墓に添う桔梗の青のつよさかな
生前好きだった竜胆やブルーの花。見せかけばかり強がりだった妻の色。
うちのベランダに丹精していた鉢のうち、桔梗をえらび墓前に移植しておいた。
ことしは見事に6本のホネのパラソルのような青紫色のはなを6輪、つぼみ十個を数えた。
正式にはリンドウ科の多年草でトルコ桔梗らしい。
桔梗の季は秋なのに6月の終わりに咲いているのはおかしいと思ったら、墓の花はトルコ桔梗だったのだ。
夢の中に妻が現れる。
死んだはずだが…と疑ったことは一度もない。
記憶のなかの妻よりも夢のなかの妻のほうが《現実》に見えるのは…
なにげなく展開される残酷な事実に愕然とする。
存在の不確実性桔梗咲く
…バガテル。なのかもしれぬ桔梗咲く
bagatelle_瑣末、ささいなこと、つまらぬもの、小曲。