回文俳句二連俳句(今回のみ三連俳句)渦連星「双子座」善知鳥 | ouroboros-34のブログ

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こころに映りゆく由無しごとを其処は可となく書き付けて
ごうなっだのでありますぐるらめ。

「渦連星・双子座」のシリーズに「口上」がありましたので、冒頭に披露します。

   前口上(まえこうじょう)

言葉遊びを面白がっています。
さて、俳句と短歌は普及しすぎているという感じですね。そこで回文の俳句、短歌とやってきましたが、その亜流として、しゃしゃり出でましたるは、はて、スクランブル位相幾何連詩、メビウス系の二連俳句とやら。
里山で団栗を拾うのも気晴らしになり俳句や短歌のようにそれなりに有用ですが、前人未到のヤブコギに挑むのも「気骨ある文士」として性分に合っているようで、回文山師・外連色葉漢の陰口に臆することなく「ムラ気ある書生」を演じています。
 ここでは本邦初見参、題して、双子座———二句ひと組で二連星ウロボロス。表裏一体とする回文俳句応用編です。どうですか?これがホントの二句一章躰。と当人は宣うがどうだか。

ペアで繰り広げられる、氷上ならぬ紙上の且つ至上の華麗なる輪舞をとくと御覧じろ。
    **
ウンヌンとありましたが今回は最後なので鴛鴦(おしどり)夫婦破鏡の巻「三角関係」です。


○うとうとし/てりかひはつゆ/ごめんなせ
もなりざよ/やすかたかすや/よさりなも
せなむめご/ゆつはひかりて/しどうとう
うとうとし/照り交ひ初湯/御免なせ
モナリザよ/安方仮すや/夜さりなも
背な梅籠/柚子葉光りて/此土善知鳥


御免(ごめん)なせ:「冷え物御免」:入込みの風呂へ入るときの挨拶の語。体が冷たいがごめんなさい、の意。「冷え物でござい」ともいう。江戸しぐさの一。
モナリザ:レオナルド=ダ=ビンチ作婦人の肖像画。Monna Lisa 【イタリア語】マダム・リザ。ラ=ジョコンダ。謎の微笑で有名。
安方(やすかた):善知鳥安方のこと。伝説上の鳥で、親鳥が「ウトウ」と鳴くと雛が「ヤスカタ」と鳴く。能や謡の種目になっている。
仮す(かす):①仮に与える。②見逃す。仮借する。
夜さり(よさり):夜になったころ。夜分。
なも:【終助詞】終助詞「なむ」の古形。余情をもたせる言い方。
此土(しど):この世。四土(しど・四つの仏土)に対比させた天台宗のことば。
善知鳥(うとう):チドリ目ウミスズメ科の海鳥。アイヌ名。北海道付近の離島に群生。海雀。三冬の季語。

ついうとうととまどろんでしまった。初湯の湯屋。「冷え物御免なすって」の客の声で目が覚める。
恋人よ。夢で善知鳥の親子が鳴きかわしていた。われにかえったら、——
きみは梅の籠を背にし柚子の葉が光る中に立っている。美しいこの世の天女、善知鳥。


  ***
おわりに———
 派生系の回文俳句をみてきましたが、回文は長いほど作るのが難しくなります。二連より三連のほうが難しい。一方、意外に思われるかもしれませんが、俳句二連・三連よりも短歌の回文のほうが短いのに遥かに難しいのです。これは当然なことで、俳句は上句と下句が中七を挟んでどちらも五音で対称構造となっているからです。(数学で「回文数」といいます)対して短歌は、上、五・七・五に対して、下、七・七と非対称なので非常に難しいというわけです。
 また、普通の俳句・短歌が文芸的情緒を要素とする作業であるのに対し、回文方式は、文芸を外れてコンポーネント構築手法のパズル的要素が主体作業となるため、文系よりもどちらかというと、工学系の思考方法の人のほうが能力的に向いていると思われるのです。
 情緒的要素よりも解析的要素の能力が求められる特異な文学であると思います。

句上(くあげ)(まとめ。連句が終わったら、整理して清書する作業)「テーマ」「季語」「季節」の順。

流れ魅す   菫      春
ビルの影   草むさし   夏
無月ぞや   月      秋
掌の     冬      冬
頓服の    没日     雑
須万いざ来  韮・繁縷   春
韮二分や   御慶     新年
屁がたとひ  転失気    雑
浮いて来い  浮き人形   夏
茫々汰    枯れすすき  秋
くふくふと  真鶸     冬
亡きおのの  野老     新年
魅熱旅    雲人     雑
ポルックス  独活     春
双子座と   土左     雑
禿主人    揚羽蝶    夏
雁の棹    雁      秋
齟齬類ふ   鰒      冬
ヤン決意   渡り漁夫   春
潮だまり   蟹      夏
卓犖と    太為爾歌   雑
俚家にです  狐狸     冬
螽蟖     螽蟖     秋
うとうとし  初湯     新年


  **

春     4
夏     4
秋     4
冬     4
新年    3
雑     5
計     24 組

おわりにの終わりに

 回文は短いほど作りやすい。
 これ自明の理ですね。
「ゐ(井戸)」「ゑ(絵)」…一字が最もやさしい。「みみ(耳)」ささ(笹)」…二字が次いでやさしい。三字になるとちょっと限られてくる。「トマト」。語がコトバになるのです。「しんぶんし」になると、五音でもう俳句の定型に届いていますね。意味も「新聞紙」「新分子」「人文史」「人糞死」…これまた無数にあります。

ところで、逆読みして同じ意味になるのが「回文」ですが、ここで取り上げた「拡張型回文二連俳句」は、日本語の同音異義語が多いという特徴のもとに作られています。
逆読みすると同文になる文よりも、違った文になるほうが圧倒的に多い、これもまた自明の理ですよね。(実際はそうでもないようで、私にはよくわかりません)

字数が少ないほど回文は作りやすい。そこで字数でランク付けすると、「回文俳句」は作るのが極めて容易、次いで「回文短歌」、ということになりますが、どっこい、そうカンタンではありません。
結論から申せば、ここに紹介した、回文二・三・四…連俳句(回文多連俳句)のほうが構造上(575が回文数であるため「連」がいくつあっても、すべて「回文数」になるため難易度はほとんど変わらない)、回文短歌よりも遥かにやさしいのです。初めて見た人はビックリして、この人は天才じゃなかろうか、と思うでしょうが、ゼッタイにそんなことはないのです。チンゲン菜と、どっこいどっこいです。

実際に作ってみてください。———論より証拠。贅言を尽くすよりわかっていただけるでしょう!

まだイノチがあるようなので次回から新趣向・新シリーズでお目に掛かりたいと思います。イノチ預けます。一宿一飯になっちゃた…