Mahler Nr.9 聴き比べ
学生時代にハマりまくった所謂「マラ9」。
家にCD4種類あったので、久々に(ウン十年ぶりに?)通勤途上に聴き比べた。
ジュリーニ・シカゴ
ラトル・ベルリン
バーンスタイン・ベルリン
ブーレーズ・シカゴ
がそれ。記憶ではレコード(!)でバルビローリ・ロンドン?というのも実家に保管してあるはずだが、それは未聴。
ジュリーニは最初に聴いたときに感じた印象と大きくは変わらないが、こんなに彫刻の深い演奏だったかな、という印象で物凄く丁寧でかつダイナミクスの大きなスケールのでかい演奏。オケはすごく上手くてジュリーニの意図をちゃんと音化できている。ちょっとテンポがおそすぎるかな、とは思うものの、その遅さが破綻を招いていない、むしろいい印象に繋がるんだからジュリーニの音楽作りの大きさを感じる。同じシカゴだがブーレーズのほうはオケの上手さは同じだが、なんだかすごく冷たい演奏でオケが上手いだけにただ演奏してるだけ、という印象を禁じえない。買った当初の印象は譜面に忠実でいい演奏というものだっただけに、これは自分の好みが変わったということか。
同じベルリンでもラトルとバーンスタインは当然アプローチがまるで違ってる。ラトルのほうはかなり冷静な演奏。ただ要所要所でラトルらしい「ぐわ〜!」と燃焼する瞬間があって(楽譜を逸脱してない範囲で上品に&楽譜に忠実なのに燃焼感が出るのがすごい)、そのメリハリが全体をうまくまとめている印象。同じ印象はラトルのラフマニノフ2番(ロンドン交響楽団)と共通していて、あんなにメロウな曲をやりすぎずに、でも甘さは十分に出すというバランスの良さに共通の指揮者の思想?を感じる。バーンスタインのほうはまぁ有名な演奏なわけで、ほとんどリハせずに(できずに)本番1発の演奏。部分的にメチャクチャで、買った当時は「言われるほどいい演奏か」と思ったわけだが、年をとるとキズがあっても名演というものが存在することを理解していて、その典型がこれ。キズだらけなんだが、吠えながら指揮するレニーに音楽の神が憑依してる感が凄い。類を見ない独自の音楽世界で、もう今後こういう個性の立った指揮者は出ないんだろうなぁ、という感を強くする。特に最近は小真面目なエリート然とした指揮者が多くて・・・。
ということでなかなかいい体験だった。
「エレクトラ」@ハンブルグ
人類史上に燦然と輝く名作「サロメ」に隠れて(単なる続編とか二番煎じ、とか言われるんでしょうなぁ)、地味な「エレクトラ」なんだが自分はあの徹頭徹尾冷酷な復讐劇に総毛立つほうなので、かなり好きなオペラ。なんでも標準的な日本人にはこのいかにも西洋的な復讐劇は重くて辛いそうなんだが、フツーの日本人でない(と自覚のある)自分には無縁の批判だ。
BSで放送されたのはハンブルグでの2021年のライブ。指揮がケント・ナガノで、ミュンヘンではイマイチ成功しなかった所以のイマイチかったるい指揮ぶり(なんともテンポが遅めで、ワクワク感に不足する)は相変わらずなんだが、それを凌駕する作品の魅力で押し切った公演。物議を醸しそうなのが(実際醸したのが)演出で、残り2分のところで自分は大笑いしてしまったが、こういうのが嫌いな人もいるんだろうなぁ。実際ブーイングはかなりだった。以前からなんで最後に「オレスト!」と叫ぶのがエレクトラじゃなくてクリソテミスなんだろう、と疑問に思っていたし、死んだはずのオレストが急にあらわれて、しかもエレクトラはすぐには気づかなくて、とい う、ある意味オペラ的な二転三転がホフマンスタールの台本にしてはちょっとまどろっこしい、と思っていたので、そういう意味では今回の演出はふざけ過ぎという批判は理解するけど、まぁ楽しめた。
最近読んだ本
「激動 日本左翼史」
碩学・佐藤優と聞き手&小ネタ担当(と勝手に命名)の池上彰による、共著という名前をつけた対談の第2弾。今回も佐藤の深い背景理解と思想の流れが出色である。比して池上は身の回りに起こった(どうでもいい)ことの紹介と誰でも知ってる事実を述べるに留まっていて、彼我の実力差は歴然。最初からそういうキャラでやっているんなら少しは安心なんだけどどうなんでしょ。ところで、第1弾と比べて、新左翼による論文(なのかアジビラなのか)の引用が増えているわけなんだが、それの読みにくいこと・・。脳だけでしか理解していない頭デッカチの理屈を読むのは辛いなぁ。このへんが新左翼がダメになった1つの理由かも(まぁ現実離れした武装闘争が当然直接の引き金なわけだけど)。第3弾も出るみたいなので多分買うけど・・・。
「オペラ対訳×分析ハンドブック サロメ」(広瀬大介)
某ブログで紹介されていてすぐに購入。音楽理論には詳しくない(どの調からどの調に転調するのが自然で、どの音が属和音で〜、とか)自分だが、それでも十分に楽しめる名解説書。サロメとヨカナーンがずっと1音ずつ基音がぶつかる調で必ず書かれている、とかシーンに合わせてシュトラウスは調を決めてから作曲した、とか、トリスタンのモチーフがこっそり隠れている、とか、ニンマリしてしまう解説が溢れている。なんとなく感じていた不思議なコード進行(楽譜じゃなくて音で感じていた)の背景学理や思想も理解できて、次からサロメを聴くことが3倍たのしくなる本。
Field of Dreams
こんなにいい映画だったっけなぁ。
まぁ、若さ、は愚かさということだ。前回観たのは多分30年位前。ファンタジー映画、という感じで全然わかっていなかった。今観てみれば、主人公が東海岸の労働者階級の出で父親と折り合いが悪くて、大学はバークレーを出たインテリで、それなのにアイオワで農夫をやっていて地域で浮いていて・・、という背景がよくわかる。多分シューレスジョーは彩りで、やっぱりアメリカ映画の鉄板ネタである父との和解と理解。ラストシーンのキャッチボールのシーン、自分の子供のときの父とのキャッチボールを思い出して泣けた。
「中野のお父さん」
3月の出張時に機内で一気読みした「中野のお父さんは謎を解くか 」の前作。北村薫著。
こちらも一気読み(まぁ1時間半くらいあればこの手の本なら読める)したが、面白いには面白いものの、第2作(先に読んだほう)のほうが面白いし、言い方は悪いが教養が身につく感じ。第1作を先に読んだら、第2作を手にとったかどうかは微妙である。それくらい第2作は面白い。第3作は現在単行本なので、文庫になったら買うかも。
マーガレット・アトウッド2題
ディストピアをテーマにした2つは、35年ぶりの続編でリンクされている。
・侍女の物語
・誓願
第1作の侍女の物語は、読み出して「なんて現代を切り取った小説なんだ!」と思ったんだが、しばらくして1985年の作品と知って腰を抜かすほど驚愕。未来を見通すアトウッドの慧眼を尊敬する。非常に独特な構造の小説で、主人公(名前がない・通称はあるんだけど)とその社会の閉塞がこれでもか!と紙面から立ち上がる。僕たちもこういうディストピアに対して何が何でも反対しないといけないぞ、と。その意味では、控えめに言っても身から出た錆・自業自得の痛快時は何十年か経って振り返ったときにディストピアへの偉大な抵抗、という金字塔になる予感。
それはともかく35年ぶりで出た続編は、第1作と実にシームレスにつながった作品。リディア小母がなぜ体制を裏切るのか、と書き込みがやや弱いんだが、彼女がなぜ体制側になったのか、という前史が詳細に記述されていて、彼女もまた1人のアイヒマンだ、ということが伝わってくるので、そこである程度納得できない感は解消される。全編(第1作もそうだが)アトウッドらしい言葉遊び(これは「獄中シェイクスピア劇団」でも存分に発揮されていたが)が散りばめられていて、女史の博学さとウィットと煌めきを感じられる作品。
代表強化月間総括
4週連続代表戦ウィーク!
ウルグアイ相手だと慣らし運転程度で勝てる。問題はフランス。あちらさんも1軍半だけど、こちらもコロナのせいで1軍半になってしまった。まぁ負傷者がでることも想定して、これも訓練の一部。
で、ともかく現状のベストメンバーが組めた最終戦。なぜか2軍扱いだった茂野が(リザーブ田村との相性というか組んでる時間が長いから、という理由で?)リザーブに入って嫌な予感。先週リザーブだった中島や、追加招集した小山のほうが数段上だと思うんだが・・・。序盤から齋藤の手綱さばきが見事。BKは代役CTBの中野があんなにうまいオフロードができるようになったのか!というハンドリングで狭いサイドを突破するなどして2トライ、と狙い通りの展開。ディフェンスもSOの李を守りではウィングに入れて守りの負担をへらす(というかマトモに狙われるとまだあの体格では持たない)という工夫で善戦。これってまさか勝てるんじゃない!?という期待いっぱいで前半終了。
後半は暑さと疲労(とチームとしても未完成さ)でお互いミスもありながら、ジャパンは粘って辛抱して15-13で残り10分。ここで茂野が世紀の大ポカを・・・・(激怒)。齋藤に比べてFWへの声掛けが少なくて、あのシーンでもボールがまだスクラムの中にあることをFWに伝達できてない。なのでリーチが一回離れかけて、反則とられることに気づいてスクラムに戻っているのに、茂野は1人BWラインに入るのでスクラムサイドに巨大な穴が空いてしまって・・・。ルールわかってるのか。もう二度と招集しなくていいよ。
残り5分で渾身の一発とも言うべきラインアウトからのタタフの突進(フランスのSOジャリベールは文字通り粉々になってた)があったが、これも課題であるボール扱いの甘さ(ウルグアイ戦でも散見)で痛恨のノックオン。やっぱり普段できないことは本番でもできない。結局15-20。
秋にNZ・イングランド・フランスと3連戦あるそうで、そこでだいたいのメンバーを決める感じだと思うが、FWはこれでもう決まり(姫野が戻るのでリーチは本番にはリザーブになるかもしれないが)。坂手のスローイングはもう上手くなりようがないだろうから、ラインアウトの不安定さはもう我慢するしかない(堀江に40分以上頑張れとは言えないし、後半の大事なところで坂手投入ってのも怖すぎる)。SHは齋藤・流で決まり(もう1人メンバー入りだろうからSOとの組み合わせで決まる→小山?中島?)、SOも松田は決まりであとは田村が結局最有力かな(そうなると茂野が残りそうで困るが)。李は悪くないけどディフェンスの課題があるし、山沢は今ひとつ安定感に欠ける。BKも中村と松島が戻ると中野と山中が外れて野口とリザーブ争いになる、ということでほぼ決まりかな。ということで骨格はほぼ見えていて、あとはリザーブの層の厚さを増して、1軍半でもアメリカとサモアに勝てるようにするのが今後の大きな課題の1つと見る。
ここ数ヶ月で読んだ本
気づけば随分間が空いた。
理由ははっきりしていて昨年末から3月末にかけての空前絶後のプロジェクト。経験してみて、「世界はどこも一緒」という結論を得て、がっかりして、同時に開き直って、ベートーヴェンに助けられて(あと部分的に村田諒太)、元気になって今に至る、という感じ。で、ともかく読んだ本総ざらい。
・「知ってるつもり〜無知の科学〜」(スローマン&ファーンバック)
・「探求する精神」(大栗博司)
・「生者と死者に告ぐ」(ノイハウス)
・「中野のお父さんは謎を解くか」(北村薫)
・「小説 ムソリーニ」(スクラーティ)
・「行く 行った 行ってしまった」(エルペンベック)
どれも濃淡の差こそあれ面白かった。中野の・・は年末の須藤先生の書評で紹介されていて気楽に読めそうだったので読んでみたが、気楽である一方、文壇謎解き、みたいな感じで、本好きな人なら内容充実なんじゃないかな。15時間の機内を楽しく過ごせた(まぁ大変だったけど)。
6/3追記:エルペンベックの「行く・・・」を忘れていた。難民問題と旧東ドイ ツ統一問題、いづれもボーダーはどこか、という通奏低音の上で並列的に取り扱う小説で、著者は才人、という雰囲気が溢れている。
最近読んだ本
研究が多忙(っていうか障害が多い)ので手短に。
「人新世の資本論」(斉藤幸平)
新書で30万部と爆発的に売れているマルクス主義思想の本。最初にA新聞で斉藤幸平を知ったときに、ものすごい知性が出てきたと思った(大阪市大に着任したてくらいのとき)んだが、予想通りの知のきらめきで、こういう人材を日本社会は大事にすべきだな、と思う次第。内容的にはオブラートでの包み方がうまい(中核的思想へのプロセスがうまい)印象で、自分的には特別になにかクリエイティブなものは感じなかったが、主張そのものの先進性と真っ当さは揺るぎない。
「アンゲラ・メルケル」(マリオン・ヴァン・ランテルゲム)
4期16年もドイツ首相を務めたメルケルの評伝。NHK-BSの海外ドキュメンタリーでもこの著者を語り手にして作った番組が放送されていた。特になにか目立った改革や政治的成果を挙げたというわけではない(ように思える)けど、国民にもヨーロッパ人にも評価される稀代の名宰相の人物像がよくわかる本。自分は、極端に走らず慎重でかつ人道的決断力に優れた政治家だ、と評価しているほうだけど、アンチの言い分では、その時その時で世論に阿った決断をしただけの鈍重な人、という見方もあるみたい。自分はそれには与するものではないけど。何かをすればいい、というのは僕は間違っていると思っていて、うまく行っているときは(というよりも普通の状態のときは)なにもしないことも重要だ、と思っているので。永遠の改革幻想(改革しないとだめ、改革すればよくなる的な)は嫌いだし、現に周囲でそれで失敗しまくっているので。
大学・決勝
帝京27-14明治。
総括的に言えば予想通りディフェンスで勝ったほうである帝京のディフェンス勝ち。明治のオフェンスもなかなか強力で、普通ならトライまで持っていけそうなオプションもいろいろ出したが、帝京の、ダブルタックル→ラックへの次の早い入り、の流れがよく、さらに突破されたあとのフォローも重層的で早いのでなかなか点に繋がらなかったかな。勝敗を分けたのは、実はちょっとしたことなんじゃないか(最初のトライは球運が帝京に転がっただけだし、前半最後のトライは明治的には避けられた)と思うけど、その差を明治がひっくり返すのも大変だった気がする。SO高本のコンバージョンが準決勝から不調だったところがつけ込む隙だったとは思うが、というのはあるが、全般的には順当な結果だったかな。それにしても細木主将があんなに号泣するとは・・・。そして明治の飯沼主将の毅然した態度も立派だった。
昨年度、天理が優勝した時点での予想を見直すと、「早稲田本命、対抗は明治(FW再建次第)・帝京(BK再建次第)、慶應・天理は苦しくて東海はいつもどおりのコンセプトで・・・」、となっている。一番外れたのは早稲田の不振だが、これは個人的には監督交代が大きく響いたと見てる。相良さんのままなら本命のままだったはず(これも大田尾監督就任のときに記事にして、早稲田暗雲と書いている)。明治はうまくFWをブラッシュアップできたし、帝京は無印のWTB(白國)・CTB(志和地)をうまく育てて、ハーフ団をなんとかまとめられた。天理・慶應の不振は予想通りで、東海の進化を拒否したスタイルも予想通り。ということは、早稲田が予想より伸びなかった、に尽きるかな(主将がBKだったのも早稲田の宿痾から逃げられなかったか・・)。
鬼も笑う来年度予想だが、今日の帝京FWの充実ぶりとここ数年の殻を破った試合ぶりを見ると、帝京中心と見る。明治は下級生も多いので対抗馬一番手(主将が誰になるか)。早稲田はハーフ団を中心にどこまで再建できるか、なんだが、今年は監督が変わらないので大きく変貌できなさそう。慶應以下は苦しい。リーグ戦は、まぁ東海中心なんだろうが、ここも伸びしろに期待できないかな。日大の今年度の変貌をベースに伸びてほしいが。むしろ準決勝で個性と存在感を煌めかせた京産大の来年度の成長には大きく期待したい。
(追記)
と記事をアップしたら、岩出監督退任なの!?まだ63歳なので驚いた。後任は相馬コーチとのことで、岩出さんがよく見て判断したそうなのでチームが大きく崩れることはないと思うけど、どういうチームづくりになるのかは未知数だなぁ。来年度への楽しみは増えた。