O   続いてのテーマは「ロシアW杯」です。本当は開催直後にやりたかったんだけど、だいぶ時間が経ってしまいました。

 
T   あえて今このタイミングで思い出しながら話していきましょう。
 
O   前回ブラジルW杯の時もそうだったけど、大会やっていた頃のお祭りムードというか興奮の中で考えたこととかを残しておきたくて、今回も取り上げてみたかったんだよね。半年経ってもう冷めてきてしまいましたが。
 
T   では直近のアジアカップを踏まえてのロシアW杯ということでやっていきましょう。始めるにあたってまず確認しておきたいのが、前回大会の対談にも残ってるんだけど、次のワールドカップまでには結婚していようという恒例の宣言(笑)。
 
O   ああ、たしかにそんなことも言ってましたね(笑)。
 
T   4年に一度の確認事項。
 
O   いやでも次は間違いないよ。カタールの頃には結婚してるよ(笑)。
 
T   ていう話をワールドカップごとにやって早何大会ですか(笑)?最初に言い出したのは2010年の南アフリカの頃だと思うんだけど。
 
O   人生の一里塚ですね。
 
T   とまあ、この話を続けていくと別の方向に行ってしまうので、本題のロシアW杯に話を戻していきましょう。
 
O   今回の大会で個人的に言えるのは、昨年は入社して10年の表彰があって、5日間のお休みをいただけたんだけど、普通の人なら旅行に行ったりするところ、僕はそれをすべて注ぎ込んでひたすらワールドカップを見てた。休暇の無駄遣い(笑)。
 
T   いやいや、いいじゃないの。僕は賛成するけどな。
 
O   とはいえ夜中の試合をリアルタイムで見てると生活リズムが崩れてしまうので、録画しておいて、朝起きてから結果を知る前に見るようにしていた。だから今回はけっこうたくさんの試合を見た。今までのワールドカップの中で最も試合数を見た大会だと思う。
 
T   ロシアW杯は過去最高の大会だったと評されることもあるぐらい、かなり評判の良い大会だったし、よかったんじゃないの。
 
O   休みをとったのは決勝トーナメントに入る前、グループリーグ前半の毎日何試合もやってる頃で、片っ端から試合を見てた。もうけっこう忘れてしまっているけど。
 
T   まるで小柳ルミ子だな(笑)。
 
O   小柳ルミ子、会社の先輩にも言われた(笑)。グループリーグ前半もいいんだけど、グループリーグ3試合目の同時間帯に平行して試合やってるのも面白いよね。とくに韓国対ドイツの試合とか、そのグループはどのチームにも可能性があったので、かなり面白く見れた。そうこうしてるうちにドイツが敗退しちゃったけど。
 
T   韓国に負けちゃったね。
 
O   これもたしか過去の対談でT君が言ってたと思うけど、優勝した国は次の大会でだめになるんだよね。
 
T   たしかにスペインとかもそうだったからね。そういった意味では僕は4年前からこの結果を予言してたのか。
 
O   そんなこと言ってたような気がしたので当時の対談を確認してみたんだけど、やっぱり「ドイツは次どうなるかわからないよ」みたいなことを言ってた。なので、ドイツ国民に謝ってください(笑)。
 
T   でもそうは言いつつも、ドイツのサッカーは手堅いから、優勝は無理でもそれなりのところまでは行くと思ってたんだけどな。まさかのグループリーグ敗退だったけど。
 
O   この明暗を分けたのもVARだと思うんだよね。詳しくは忘れちゃったけど、韓国の1点目はVARに助けられて入った点だったはず。で、2点目はノイアーも上がってきちゃって空のゴールに決められて試合終了となった。
 
T   たしかにロシアW杯を語る上で、今大会から導入されたVARの存在は避けて通れないね。
 
O   それは今回、アジアカップを見てても思ったんだよね。VARがあったから結果が変わった試合はけっこうたくさんあったと思う。
 
T   一つの革命だよね。VARは賛否両論あるみたいだけど、O君はどう思う?
 
O   僕は賛成派かな。クリーンでいいんじゃないかね。後腐れもないし。今ってテレビでリプレイが出るから、その場ですぐに答えが出ちゃう。そういうのが見過ごされて勝敗が決まっちゃうよりは、きっちりさせておくほうが今の時代にも合ってるのかなと思う。
 
T   ちょっとずるい話なんだけど、VAR導入前はスタジアムではリプレイのVTR流さなかったんだよね。
 
O   まあたしかに場合によっては暴動が起きたりしそうだからね。
 
T   Jリーグもホーム側のゴールシーンは流すんだけど、アウェイ側のゴールシーンは流さない。都合の悪いことは流さない大本営発表なのかなって思ってるけど。
 
O   ゴールライン割ってるのにゴールにならないとか、そういうのもあったりしたしね。それでゴールラインテクノロジーが導入されたり。
 
T   テニスの世界とかにもそういうのが入ってきているし、技術の発展とともに導入されていくのは必然なんだろうけどね。でも例えば、1966年のイングランド大会決勝のイングランド対ドイツで、ハーストのゴールが入ったか入ってないかというのは50年経った今でも未だに議論がされていて、そういう半世紀経っても議論できるような酒の肴がなくなってしまうことを悲しむ人もいるみたいだよ。
 
O   そうか、そういう見方もあるのか。
 
T   あとは負けたチームが審判批判できなくなっちゃうとか。
 
O   審判はそれぞれ癖があるからね。それも含めて面白いと捉えるのか、スポーツなんだから正しさを求めていくのか。
 
T   たまに審判ってものすごく不憫な職業だなって思うときがあるよ。スタジアムに何万人と入っていても、審判の味方っていないわけだからね。それでいて選手も合わせた出場者の中で誰よりも給料が安く、けなされることはあっても褒められることはない。こんなドMな職業ないよ(笑)。
 
To Be Continued...
O   あと『怒れる』と共通して出てくる議論に「殺してやる!」の表現に関するものがある。『日本人』のほうは「死んじゃえ!」なんだけど。実際には殺すつもりはなくても誇張表現で言うことがあるだろって話。そのへんもオリジナルの『怒れる』を意識して作っているのかなって思う。ちょっと、全然面白いこと言えてないけど大丈夫ですかね(笑)?
 
T   そもそもこれは面白いことを言うための対談じゃないでしょ(笑)。他に自分が面白いと思ったポイントは、この作品が作られたのが日本で裁判員制度が始まる前の時期ってこと。
 
O   90年ぐらいの作品だからそうなるか。
 
T   市民が裁判に参加するって制度が日本にはまったくなかった時代に、あえて架空で日本にもアメリカのように陪審員制度があったらという仮定のもと作られた作品で、その後日本では陪審員制度ではないけどそれに近い裁判員制度が始まって、この映画と同じようなことが実際に起きてるのかなって想像してみると面白く感じる。
 
O   まあ、自分も裁判員をやったことがあるわけではないから本当はどうなのかわからないけど、もしかしたらあんな議論が交わされてるのかもしれないね。
 
T   でも裁判員制度の場合は裁判官がある程度リードするみたいだから、完全に一から議論する陪審員制度とはまた違うんだけどね。そういった意味で、裁判員制度は日本人の国民性に合っているのかもしれない。
 
O   裁判員制度は仕事休んで行けるんだよね。だから早く仕事に戻りたい人はいないはずだ(笑)。
 
T   裁判員に選ばれたら行かざるをえないみたいだからね。そうしないとみんな拒否っちゃうだろうから。
 
O   できることならみんなやりたくないだろうしね。『日本人』の中でも、1番の陪審員長は一貫して無罪にしてるんだけど、その理由が今回の事件うんぬんではなく、以前にも一回陪審員をやったことがあって、そのとき有罪の判決を出して後味が悪かったら無罪にすると言うんだね。それはそれでどうかと思うんだけど(笑)。
 
T   まあ、たしかにね。
 
O   ちなみに1番の陪審員長はどっちの作品でも職業が教師なんだよね。そういうところもオリジナルに合わせたのかなって思う。
 
T   そもそも一番最初も、全員無罪になったのに議論したいからやっぱり有罪にしますってのもどうかと思う。早く帰りたいってのも違うと思うけど、このまま終わるのもよくないから議論するために有罪にしますというのは、本当は有罪と思ってないけど引き止めるためだけに有罪にしていて、それも違うんじゃないかな。
 
O   そうだよね。推定無罪だから、有罪で一致してる中を一人無罪にして議論するならわかるんだけど、全員無罪で一致してるならそれでいいんじゃないかな。
 
T   『怒れる』のほうはそっちの流れだったけどね。だからオリジナルの『怒れる』を知ってる人は、『日本人』のほうは無罪から有罪に流れていって最終的に有罪で決まるんだろうなと思って見るだろうね。
 
O   たしかに!自分もそう思って見てた!
 
T   でもそうすんなりいかないところが、パロディをうまく利用したどんでん返しになってるんだね。
 
O   逆に『日本人』のほうを先に見てから『怒れる』を見ると、捻られた展開の後で単純な展開を見ることになるから物足りなく感じるのかもしれないね。
 
T   そこは作者の三谷さんも、みんなオリジナルのほうは見てるだろうからという前提のもと作ってるだろうね。
 
O   この映画に関しては一つ個人的なエピソードがあって、会社の後輩たちと映画祭ってのをこれまでに2回やったんだよね。それぞれが紹介したい映画を持ち寄ってプレゼンして、見てみたいと思った映画に投票して、得票数が多かった映画を上映するの。
 
T   いろいろ面白いことやってるんだね。
 
O   それで後輩が『日本人』を持ってきて、僕がオリジナルの『怒れる』を持ってきてかぶっちゃったことがあった(笑)。
 
T   それは甲乙つけがたいな(笑)。
 
O   しかもプレゼンの順番はクジか何かで決めたんだけど、僕のほうが後になってて、後輩が「僕の紹介する映画はこれです!『12人の優しい日本人』!」って出した時に「やべぇ、どうしよう?」って思った(笑)。
 
T   そうか、その時点ではみんな何がエントリーされてるかわかってないのか。
 
O   だからその時の僕はたぶん無の表情になってたと思うよ。
 
T   「ちょっと待った!」ってそこで出しちゃえばよかったのに。
 
O   で、ようやく自分の番が回ってきて「『12人の怒れる男』です!」って出した時に、みんな「え?さっき聞いたよ」みたいな雰囲気になって(笑)。作品がかぶらなかっただけまだましだったけど。でも自分としてはまず『怒れる』から先に見てほしいって思いがあったんだけどな。
 
T   そこは絶対強引に押していくべきだったよ。
 
O   そして案の定負けるという(笑)。ほんと、いろんな意味で自分にとっては関わりの深い作品だよ。
 
T   今回は敗戦の傷をなめる対談になりましたね。
 
The End.
O   あと面白いと思ったのが、理由は違えど帰りたいやつはどっちにもいるってこと(笑)。『日本人』は仕事に戻りたい人で『怒れる』は野球を見に行きたい人なんだけど、常に帰りたい帰りたいしか言ってない。
 
T   それは12人もいたらいるだろうね。むしろ帰りたくない人のほうが少数派だろうし。
 
O   仕事の合間に来たのかよって話だよね。陪審員って、仕事の合間に来てできるようなものじゃないと思うんだが。
 
T   そういった意味でも『日本人』のほうが幅が広いね。さっきの相島さんの例もそうなんだけど、必ずしも善人ばかりではない。
 
O   梶原善がやってた途中でふてくされちゃうやつも極端なキャラだったよね。これまた私情を挟むタイプで、「被害者は30過ぎで20ぐらいの奥さんもらうなんてずるいよ!」みたいなこと言い出したりする(笑)。
 
T   それもあったね。だから許さんみたいなこと言うんだよね。 
 
O   「あんなやつ死んで当然なんだよ!」って、無罪派なのにかなり極端な意見(笑)。
 
T   さすがにそこまで非常識な人は陪審員やらないと思うんだけどね。
 
O   それと今回見返して思ったのが、最初に見たときは『日本人』のほうはそれぞれのキャラがあまり立ってない気がしたんだけど、改めて見るとそれぞれに見せ場があって、新しい証拠だとか気づきポイントを提案してくるのが別の人で、個々のキャラを立たせるポイントが作ってあるのがわかった。
 
T   たしかに『怒れる』のほうは最初に問題提起した人が常に議論をリードする主人公的な感じになってるけど、『日本人』のほうはそこまで主人公っぽい主人公はいないよね。ずっとリードしていくような人もいないし。
 
O   相島さんやトヨエツは目立ってはいるけど、主人公とまでは言えないね。
 
T   日本人のなあなあであったり、議論に流されやすいところがそういう部分にも反映されてるのかと思うね。
 
O   そんな中でも僕がとくに好きなキャラクターはサイコパスな(笑)喫茶店のマスター。急にとち狂ったように「自分には無理だ」とか「これ食べたら帰ります」とか言い出す。彼に至ってはそういうとこしか見せ場がない(笑)。
 
T   意見をころころ変えちゃう女性とかもいたよね。あれも僕は面白いと思ったけど。
 
O   あとマスターは他にも、差し入れに持ってきた甘栗を広げると「机の上散らかさないでください」と一蹴されたり、みんなが投票しやすいように紙に「有罪・無罪」と書いておいて丸で囲うだけの投票用紙を作ったら「ここは挙手にしましょう」と言われたりする(笑)。挙げ句の果てには酒も飲み始めちゃうし、完全にコメディキャラ。それがいいんだけど。
 
T   まさに三谷劇場だね。彼のドラマや映画は劇場型だから。
 
O   『12人の優しい日本人』ももともとは舞台なんだよね。舞台を映画化してる。他に覚えてるキャラはいますか?
 
T   うーん、さっき言った周りに流されやすい女性ぐらいかなぁ。
 
O   「あの子結婚してるのかな?」「あの体は子供産んでるよ」「帰りますか」ってやつね(笑)。
 
T   (笑)。ユーモアのセンスがすごいよね。オリジナルの『怒れる』のほうはシリアスな感じなのに。
 
O   そうだね、『怒れる』のほうはコメディの要素はなくて、ミステリーとかサスペンスといった感じの作品になってるね。
 
T   でも『日本人』のほうもミステリーの要素は入ってるよね。トラックに轢かれたのが、突き飛ばされたためなのかって。本当はどうだったんだろうって思う。
 
O   ただ、どっちの作品も机上で展開されてるだけで、実際どうだったのかはわからないんだよね。それが面白いところなんだけど。本当は有罪だったのかもしれない。
 
T   いろんな状況証拠が出てくるよね。ピザとか。
 
O   ピザに関しては二転三転するね。最初は子供のためにピザを頼んだことが家に帰れなくなることを予見していたのではないかということで、有罪の証拠として登場してくるんだけど、そのピザは子供一人で食べるには大きすぎるので、自分も一緒に食べるつもりだったのではないかと、途中から無罪を証明する根拠になる。
 
T   ああ、そうだったね。
 
To Be Continued...