誕生日の過ごし方 | OVER THE GREEN

OVER THE GREEN

毎日が体力勝負の四十路男が、より大きな自己満足を求めて遊び続ける備忘録です。

10月21日土曜日。


はやぶさ太郎45歳の誕生日。


そんな年に一度の記念日に、常日頃からアンチエイジング(体力面限定)を心掛けるオッサンが取るべき行動は、ただ一つ。


「若い頃に出来なかったフィジカルワークに今一度チャレンジしてみよう!」


...というわけで、、、遠足です。


家族全員が就寝中の早朝4時35分。東広島市の自宅から約130km先にあります岡山県岡山市は日本三大庭園・後楽園に向けて、人生5度目の遠足を決行します。


道中はもちろん不眠で歩き続け、30時間後の朝10時30分頃に後楽園へ到着予定。朝10時30分に開店する園内の茶屋にて、そこでしか食べれない吉備団子を食べに行くことが旅の目的です。


この遠足の真意について昔は色々と熱く謳っていましたが、今となってはそんなのどーだっていいです。私の履歴書に13年前から失敗談として残り続ける「目の上のたんこぶ」を今回こそ取ってやる。今はただ、その一心です。


ちなみに過去の実体験より、今回新しく取り入れた対策を以下に列記します。


①コカ・コーラを飲みまくる。

②ボラギノールを塗りたくって出発する。

③シナモンロールを持参する。

④元気なうちにハイペースで距離を稼ぐ。


①に関しては、美味しい&脱水対策&エネルギー(糖分)の枯渇対策に優れているため。


②に関しては、健康体でスタートしても60km以上歩くと何故か高頻度で痔になるため。


③に関しては過去のブログをご参照あれ。

④に関しては前回(4回目)挑戦時の最大の敗因。130kmを30時間で歩く予定を立てて65kmを15時間かけて歩いたにも関わらず、もう一度同じ時間&距離を歩く事に嫌気が差して心が折れてしまったため、心身共に元気な序盤にハイペースで距離を稼ぎ、後半の心理的負担を軽減させようと考えた次第。


さて。


前置きが少々長くなってしまいましたが、ここからはiPhoneの撮影時刻と移動距離を見ながら、画像メインで時系列に掲載していきます。


御多分に洩れず読み手の意向を全く意識していない駄々長い備忘録になっておりますが、これから始まる紅葉シーズン、広島方面から歩いて後楽園に向かわれる皆様の参考になれば幸いです。



ー第5回 吉備団子ウルトラ遠足ー


◼︎04時35分 東広島市西条町(0km)

今回は軽量化にも少しだけ気を配り、背負う荷物の重量は5.5kg。使い慣れたブラックダイヤモンドのトレッキングポールを両手に、廃棄寸前まで履き慣らしたジョギングシューズ・アシックスGT2000を履いて、意気揚々と玄関の扉を開きます。


◼︎05時23分 東広島市西条町(5km)

暗闇の中、東広島市の国道2号線に出る。ここで早くも対策③のシナモンロールを家に忘れている事に気付くが、さすがに取りに帰る気にはなれず。時間的ロスはあるが、道中にあるダイソーで代替品を手配をすることに。


◼︎05時45分 東広島市西条町(8km)

辺りが薄っすらと明るくなってきた。気温は今シーズン最も低い、6℃。吐く息が白いが、早歩きをしている今は少し寒いくらいがちょうど良い。


◼︎06時23分 竹原市田万里町(11km)

竹原市内を通過中。少しずつ汗をかき始めたので、早めに半袖短パンスタイルに衣替えをする。


◼︎06時47分 竹原市田万里町(14km)

でっかい太陽が顔を出しました。おはようございます。誕生日の御来光です。今年も一年よろしくお願いします。


◼︎07時39分 三原市本郷町南方(20km)

竹原市を抜けて三原市に突入。ここまで無休足。そして無問題。3時間で20kmはかなり良いペース。


◼︎07時47分 三原市本郷町南方(21km)

2頭のイノシシが国道沿いの畑の中から私に熱い視線を送り、ブヒブヒと激励してくれました。ありがとう。頑張って歩きます。


◼︎08時01分 三原市本郷町南方(23km)

岡山まで107kmの道路標識が初登場。この距離が長いかどうか、今は深く考えないようにする。ただ、気分は決して悪くない。


◼︎10時50分 三原市城町(38km)

三原駅に到着。東広島から出発し、新幹線の駅を1区間分歩いたことになる。気分的には、あっと言う間の1区間だった。


◼︎11時39分 三原市糸崎町(44km)

強風の中、海沿いの国道を元気よく歩く。暑かったので、吹き付ける風が非常に気持ち良い。ロードバイクに乗ったブログ友達の缶タロウさんとすれ違ったが、残念ながら声までは掛けられず。


◼︎12時02分 三原市木原町(46km)

三原市を抜けて、尾道市へ突入。本日の最高気温は25℃。ここからしばらくは暑さとの戦いとなる。


◼︎12時59分 尾道市新浜(49km)

尾道市内のDAISO(ダイソー)にてシナモンロールに変わる保護アイテムを物色するも、場違いなサイズのスクイーズしか見当たらず。靴下の中に忍び込ませるにはあまりにも大き過ぎるが、これでも無いよりはマシかと、渋々購入する。出来れば最後まで使いたくないが…。


◼︎13時10分 尾道市東御所町(50km)

尾道駅前を通過。ちょうど50km地点。

暑いけれど、まだまだ元気モリモリ。


◼︎13時36分 尾道市尾崎本町(52km)

尾道大橋の下を快調に通過。

いつ見ても尾道水道の景観は絵になるね。


◼︎14時33分 尾道市高須町(56km)

尾道市を抜けて、福山市へ入る。過去の遠足でこの道を何度も歩いているが、明るい時間帯に歩くのは初めてのこと。順調、順調。超順調。


◼︎15時52分 福山市赤坂町(65km)

前回の終了地点である備後赤坂駅前。ちなみにここは遠足の中間地点。前回はここまで15時間を要したところ、今回は11時間20分で到着。ペース配分としては少し速過ぎるか?


◼︎15時58分 福山市赤坂町(66km)

自販機の前で長めの休憩。基本的に、休憩時には靴を脱ぎ、足裏マッサージとストレッチを入念に行う。無論、コーラは必ず飲むようにする。食料に関しては、リュックの中のカロリーメイトや栄養ゼリーが主食。コンビニ等での買い物は必要最低限に留める。


◼︎16時33分 福山市津之郷町(69km)

今回のウォーキングスタイルを自撮り。言わずもがな、服装に季節感はゼロ。ポールの長さは長め(好み)に設定している。


◼︎16時59分 福山市南本庄(70km)

芦田川を渡り切って振り返ると、西の彼方で太陽が沈もうとしていた。ありがとう、太陽。おかげさまでクソ暑かったよ。


◼︎17時18分 福山市東桜町(71km)

福山市役所前を通過。奥に見えるのは福山駅。社会人一年目に住んでいた町だけど、まさかその時は今のような価値観を持つなんて思ってもみなかったな。


◼︎17時20分 福山市延広町(72km)

岡山までの残り距離が、数字的に現実味を帯びてきた。ペースも良好。少し肌寒くなって来たので、モンベルのジオライン(薄手)とコンプレッションタイツを着用。まだまだ小走りが出来る体力もあるけど、油断は禁物。いつか必ず、地獄は来る。


◼︎19時22分 笠岡市用之江(80km)

待ちに待った岡山県の標識を通過。県境を越えるのは、気持ち良いね。肩や腰、脚部の筋疲労は感じるも、ストレッチをすれば寛解するレベル。


◼︎20時39分 笠岡市笠岡(85km)

第2回遠足のリタイア地点である笠岡駅を通過。今回は心身共にまだ余裕があるが、ここに来て肛門が痛み始める。ついに痔獄の始まりか。


◼︎21時58分 浅口郡里庄町(91km)

笠岡市を抜けて浅口郡を通過中。両足裏に出来始めたマメと、ヒリヒリとした肛門の痛みに耐える時間。暗いために景色もあまり変わらず、メンタルが少しずつ、そして確実に削られていく。


◼︎22時18分 浅口市鴨方町(94km)

浅口郡を通過したと思ったら、浅口市が待っていた。この界隈は無駄に長く感じる閑散とした直線道路。定期的に襲ってくる睡魔は、出しゃばりな肛門とマメの痛みが即座に追い払ってくれた。


◼︎23時48分 浅口市金光町(100km)

24時間テレビであれば感動のフィナーレが待ち受ける100km地点は、浅口市内のトンネルの中。ここまでの所要時間は19時間13分。さすがにペースはやや落ちてきたが、それでも上々の通過タイム。


◼︎00時38分 倉敷市玉島(103km)

国道2号線が高架になるため側道を歩き、住宅街に迷い込んでいるうちにいつの間にか倉敷市内に入っていた様子。こういう展開はマジで萎える。勘弁してほしい。新しい市町村へ入る瞬間、それはロングウォークをする上ではモチベーションを上げる重要なタイミングですから。


◼︎00時58分 倉敷市玉島(104km)

住宅路地から再び(一時的に)2号線に復帰するも、またすぐに側道へと下ろされる。この先はしばらく、街灯の無い真っ暗な新幹線の高架下を歩き続ける事になる。筋肉痛とは違う足の痛みと本格的に向き合い始めたのは、この真っ暗な田舎道でのこと。


◼︎01時39分 倉敷市(107km)

暗闇の中にポツンと光る、新倉敷駅に到着。歩行ペースはさらに低下しつつあるけど、残りはあと、、、新幹線駅にして1区間分だ。


新幹線駅1区間。


昨日は短く感じた1区間が、、、


今日はとてつもなく、、、長い。


思えばここが、地獄の入り口だった。


次第に耐え難い苦痛を伴い、後楽園が近付けば近付くほど、何故だか果てしなく長く感じていく時間と距離の感覚。


◼︎02時54分 倉敷市船穂町(110km)

擦り減った心身を立て直すべく、久しぶりに現れたコンビニに吸い寄せられるように入った。何はともあれ炭水化物を摂取しながら暖を取ろうと、美味しそうなスパゲッティとホット紅茶を購入。誰もいない真夜中のイートインスペースの席に座って癒しを求めるやいなや、やさぐれた女の店員に「イートインスペースのご利用は22時までですけどー。」と軽くあしらわれてしまい、この遠足最初で最後の温かい食事を、冷たいアスファルトの上で食べることになる。


嗚呼、無情。


◼︎03時22分 倉敷市船穂町(112km)

人の温かさに触れる事も出来ず、実に冴えない最後の晩餐にはなったが、気を取り直して再出発。長めの休憩とストレッチにも関わらず、足の鈍痛が全く消えていない事に気付くも、それに気付かないフリをして前へ前へと歩みを進める。


◼︎04時38分 倉敷市八王子町(115km)

出発から24時間が経過。いつの間にか肛門の痛みを全く感じなくなっている事に気が付く。「あれ?」っと思ってお尻に力を入れてみると、お尻の穴の出しゃばり小僧は引っ込んでいた。これまでの経験上、一度発症した痔は酷くなる一方だと思っていただけに、これは本当に驚いた。この事実は「倉敷の奇跡」として、僕の記憶にいつまでも残り続けるだろう。たぶん。


◼︎05時42分 倉敷市西坂(119km)

肛門は奇跡的に完全寛解したが、足裏に出来たマメの痛みがほとんど気にならないくらい、足周り(中足骨〜足根骨周囲)の小さな関節達が強く疼き始める。両足の痛みにより歩行ペースは確実に低下。ウォーキング中のおじいさんに付いて行くのがやっとの歩行速度となる。


◼︎06時38分 倉敷市二子(122km)

この遠足にて2回目の御来光を迎える。この辺りから足回りの痛みが顕著となり、明らかな歩行障害が出始める。肩や腰の鈍痛も増したが、足の痛みに比べると「屁」みたいなもの。ペースはどんどん低下し、必然的に休憩回数は増えていく。しかし、たとえ休憩を取ろうとも、その痛みが消えることは決して無い。あと10kmが、とてつもなく長く思える。地獄だ。間違いなく僕は今、地獄の中を彷徨っている。でも、せっかくここまで歩いてきたんだ。ここでリタイアをするわけにはいかない。


◼︎07時10分 倉敷市上東(124km)

幸か不幸か。あまりの歩行ペースの遅さに、脚部の筋疲労は完全に消え失せた。久しぶりの完全徹夜にも関わらず、心肺機能は全く異常なし。ただただ、足が痛い。とにかく痛い。立っているだけでも、自重により圧迫される足裏が滅茶苦茶痛い。思考回路もネガティブになり、「あと3時間もあれば着く!」なんて楽観的には思えず、「あと3時間もこの痛みに耐えなければいけないのか…!」としか思えない心理状況に。


◼︎07時24分 岡山市北区中撫川(125km)

ようやく最後の町。岡山市へと突入した。ペースはかなり落ちているが、何が起ころうとも気合いで乗り切る所存。はやぶさ太郎は覚悟を決めた。逆に言うと、覚悟を決めないと中断したくなるレベルの痛み。良い大人が「痛い痛い」と泣き言ばかり言って聞き苦しいと思うが、本当に痛くて痛くて堪らない。この遠足の醍醐味を、身体中で味わう時間帯が続いた。


◼︎07時56分 岡山市北区川入(127km)

靴の内側に接する足の側面(外側部)の痛みに耐えられなくなってきたため、予備に持参したサンダル(クロックス)にチェンジしてみた。しかし、踵が付いてこない履き物では歩行時に余計な力を必要とし、それが新たな強い痛みを生み出すことに繋がったため、30分も経たないうちにジョギングシューズに逆戻り。



◼︎08時15分 岡山市北区川入(128km)

サンダル作戦は失敗に終わり、この地獄の痛みからは離れられない事が確定した。気持ちが折れそうになった時に食べようと決めていた間食(下の娘に貰ったグミ)を食べて、脆弱な心を奮い立たせる。


嗚呼、、、


こんなことになるなんて知ってれば誰も遠足になんか行かないだろう。


でも、みんな「何か」に背中を押されて地獄に足を突っ込むんだ。


大抵その「何か」は自分の意思じゃない。


他人や環境に強制されて仕方なくだ。


ただし、自分で自分の背中を押した奴の見る地獄は別だ。


その地獄の先にある何かを見ている。


それは希望かもしれないし、


さらなる地獄かもしれない。


それは、進み続けた者にしか分からない。


って、進撃の巨人の24巻でエレン・イェーガーが言ってました。



◼︎08時47分 岡山市北区花尻(129km)

実は倉敷市内に入る前から、最も痛む患部を保護するべく靴下の中にスクイーズを詰め込んでいる。歩様がおかしいうえに、パッと見では足首が異常に腫れ上がった痛々しい姿。見る者の同情を誘う悲壮感溢れるビジュアルだが、こうしなければ痛くて歩けないのだ。


◼︎10時08分 岡山市北区駅元町(133km)

ついに岡山駅に到着。距離にしてフルマラソンの3倍。さらには東広島-三原-新尾道-福山-新倉敷-岡山と、新幹線駅を5区間分歩いた。ゴール前にも関わらず、岡山駅への到達は実に感慨深いものがあった。


ちなみにこの直後、Googleマップに誘われて下りる必要のない地下街に迷い込み、時間と気力を無駄にロスしてしまう。


◼︎10時33分 岡山市北区石関町(134km)

実際には岡山駅から後楽園までは地下街を通る必要はなく、直線道路を2km弱。再び地上に出てからは足を止めることなく、しかしながら両足共に歪な歩様で一歩一歩前へと進んだ。


◼︎10時33分 岡山市北区丸の内(134km)

そしてついに左手前方に捉えた後楽園。


あの橋を渡れば、、、


あともう少しで、、、


◼︎10時35分 岡山市北区後楽園(135km)

後楽園へと入る月見橋を渡りながら、岡山城を観る。相変わらず足は痛い。滅茶苦茶痛い。でも、痛いのは痛いけど、喜びと、充実感と、達成感と、解放感が折り重なった万感の思いが押し寄せる中、、、




ついに、、、




◼︎10時39分 後楽園正門(135.95km)

後楽園正門前に無事到着!!!




あーーーー!




着いたーーーー!




長かったーーーー!




30時間かかって、、、




いや、、、




13年、、、




そう、13年だ!




これでようやく終わった!




僕は負け犬じゃなくなった!




苦節13年、、、僕はどんな山を登っても、どんな海で遊んでも、どれだけ自転車を走らせても、どれだけ身体を酷使しても、この「遠足の不実行」を忘れる事が出来なかった。


不実行を塗り替えるために、努力と信念が必要だったことは言うまでもない。


全ては「最初の遠足の失敗」から始まり、良くも悪くもこの「遠足の不実行」が僕を成長させ、人生に彩りを与えてくれたが、お恥ずかしながら重ねた失敗の数は計4回。体質的に不向きな挑戦ではあったにせよ、自分を語る上での汚点であった事もまた事実。


それもようやく、今日で方が付いた。


もう、これ以上歩かなくて良いんだ。




…。




まー、そうは言っても、、、


これから吉備団子を食べるためだけに、痛いのを我慢して後楽園の中をもう少し歩かなきゃいけないんだけどね。。。



「さて、団子でも食べに行きますか!」


って感じのフィナーレでした。


ちなみに下のGPSログの通り、出発時刻は21日土曜日の朝4時35分。



翌日の10時40分にGPSを切っているので、記録上の所要時間は30時間05分ということになりますが、


後楽園では10時35分に写真を撮っているので、自宅から後楽園までは30時間00分ジャストでギリギリセーフといって良いでしょう。はやぶさ太郎は時間を守る男だという事も同時に証明されました。


あー、後楽園の様子はですね、、、



とても綺麗な庭園でしたよ。


あまり歩けませんでしたけど。

でも痛いのを我慢してでも、少し頑張って歩いてみたくなるような、、、


そのくらいの良さが、この後楽園にはありました。


そしてこれが13年越しの吉備団子。


中に餡子が入って上品なお味でしたが、


僕は普通の吉備団子の方が好きかなー。


っていうか、御抹茶よりビールでしょ。


…などと、元も子もない事を思ってしまった、後楽園でのひと時ございました。



おしまい。