兼題は「重ね着」です。
ポピュラーな題なので、12句出しました。
皆さん、なかなか視点がユニークでみごとでした。
「重ね着」は「厚着」と歳時記では一緒にしているのもありますが、感覚的に微妙に違います。言ってみれば、「重ね着」のほうは、ユーモラスな気分があり、十分、滑稽ですので川柳と区別のつかないものが多数ありましたね。それと、身近な風景なので、主軸に立てにくく、わき役のような仕立てになっていたものが、これまた多数あったと思います。
また「着ぶくれ」と混同しているひともいたようです。
ではどうぞ。
●重ね着の子やおしゃぶりと夢のなか
「着ぶくれ」のほうだったかな?
●重ね着や親知らぬ子が親になる 「人」位選
親知らずで、沢庵噛んでいるような?
●重ね着の老女明治のひととなる
もともと明治生まれの人が、水を得た金魚のようにしゃんとした、という意味です。
●重ね着の共襟みせるわかづくり
●重ね着の肩が振り向く二重顎
「着ぶくれ」のほう。
●重ね着や着やせする性質(たち)とふ女
「やせ我慢」というコトバはありますが、これは「太かくし」? そういえば中国語では、妻のことを、「太太(タイタイ)」といいます。いや別に他意はありませんが。
●重ね着の落ち枝を踏む国分寺
「落ち枝」の季重なりが気がかりでしたが。ささやかな抵抗。
●薄曇りショパンのごとく重ね着す
アルバムを見ていつもそう思うのです。あ、今また思った!
●重ね着やアルプス連山白きもの
冠雪している、という意味ですが、季なりの二つ目は、ささやかな抵抗を避けて、遠回しに言ってみたもの。
〇重ね着のわれ里山の狸なり
出さなかった句のひとつ。お気に入りなのでお目にかけることにしました。生前葬のようなもの。ご焼香をどうぞ。
●重ね着のわれ狸穴を出ざるもの
あ、こっちのほうを出したんだった。
〇重ね着や竹林のなか消ゆ気配
なんのこっちゃ。今は意味わからん。あ、そうだ。小動物がいるのかなにかゴソゴソしたというのだった。今考えると、これが一番いいみたい!
〇重ね着して鱗をこさぐ大根煮る
たすき掛けして。どう見ても、「男賄い」の図ですね。
これ出さずに次の句を出したのでした。
●重ね着して鱗をこそぐ手の赤き
●重ね着や庭鳥向きをかへ転ぶ
「鶏」とすると、季重なり。え、季重なりじゃないって?
もうイヤダ。
おしまい