[も] 紫式部
物の怪(もののけ)に 身(み)竦(すく)められし 夕顔(ゆふがほ)か
増(ふ)ゆ痴れ者(しれら)めく 墨(すみ)に偈(げ)の野(の)も
———「源氏物語」の夕顔が物の怪(もののけ)に憑(と)りつかれて死んだ京の都もすっかり俗っぽくなり、寺院も商業化してしまった。墨染(すみぞめ)の衣(ころも)のしれものが大手を振って歩くミヤコに中身のない経文(きょうもん)が空虚に谺(こだま)している。
物の怪(もののけ):人に祟(たた)りをする妖怪変化(へんげ)。
夕顔(ゆうがお):源氏物語の登場人物。光源氏と逢引(あいびき)をした八月十五夜、物の怪に襲われて急死する。源氏物語の帖名。能の一。
痴れ者(しれもの):①度(ど)外(はず)れた愚(おろ)か者。②その道の巧者(こうしゃ)、達人。大した奴。したたか者。③乱暴者。
め・く:【接尾語】名詞などに付いて、…のような状態になる。…らしい。「いかにも夏めく」動詞カ行四段型に活用する。
墨(すみ):墨染めの略。ここでは、墨染の衣を着ている人。
偈(げ):仏教の教理。
「紫式部」:本名がわからないそうだ。夫の藤原宣孝の卒去(しゅっきょ)に伴(ともな)い詠んだ和歌を一首。
〈見し人の けぶりとなりし 夕べより 名ぞむつましき 塩釜の浦〉
原文はルビ付きで書いても、このブログに載せるとフリガナが括弧の中に表記され読み難くなります。相当、興をそがれますがやむを得ないことでした。ブログの限界です。
子どものころはまわりに物の怪(お化け)がたくさんいましたが、電気が明るくなると出てこなくなりました。どこに行ったんでしょうか。いや、別に会いたいわけではありませんが…