月刊BOSS 2006年12月号
8兆3000億円。ミタル・スチールの買収提案から半年間に渡る混乱を経て誕生した世界最大の鉄鋼会社アルセロール・ミタルの売上高だ。従業員数32万人、粗鋼生産量において世界シェア1割、日本の年間生産量を上回る規模となる。ラクシュミ・ミタルという稀有な経営者の登場により、世界中の鉄鋼業が再編気運に包まれている。
翻って日本の鉄鋼業界は、2002年川崎製鉄とNKKが設立したJFEホールディングスを経て、新日本製鐵系とJFE系に2極化した。近年は、各企業の血の滲むような合理化、中国特需が追い風となり、最高益の更新が相次いでいる。OX理論においても、売上高トップ10企業の全てが格付AA以上と鉄鋼業界全体の好調さを如実に表している格好だ。
「新会社が世界の鉄鋼業界再編で主導的な役割を果たす」。こう発言するミタル氏が好業績の日本企業に強硬手段を用いる可能性は高い。右記のトップ10企業の中では、独立系の東京製鐵が魅力的な“案件”と言えるかもしれない。財務の安定性及び収益力が優れており、トヨタ自動車のお膝元の愛知県田原市に新工場を設立する予定もある。
東京製鐵 :AAA【92点】
パレートの法則(2:8の法則:一部の個体が全体の大きな部分を占める)。世の主要な製品や素材については、上位数社が世界シェア5割を占める。鉄鋼業においては、アルセロール・ミタルでさえ、粗鋼生産量が世界シェア1割である。今後、パレートの法則よろしく、合従連衡が加速する可能性は充分にある。特に2007年5月以降は三角合併が解禁されるため、外国企業が日本の子会社を経由してM&A攻勢に出てくるかもしれない。
もともと日本の鉄鋼業は、技術力及び品質では世界一でありながら、内弁慶のきらいがあった。各社は買収防衛策導入や海外企業との提携を進めているが、まだまだ手ぬるい。業界全体で買収の危機感を共有している今こそ、更なる国内再編・海外進出を図るチャンスだ。開国前夜の静けさを破る“志士”の登場が期待される。
東京製鐵株式会社
証券コード(市場) 5423(東証1部)
業種 鉄鋼業
OX格付【評点】 AAA【92点】(2006年3月単独決算)
発行元 オックススタンダード(株) http://www.ox-standard.com/