そとや屠蘇(静かに屠蘇を召し上がれ)。ことしもよろしくご贔屓を(そと:①すこし②静かに)
た——れ
⑴ 「た」ではじまって「れ」でおわる。
⑵ 順読みと逆読みの二つの俳句。二階建て俳句あそび。
田作りへ/箸向かひ弟/子ら陽たれ (新年)
たづくりへ はしむかひおと こらひたれ
Les田平子/度負ひ嚙む皺/屁理屈多 (新年)
季語:田作り・田平子(たびらこ)・新年。
田作り(たづくり):①田を耕作すること。②五万米(ごまめ)の異名。季語ではタツクリ(「ツ」が濁らない)。なお、動詞「たづくる」になると、意味が変わり「よそおう」となり(着物を)着る、意味になる。「手作る」を当てるが、手作りではない。
箸向かふ(はしむかう):「弟(オト)」に掛かる枕詞。古代の箸は折り箸(一本の木を折り曲げてその両端で食べ物を挟むようにした箸)で、向き合う意から。
Les(レ):【仏】定冠詞複数。まるで「れ」はニホンゴではないようだ。
田平子(たびらこ):佛ノ座。コオニタビラコ。キク科多年草。手元のカドカワ歳時記では一年草になっている。タンポポに似る。なお、ホトケノザという名称は現在ではシソ科のホトケノザに移った。
お正月の祝い膳。晴れやかな弟の取り箸は田作りに向かおうとしている。若いひとよ。すべからく太陽たれ。
春の七草よ。その代表として佛ノ座よ。この御老体は会うたびに増えている深い皺の一本一本に深遠な哲理を蔵しておられる。その哲理が口から放たれるや屁理屈となる…ようだが。
「れ」で始まる日本語はほとんどない。苦し紛れにフランス語!? 姑息に過ぎるのでゆっくりネット渉猟しました。「れ」で始まる季語「新年」……ただひとつありました。それが「礼者」です。
大師粥/差料すらし/湯茶し淹れ (新年)
だいしがゆ さしれうすらし ゆちやしいれ
礼者治癒/知らす嬉しさ/床し甚 (新年)
季語:大師粥・礼者・新年。
大師粥(だいしがゆ):大師講の日に食べる小豆粥。知恵粥。
差料(さしりょう):自分が差すための刀。差し前。
礼者(れいじゃ):年賀に回る人。祝詞だけ述べて辞することを門礼という。初礼者。門礼者。賀客。年賀客。〈病牀を囲む礼者や五六人〉(子規)。
甚(いた):【副詞】はなはだしく。
年賀の客人に挨拶、羽織袴に腰の物までつけてのご主人、ひとしきり接待して湯茶のお点前でした。
奥ゆかしい御接待に痛み入りました。快気祝いのご報告を兼ねてのご挨拶は門礼だけのつもりでしたが、ついうれしくて長々と……
双子俳句ですから、一つが変わると相手も変わります。「た」を頭の季語。これは、あるところにはあるもんですね。叩き牛蒡・棚卸・大黒舞・大根注連・田遊び・大師粥・達磨市。以上七個です。
———大変な「暮れ」でした。
おめでとうございます。