早明戦2022
明治35-21早稲田@国立。
下馬評・実力差・相良主将欠場のハンデ、からすれば早稲田は善戦した、と言えよう。もっとも勝てる感じは皆無だったが。劣勢と言われても何かを起こせるのが大西鐡之祐以来の早稲田の伝統だとすれば寂しい限りで首脳陣(〜監督)の責任は重大。映像からも(そういうのがあればいいというわけではないものの)悲壮感が伝わらない。
試合を通して明治のディフェンスは出色の出来で、特にBKはあの高負荷な速いラインディフェンスをよく80+α分続けたな、という印象。裏を取られて2本やられはしたものの、FWの速い集散とも相俟って全体に付け入る隙を与えなかった。ずいぶん練習してるんだなぁ、という感じで、一方の早稲田は練習してる感じがない。10番の1年生は相変わらずいるのかいないのかわからないし、BKは基本的にディフェンスの追いまくられてオフェンスのことを考えているゆとりがなさそう。取ったトライも2本は明治のミス+真っすぐ走ったときのWTBの速さで、もう1本でゴール前で明治が反則してくれたおかげ。10回やっても早稲田は2回勝てるかどうか、という感じで、その2回を次の12/25に(もっとも東洋に不覚を取らなければ、だが)持ってこられるかが勝負か。一方の明治は概ねこのままで良さそうだが、なぜかハイパントの処理が異様に下手くそで(まぁ2年生FBがかなり全体に不安な感じなのでそのせい?)、3週間しっかりキック処理の練習だけすれば大丈夫そう。
で、選手権。山が決まって、12/25の準々決勝の予想カードは以下の通り。
帝京ー同志社
天理ー東海
京産ー流経
早稲田ー明治
順当に行けばこうなると思うが・・・。ただ同志社は部の再生のためには福岡工大に負けたほうが将来にはいいんじゃないか、とすら思える。あんなチームが選手権に出ちゃダメだ、と・・・(近大のほうがいいラグビーやってる)。天理はさすがに筑波には負けない。慶應は絶対に流経に勝てない。で、密かに楽しみなのは東洋がどれくらい早稲田に通用するか、だな。早稲田FWをある程度封じられればひょっとするかも?
マーラー3番
チューリヒ・トーンハレの演奏、パーヴォ・ヤルヴィ指揮。
マーラーの3番って一定以上の技量があるオケなら必ずカタルシスが得られる曲だ、と思う。2番や9番みたいな情念・怨念?は不要で、サウンド的にはよく響くように書かれていて、旋律もきれいで、各楽器の美しさがよく際立ち旋律が与えられているので。あんまりアンサンブルの精緻さは要求されなさそうだし、どういうスコアになってるのか混乱するところもない。
ヤルヴィの指揮は丁寧で中庸、特に奇矯なところもなく、テンポはやや遅めで丁寧に和音を彫刻していく音楽作り。まぁサラサラと流れていくといえばそうだが、まぁそういう曲なので。最終楽章も基盤からきちんと手順を追って盛り上げていく感じで、バーンスタインみたいな情熱の炎はみえないが、これはこれで品のいい、佳い演奏だと思う。最後は期待通りの大いなるカタルシスで幕。
ホールの都合で合唱団は最初からスタンバイ。少年合唱は出番まで時間持て余して退屈しちゃうんじゃないか、と思ったが、まぁモゾモゾする子もいるけど、一方でティンパニ大好き!みたいな少年が軽く首を振りながら楽しんで聴いているシーンもあって、微笑ましい。ちなみにホールはチューリヒ湖の畔にあるいつものホールらしいが(以前前は通ったはず。オペラハウスと違って中には入らず)、物凄い残響で正に風呂場の鳴り。曲にはあってるけど、精緻なアンサンブルを求められる曲のときは結構たいへんなのでは?最初あまりに鳴るので反響板の設置ミスか、とさえ思った。
早慶戦2022
100周年記念マッチなのね。
通算成績(W71勝、K20勝、ドロー7)的には「ライバル」となんて烏滸がましくて言えない慶應だが、事前の予想が頻繁に外れるマッチの代表格でもあるし、戦力差に関わらず毎年接戦にはなるので、今年も楽しみに観戦。豪雨の秩父宮にたくさん集まってくれたのも吉。
共に先週はそれぞれ帝京・明治に粉砕されたので低調な試合が予想されたわけだが、まぁ基本的にはそういうトーン。前半の早稲田は悲惨な出来で、いくら雨でもこりゃないだろう、というミスの連発。慶應は慶應で一気に40年は時計の針を戻したようなハイパント=過去のアップアンドアンダー攻撃で、まぁ勝つためには手段選ばずなんだろうが、ボールゲームとしての面白さは正直欠ける。早稲田はマトモにアップアンドアンダーを受けて立ち、なぜか14番の槙が頻繁に処理にもたつき、完全に慶應ペースで前半終了。後半どうなるの、と思ったらようやく早稲田が蹴り合いから脱却して慶應LOのシンビンにも助けられ12-10と逆転。更に19-10となって
時計の針も残り10分切ったのになぜか慶應はハイパントをやめず、おいおい時間ないのにボールを相手に渡してどうすんだ、と僕には理解できないラグビー脳に画面に激しく突っ込む。最後は勝ち点1取りにPG入れて19-13で終戦。毎年実力は早稲田がかなり上のはずなのにほぼ1本差で試合が終わるのには感心する。
で、勝った早稲田だが、これは選手権はキツそうだ。SOの1年生は全く目立たず、BKは技量不足(吉村にはもっと伸びてほしかったなぁ。SOのほうが適役?)。オフェンスはHO佐藤と相良主将頼み(時々No.8の村田が頑張る)が、その主将が結構重症そうで、以後出られるの?という不安も。結局監督交代が完全に仇となって、2年で前監督の遺産を全部食いつぶした、という印象。慶應はもともとのタレント不足は如何ともし難い印象で、次の帝京戦は粉砕されること必須。ということで両校とも年越しが目標ってところかな。今の感じだと京産のほうが強いのでは?
17-35 France@Toulouse
フランスにおけるラグビーマッド発信源であるトゥールーズでフランス戦。確か中東でブルーカラースポーツの祭典が始まる日だったような気がするがスタンドは満員。観客はテンション上がりすぎてラ・マルセイエーズのテンポが早すぎて伴奏とズレまくる。
ジャパンはなぜか松島をリザーブに、ライリーをWTBに入れてファンデンヒーファーをoutside CTBに。ラピースがFLに戻って姫野がNo.8というのは朗報。フランスはSHデュポンが前の試合でレッド喰らったらしく出られないが他はほぼベストメンバー。夏の15-20みたいな接戦にはなりそうもないが、彼我の距離が正確にわかるという意味で大変うれしいマッチ。
イングランド戦ほどボコられなかったのはFWが健闘したからか。ある程度攻守共に機能したわけなんだが、そうなるとミスが大きく勝敗を分ける。で、本誌では以前から懸念していたFB山中の不安定さが・・・・(嘆)。まぁ山中で2本以上失点したね。最初のフランスのトライもゴロパントの捌き方がおかしく後逸。もっと酷いのはハイパント⇒バウンドのボールになぜか足から滑り込んで案の定ボールにも触れず後逸し一気にとられた。この試合の山中は本当にひどくて完全に1人戦犯状態。WTBにライリー入れるならFB松島でいいじゃん。野口もなんで使わないの?サイズがあるからキック処理やディフェンスがいいわけじゃないし、そもそも山中ってFBとしてのセンスない、と思っているので。
ということで山中がいなければもう少し接戦になった感じもするわけだが、あとはやっぱりSOか。前回大会のセットプレーからのサインプレーは水際立った上手さで、よくこんな繊細でギリギリのパスが通ってラインブレイクできるな、という印象だったんだが(事実そうだった)、それに比べると完成度は数段落ちる。これってinside CTBが同じ人(中村)なのでひとえにSOの技量?松田復帰が待たれるなぁ。山澤も李もがんばってはいるんだけど、これ以上の凝ったオフェンスができない感じがする。あとは地味にoutside CTBがラファエレからライリーに変わったのも影響してるかも。ライリーは基本パワーランナーでラファエレのような芸術的タッチのゴロパントが出せないので、相手BKラインに裏を取られる怖さがないか・・?BKに回したときのゲインの平均距離ははっきり落ちてる感じがするんだけどどうなんだろう。
ということで現状理解には役立ったマッチだったが、イングランドはともかくアルゼンチンにこれで勝てるのか、となると不安しかないなぁ。まぁ3年前も不安しかなかった中でスコットランドもアイルランドも叩きのめしたわけだけど・・。
13-52 England@Twickenham
聖地Twickenhamに響き渡る地鳴りのような野太い"God Save the King"。これだけで感動できる。
NZ相手に大善戦のジャパンがEnglandにどれくらい食らいつけるか、が焦点だったがあえなく完敗。メンバー的にはほとんどAll Blacks戦と同じで、これが今の1本目。フィフィタを変えたのが良かったのかどうか分からなかったが、ある程度キック処理に走らされることも想定したか?Englandは、というか有り体に言えばエディさんはいつもどおり手抜かりなく弱点を分析して、予想よりも更にキック重視・パワー勝負。しかもAll Blacks戦で機能したダブルタックルをうまく外すようにズラしたパス回しを徹底し、さらにディフェンスでは物凄い出足の良さで10-12番ラインで展開を寸断。要するに前回ボクスにやられたのと同じ思想で来た、ということ。早めにグラバーキックでバックスを裏に走らせる、とか工夫もありえたと思うけど、まぁマトモに受けて立っちゃったということか。
スクラム戦も立ち上がりに微妙な判定で取られてリズムを崩した。あれもエディ流?後半修正できたものの、先制パンチは痛い。多分に偶然のおかげで齋藤が1本とって7-17で前半終われればよかったんだけど、山中が時間と相手のラッシュの速さを考慮しないでキック処理したボールを自分で蹴らずにSO?に回しちゃうもんだから・・・・。これがあるのでFB山中は怖い。後半立ち上がりに失点する課題も相変わらずで、後半早々に試合は終わってしまった。
しかしイングランドはデカいね・・・。FBが21歳で185cm?187cm?WTBもCTBもバカでかくてゴツくて、All Blacksって小柄だな、って思ったよ。思い切り武闘派のラグビーでまぁ風土や国民性にはあってるのか・・。あのチームと10ヶ月後にもう一度やるなんて、考えただけで暗い気持ちになる。先週プーマスが30-29で勝ったそうだが、よく勝てたね、っていうかこのままじゃジャパンまずい・・。
今週末のフランス戦はもっとやられるかもしれない。まぁいまのうちの課題全部出しきって、ということであればOK。
最近読んだ本
「深読みシェイクスピア」(松岡和子)
前記事にも書いたように、こちらのほうがずっとよかった。翻訳というのは単に対応する言葉を探して決める作業じゃなくて、全体の筋書きや時代背景などを踏まえた上で(ある程度翻訳者の解釈も入れられて)行う随分知的な作業だ、ということを認識。
「帰れない山」(パオロ・コニエッティ)
某書評で随分と評価が高かったので読んでみたが、いまひとつ自分には山場というか書きどころというか、そういうところが見えず、ただ淡々と話が進んでいき、さらにカタルシスもこれといった読後感も残らない、という果汁10%のジュースみたいな本で・・・。こういうテイストが好きな人もいるんだろうが・・・。
「あの胸が岬のように遠かった」(永田和宏)
歌人・河野裕子の没後12年ということで記念シンポジウムがあり、参加してきた。永田さんの講演もあって、河野さんの歌を読み解く鼎談なんかもあって、それなりに楽しめた。まぁ自分的には興味の対象は永田さんで、世界的な生物物理学者と時代を代表する著名な歌人がどう両立しているのか、という点に関心があるわけだが、永田さんの創作のかなりの源になっている(いた)のが河野さんなので、そういう夫婦の姿への興味もあって読んでみた。2人の馴れ初めから結婚までが語られた本なわけだが、まぁここまで赤裸々に自分の&自分たちの苦悩や煩悶、ある意味醜悪な姿を晒しちゃっていいのかな、という感じで、読んでるこっちが恥ずかしくなっちゃう感じもある。同じ感想は永田さんの講演でも感じて、自分が息子だったら「お父さん、ちょっと加減して話してよ」って感じなんだが、まぁ創作っていうのはある程度自分を晒すことであるので、そういう意味での感覚が違うのかも。もしそうなら自分は創作者にはなれないなぁ、なんて思って読んでいた。とにかく2人の大恋愛にゴチソウサマ感たっぷりなんだが、特にいろんな意味で「手のかかる」人という印象の河野さんを永田さんは受け入れて大事にしたんだなぁ、と永田さん偉いなぁ、というのが包括的感想。
「われらが少女A」(高村薫)
20年以上前に随分ハマった高村薫。「神の火」「マークスの山」「レディ・ジョーカー」「リビエラを撃て」「照柿」・・・。読んだなぁ。こういう括りは良くないんだろうが、女性作家として異例?傑出した?メカや科学に対する極めて緻密な描写に驚かされたこと、登場人物に平板な人がいなくて人物描写が極めて丁寧で全員の個性が彫刻され「立って」いること、単純なミステリーではなくむしろ犯罪を入り口に人間の悲しさや寂しさ、業、を書ききる筆力に圧倒されたものだ。最近読んでいなかったが、本に没頭できる創作を読みたくて、久々に購入した(正確には3年前に購入していた)のをいよいよ読みだした。ら、3日で読んじゃった。一気に読ませる筆力は相変わらずで、登場人物1人1人にいろんな生きていく上での事情があって、犯人と思われる人にも理由や止むに止まれぬ事情や背景があって・・・。で、読後感は悪くない、というよりなにがずっしり残る、高村薫らしい一作だった。読んでいない「冷血」、買いに行く。
31-38 All Blacks
All Blacksが来てくれる!ということで国立は超満員。コロナだけどまぁいいや。
前回は31-69で叩きのめされたわけだが(もっと昔には文字化もしたくないくらいやられた)、自分の感想としては31点取れてよかったというものは全くない。69点も取れば手も抜くしディフェンスもザルになるのが人情。今回は失点を50点以内に抑えて20点くらい取れれば上出来、というつもりだったわけだが・・・。
All Blacksはバレット兄弟が欠場、とかで完全な1本目ではない感じ。一方のジャパンは松田以外はこれがガチの1本目。SHでは流先発はやや意外だったが、結局本番も斎藤と併用するので調子のいいほうが1本目になるという感じなんだろう(事実斎藤はあまり調子よくなくて流は随分好調だったと思う)。立ち上がりからジャパンのディフェンスは炎のダブルタックルで、これが80分続けられれば、という条件付きながら大量失点はない=前回ほどはボコられない、という感じだった。それでも気づけば3-21で(2本目?のラインアウトのロングスローからの内への切り返しでセヴ・リースが一気にトライしたプレーは凄かった)、オフェンスになかなか好機が来ず(松島もフィフィタも目立たず)、このままズルズル行っちゃうのか、と思ったら山澤の足技とライリーの絶妙のオフロードパス(NZ-9のクリスティを引きつけたところまでの動きが秀逸)で2本取れてしまって17-21で前半終了。点差ほどジャパンに迫力も感じないんだがAll Blacksの良さをうまく殺して接戦に持ち込んでいる、という渋い展開。
後半立ち上がりに(いつもここが課題)取られてまた消沈したものの、切れずにしっかり守ってディアンズのキックチャージ⇒トライ、ねじ込まれたら姫野がねじ込み返し(判定的にはギリギリだった)、で31-35。あー、まさか勝っちゃうのか、でもAll Blacksにこんなに早く勝ってしまっていいのかな、なんだか勝っちゃうと申し訳ないな、などと変な気を使いだしたところで、流石に自陣から繋ぎきれずに反則してノーサイド。最後NZがPG蹴ったのには仰天した。なんでなの?
まぁW杯本番で当たったらこうは行かないんだろうし、NZがガチの1本目で来ればこうは行かないんだろうし、といろいろと思うものの、ジャパンがきちんと準備して集中すればこれくらいできる、ということで先行きに明るいものを感じる。あとはオフェンスだなぁ。理詰めで崩して取ったトライが少ない(2本目のライリー⇒流が唯一)点が不安。一方でゴール前まで行けば力勝負でも点が取れる力があるのは好材料。FWはもうこれで確定(ラピース戻るとリーチと入れ替え?)、あとは2本目の底上げのみ。BKは福岡の穴が・・・、というのはあるんだが、気づけばフィフィタがなんとなく収まってくれていて(代表ではおとなしめなのでもっと爆発してほしいが)、ラファエレのようなグラバーキックの名手がBKにほしいけどまぁライリーでもタイプの違うCTBでまぁいいか、という感じもあって、あとはFBを山中で行くのか野口で行くのかはたまたいいWTB見つけてきて松島をFBに回すのか、ここですかね。山中はなぁ・・・。当たるとでかいけどラグビー脳がいまひとつ不安で大ポカやりそうで怖い。野口のほうが安心だけどどうなんだろうか。
あとは聖地トゥイッケナムでイングランド、トゥールーズでフランス、ですか。イングランド戦、楽しみだなぁ。
「神々の黄昏」@バイロイト
メディア報道では散々に叩かれたらしい今年の「リング」。
演出のバレンティン・シュヴァルツが、指輪=子供と読み替えてネットフリックス的なファミリースキャンダルドラマに読み替えたのが保守的な観客のお気に召さなかった、ということらしい。で、BSで放送された「神々の黄昏」を見てみたよ。
最初の驚くのは演出ではなく、登場する歌手たちが揃って巨軀であること・・・(苦笑)。ジークフリート役のクレイ・ヒリー、ブリュンヒルデ役のイレーネ・テオリン(ますます膨張した・・・。15年前にニュルンベルクのチクルスを見たときはむしろホッソリ嫋やかな印象だったんだが・・)、をはじめ、全員が膨張してる。21世紀にこれだけの巨体を揃えられるのはそれはそれで凄い?で、そっちに気が取られて演出の奇抜さ?にまで十分気が行かなかった感じもするが、演出もセットがチープな割に読み替えも全般に謎で、ネタが拾いきれていない漫才みたい。まぁ壮絶なブーイングも宜なるかな。高い競争率で安くはないチケット買って、4日間空調なしで硬い椅子に座って18時間耐えた結果がこれか、という徒労 感がそうさせる、ということはよく理解できる。自分もニュルンベルクのチクルスは、演奏や歌手は(あの値段だし)十分満足したが、とにかく演出がクソで・・・、だったので。
ますますバイロイト詣に足が遠のくなぁ。
「金鶏」
リムスキー・コルサコフ作、リヨン国立歌劇場、ロベルト・バリストレーリ指揮。BS放送録画。
演出をバリー・コスキーがやったということで不安だらけだったわけだが、結果的にはこういう寓意的なオペラには合っている、という結論。なにせバイロイトのマイスタージンガーもバイエルンの薔薇の騎士もそりゃひどい演出で、個人的には全く合わない演出家(決して現代演出が嫌いじゃないのはこれまでも記事にしてきた通り)。オフザケが過ぎる割にストーリーの本質に迫れていない唯我独尊夜郎自大な人、って印象だったわけだが、「金鶏」は寓意の塊みたいなオペラで、そこにはなぜかマッチしてる。アボカドに醤油かけて食うようなもん?(違うか)
旋律はきれいだし結構現代的な音楽作りだしストーリーは皮肉とエッジが効いてるし、ヨーロッパに行くときにそこでやってたら一度見てみたいオペラだな、と、 ヤナーチェクの「利口な女狐の物語」以来思ったオペラだった。
最近読んだ本
「物語 ウクライナの歴史」(黒川裕次)
これは読まないと!と思って購入。元ウクライナ大使がスキタイの時代から独立までを網羅的かつコンパクトにまとめた、なかなかの好著。随分と背景の理解が進んだ。これだけ独立の気風をもつ民族を相手にするとそりゃ上手くはいかんわな、と。
「南蛮阿房列車」(阿川弘之)
阿川氏が「鉄」というのは知らなかった(後輩が教えてくれた)!で、その後輩が「面白いですよ」と教えてくれたのがこれ。文字通り世界中をただ鉄道に乗るためだけに訪ねる、という究極の無意味な旅(本人には無意味じゃないんだけど)。おまけに遠藤周作や北杜夫が時々一緒に行ってくれたり、海軍時代の同期とえらく無駄に盛り上がったり、と面白いエピソードのてんこ盛り。阿川は癇癪持ちで口の悪い人だったらしく、そういう人ならではの魅力が行間から溢れてる(問題発言てんこ盛りで、令和のコードには抵触しまくるんだろうが)。なのに、各エッセイの最後は旅の終わりに漂うそこはかとない寂寥感によって品よくまとめられていて、そこは手練の作家。読後感もよい。
「すべての季節のシェイクスピア」(松岡和子)
シェイクスピアは、そりゃもう名言の宝庫で全集も時々読み直してるわけだが、全作翻訳達成した松岡によるエッセイのようなシェイクスピア案内のような本。僕は日本の演劇には興味ないので、もっと演出とか解釈にウェイトをおいてくれてもいいんだけど、それは同時に買った「深読みシェイクスピア」に期待か。