。
もしくは、棚卸資産を増やして売上原価を減らし利益の最大化を
はかった。
といったところでしょうか。
【数字が語る経営者の心理】
決算書には、経営者の心理が表れる。
異常な数値が表れた場合は、どのような経営方針なのか、
業界で何が起きているのかなどを探らなければならない。
いうなれば、定量分析(決算書分析)をキッカケとして、
定性要因(経営方針や社長の心理)を探る。
これが企業分析の定石であり、スタンダードと言える。
【異常はシグナルであり、警鐘(アラーム)である】
おそらく、ミートホープの経営者が不正を働こうと思った思考回路は
下記の通りでしょう。
①2007年度は、前年度が赤字だったことから、何が何でも利益を
出さなければならなかった。
↓
②利益を上げるためには、売上を拡大するか、仕入コストを削減するか、
在庫を増やして売上原価を減らすか、しなければならない。
↓
③くず肉を仕入れることによりコストを削減。
食肉を虚偽表示して高く販売。
これらの思考回路に基づいて作成されたのが2007年度の決算書である。
そこには、先ほど指摘したが、棚卸資産などに異常な数値が
現われている。
ミートホープは、コンプライアンスの意識が極めて低く、
利益至上主義の経営方針により、数十年わたって食肉の偽装を
してきた。利益を上げるためには、うさぎの肉を混入するなど、
“何でもあり”だった。
特に2007年度は、上記のような心理から、異常な数値が決算書に
表れてしまったと言える。
発行元 オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.co.jp/