※前編はこちら
こちらの記事はネタバレありです。
どうも( ^_^)/
地元愛はそんなにない者です。
千葉愛に溢れた小説を読み終えました。
渡航
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。
前編はただ俺の八幡への思いが溢れ出し、ただの強火のラブレターになってしまったので、まずはちゃんとあらすじを書きますね。
ぼっちの高校生である比企谷八幡は、そのひねくれ切った性根を見かねた教師平塚静から『奉仕部』なる謎の部活に入ることを強要される。才色兼備ながらまた別の意味で問題児の部長・雪ノ下雪乃と最初の依頼主でもあった由比ヶ浜結衣とともに騒がしい日々を過ごすことになる。
八幡、雪乃、結衣の三人にはちょっとだけこじれた事情というか事件が絡んでおるのですが、なんだかんだでラブコメです。
八幡は雪乃の妥協しない在り方に憧れ、結衣は八幡に恋し、雪乃は結衣との友情と八幡に惹かれる恋慕との板挟みに苦しむわけです。
などと書いてしまったら、きっと八幡は怒ります。
「言えねぇだろ。……こんなの、言葉になってたまるかよ」
我ながら情けない声で笑い、くしゃりと顔を歪めた。
言葉一つじゃ足りねぇよ。
本音も建前も冗談も全部費やしたって、伝えきれる気がしない。
そんな単純な感情じゃない。たった一言で伝えられる感情が含まれているのはまちがいない。けど、それを一つの枠に押し込めれば嘘になる。
(14巻 P.397-398より)
そうだな八幡。
実際としてどうかは関係ない。
三人の関係がもたらした問題が、それを解きほぐす方法が簡単なものであって欲しくないから、たくさん難しく考えて、半分くらいは自覚的に無理やりにでもこじれさせてここまで来たんだろう。
分かるよ八幡。
お前はそういうやつだ(最後方腕組みポーズ)。
せやかて八幡。
こいつぁぶっちゃけ“トライアングラー”以外の何物でもねぇぜよ?
マクロス八幡。
ネットをチラリと覗けば未だに、雪乃派結衣派(と、いろは派)が仲良く喧嘩しとるのぜ?
最終的に祝福されるべき少年が心から救われる物語で、非常にいいものを見させてもらったといったところです。
しかしここに、まだぜんぜん救われてない女の子がいます。
結衣じゃないですよ。
確かに結衣はその名の通り八幡と雪乃を“結”び、二人の“かすがい”の役割を結果として引き受けねばならなかったわけですが、彼女が求める光は未だに消えていません。求め続ける限り救いの芽は常にあり、物語はまだまだ続くのです。
それがどうなるかは新シリーズ『結』を読んでから決めるとして。
『俺ガイル』の核心は『三角関係』で、でも奉仕部の関係を壊したくもなくてにっちもさっちもいかなくなってどうしたもんかしゃんこりゃとなっているだけの物語です。
なので、実際に八幡自身がその言葉を口にしたときは「やった! 普通のラブコメ主人公がなかなか言えないことを言ってのける! そこ痺れる以下略ゥ!」と興奮したものですが(今さらですがこの読者は酷く変態です)、直後、この作品の事件・混乱・ひっかき回しの元たる陽乃が『共依存』なんて言葉でふっかけてきたせいで余計に拗れてしまいます。
この陽乃、いわばリトル八幡かつある面ではビッグ八幡なキャラで、彼と同じく光をさまよい求めていながらトリックスター止まり、というか年上であるがゆえに“大人”の役割を押し付けられ、八幡たちのように間違える青春を送ることができないなかなか不憫で拗ねた女の子です。
そのめちゃくちゃな行動原理やバックボーンは断片的に語られるのみで、彼女が具体的になにを求めていたのかは最後まではっきりとしないままです。
八幡たち高校生の目から見れば自分たちを常に手のひらで転がしてくる超然とした恐ろしい人物ですが、少し目線を高くすれば「暇なの? 大学は?」と真顔で訊きたくなるほど母校に遊びに来るめんどくさい大学二年生でしかないという複雑なキャラクターです。
なかなか好かれにくいとはいえ、陽乃を主人公にしたスピンオフなどあったら絶対に読みたいくらいには興味深いです。そんな本が出たら内容はほぼ太宰のアレでしょうが。
少なくとも彼女がいたおかげで『俺ガイル』はこじんまりと丸く収まらずこうして語り尽せる作品として完結したのだろうと思います。
八幡がひたすら彼女を怖がるのは陽乃が「何もなかった未来の八幡」だからかもしれません。
そして陽乃が八幡をどこか求めている気がするのも、彼に過大な期待を寄せているからなどと考えました。
しかしな陽乃。
八幡はスーパーマンじゃないのだぜ?
ただ外見がそう悪くなく、文系の秀才で、地味な事務仕事はコツコツと真面目にこなし、妹思いで仲間思いで友達思いでめんどくさいくらい誠実なだけの高校生だ。
やはり俺は八幡と友達になりたいですね。どこかにいないでしょうか。
八幡と雪乃の結婚式で勝手に流して盛大に嫌がられたい楽曲。