「ゆ」で始まり「め」で終わるオモテの句と「め」ではじめ「ゆ」で終わる句をウラにした二重構造の俳諧です。題材が、自然ではなくて人情ですから、俳句というより川柳ですかね。
ゆ——め
湯に沈く/素戔嗚が屁くたし/陶炉閉め (雑)
ゆにしづく すさがへくたし たうろしめ
目白うた/しだくペガサス/沓師に湯 (三秋)
季語:目白・三秋。(注:三夏としている季語辞典もある。個人的には初夏だと思う)「ペガサス」が「ペガサスの大四辺形」と称して秋の星の代表格で有名だから、併せて一本、にした。
素戔嗚(すさ):スサノオノミコト。天照大神の弟。
陶炉(とうろ):茶の湯で使われる道具の一。
ペガサス:翼を持つ馬。ギリシア神話の天馬。
しだく:①壊したり状態を乱したりする。砕く。荒らす。②乱れる。荒れる。
沓師(くつし):靴職人。
湯に浸かっているスサノオが強い匂いの屁を放った。アマテラスは急いで天岩戸を閉め難を避けたとさ。東洋の神話おしまい。西洋の神話どうぞ。
メジロが美しい声で歌います。「天馬ペガサスがいら立って激しく足掻いたのでひずめを壊してしまいました。修理した蹄鉄屋さんに馬主の英雄ベレロフォンはお礼に茶の湯の接待をしました。湯は湯でも靴屋にはケロリン桶のほうだろうと飼い葉おけの旦那に言うたとか言わなかったとか…
整合性に難あり、の句ですね。捌きから文句を言われるまえにつくりかえましょう。
征く無手に/素戔嗚が屁くたし/朶は宥め (雑)
ゆくむてに すさがへくたし だはなだめ
女七夕/しだくペガサス/荷で報ゆ (初秋)
征く(ゆく):戦場に向かう。
無手(むて):①手に武器などを持たないこと。素手。②なんのとりえもないこと。無芸。③収穫が無いこと。無駄。
朶(だ):垂れた花の枝。
女七夕(めたなばた):織女星。琴座の主星ヴェガのこと。白色一等星。
素手のタケル、いくらなんでも悪さはしないと思ったら、臭い屁をこきやがった。みるみるしおれてゆく花の枝を慰める始末さ。
ヴェガは、やたらにはやりたけるペガサスの荷駄を、お仕置きで重くしてやったとさ。
どうやら整ったようです。これにしましょう。
前回、歯医者に行く話をかきましたが、その続きです。
治療に53分かかりました。10分以上要したのははじめてです。下の歯、三本まとめてブリッジを掛けます。というや否や削岩機の音が治療室に響きました。まるで鉄橋工事です。40分ほど経ったでしょうか、くしゃみがしたくなりました。これも初めてのことです。
鼻が乾いて鼻水が固まり茶柱のようになり、鼻中隔をつつくのです。「鼻たけ」は聞いたことがありますが、鼻に茶柱が立ったのは初めてです。医者は、動かないで!というのですが、ウイーンと電気が唸り出すと茶柱が微妙に振動して鼻の粘膜をつつくのですよ。つらかったなあ。死ぬかと思いましたよ。
疲れたなあ。
鼻に茶柱と掛けて何と解く? 日当たりのいい縁側のおばさんたちと解く。そのこころは、世間ばな(鼻)しに幸せいっぱい。