O   では何年ぶりですかね?対談を始めましょう。

 
T   確認したら前回は2014年だった。
 
O   そうか、ブラジルW杯の時だったからね。5年ぶりですか。5年ぶりの対談一発目のテーマは『12人の優しい日本人』です。この対談企画をやりたいと思ったきっかけが三谷幸喜さんの映画の対談集を読んだことだったから、三谷作品はいつか取り上げてみたいと思ってた。
 
T   まさに原点回帰だね。
 
O   この作品は語るべきポイントも多そうで、対談のテーマとしてはいいんじゃないかと思った。もともとこの作品はパクりというか、パクりって言っちゃまずいんだけど…(笑)
 
T   オマージュね(笑)
 
O   オリジナルとなる『12人の怒れる男』という作品があって、その作品を三谷先生が焼き直した作品になるんだけど、僕は先に『怒れる』を見てから『優しい』を見た。Tさんはどういう順番で見ました?
 
T   同じだよ。『怒れる』を見てから『優しい』を見た。
 
O   やっぱりその順番で見たほうが面白いのかな?
 
T   もとを知っていたほうがパロディになってるところとかわかるからね。
 
O   キャラクターもオリジナルに比べるとだいぶ捻ってあるよね。まず『12人の怒れる男』はその名のとおり男しかいないんだけど、『12人の優しい日本人』は男女混合になってて、それも面白い。
 
T   時代背景を調べてみないとわからないけど、もしかしたら『怒れる』が作られた頃の陪審員制度では男しかできなかったのかもしれないね。タイトルは「怒れる」と「優しい」は言葉の対比がわかりやすいんだけど、「男」と「日本人」という言葉も対比がされてて、日本人の人間性を前面に押し出そうという三谷さんの意図を感じた。
 
O   たしかに日本人っぽさがすごく出てるんだよね。決断力のなさとか、周りの意見に流されるところとか。
 
T   だから『12人の怒れる男』という作品をモチーフにはしているんだけど、必ずしもなぞっているわけではなくて、結論を含め違った作品にはなっているかな。
 
O   さすが。僕は今回のために作品を見返してきたけど、T君は見返してないわりに良いことを言いますね(笑)。
 
T   見返してないことには触れない約束でしょ(笑)。
 
O   見返してない知識でどこまで闘えるか見せてもらいましょう。
 
T   でも見返してないとは言っても、比較的最近見てるからね。
 
O   さっきもちょっと触れたけど、『怒れる』のほうはキャラクターの個性がわりとはっきりしていて、例えば「偏見に満ちた人」とか「野球を見に行きたい人」とか一言で人物を表せるのに、『日本人』のほうは一人の人間にいろんな要素が入ってて、一言でこういう人というのが表しにくくなってる。
 
T   『怒れる』のほうはある意味ではキャラクターが確立し過ぎてるとも言える。それぞれの人物が有罪・無罪を変えはするんだけど、軸はブレてない。その点『日本人』は人間自体が流動的で、とくに相島一之さんの役なんかは最初は「議論しようよ」と問題提起する良い人なのかと思いきや、最後は豹変してただの個人的な恨みをぶちまけるようになる。
 
O   そう、そこ面白いんだよね。『怒れる』とオチは一緒になってる。最後の一人は自分の境遇に重ね合わせて個人的な恨みから有罪と言ってる人間が陥落して終了になる。ネタバレになっちゃうんだけど…
 
T   いやいや、今さらネタバレもないでしょ(笑)。
 
O   ラストは同じなんだけど、『日本人』のほうは最初に問題提起する人間と最後まで意固地になる人間が同じ人になってて、そこが面白い。
 
T   『怒れる』のほうでは最初に一人だけ無罪に挙げた人は正義の味方というか、常に冷静で知的で最後までそのスタンスを貫いてみんなを説得していくんだけど、『日本人』ではみんなが無罪な中で一人だけ有罪に挙げた人間は、実は私情に捕らわれた人間だったという。
 
O   最終的に無罪という評決もどちらの作品も同じなんだよね。
 
T   ただ『怒れる』は有罪から無罪に流れていくけど、『日本人』は無罪→有罪→無罪と展開していく違いがある。
 
O   行ったり来たりするんだよね。途中で若い女の子が「むうざい」って言ったりする(笑)。
 
T   そのへんは三谷コメディだね。
 
To Be Continued...

T バンプはテレビに出ないことでも有名だよね。この前Mステに初めて出て話題になってたけど。

 

O そもそもバンドの人ってあんまりテレビ出ないよね。最初からメジャーで売り出してる人たちは出てるかもしれないけど、インディーズから上がってきた人たちはあんまり出てるイメージがない。アジカンとかもそうだけど。

 

T テレビ嫌いな人もなかにはいるからね。バンプも出たけど、タモさんとのトークはなかったらしい。

 

O タモさんでもいじれなかったってことなのかな。

 

T 別にそういうわけではないでしょ(笑)。テレビに出ると大衆に媚びてる気がして嫌がる人もいるみたいだね。桑田佳祐の歌詞じゃないけど。

 

O 桑田佳祐の歌詞にそんなのあったっけ?

 

T 『すべての歌に懺悔しな!!』の歌詞に「テレビにゃ出ないと言ったのに」というのが。

 

O ああ、あったね。そう言えば、桑田佳祐とMステで思い出したけど、前にサザンが『愛と欲望の日々』でMステに出たときは、桑田さんがタモさんに「この曲はタモさんのために作った曲です」と言ってた(笑)。

 

T いかにも桑田さんらしいな(笑)。

 

O まあ、でもそういう大衆に媚びないところがファンに受けるのかもしれないね。

 

T それに反権力って見方もできるかもしれないね。大きな力に抵抗するというか。

 

O そもそもバンド名の「BUMP OF CHICKEN」も、日本語に訳すと「弱者の一撃」となるみたいだからね。そういう意味合いもあるのかもしれないな。自分たちの立ち位置を「チキン」としているバンド名ってのも面白いね。

 

T アイドルっぽさは全く無い名前だね。

 

O 逆にそういう名前でテレビにバンバン出まくってたら、それもそれで面白いかもしれない(笑)。

 

T すべては事務所の作戦次第だろうけどね。

 

O TさんはBUMP OF CHICKENのどんなところが気に入ってますか?

 

T やっぱり歌詞かな。歌っていうのは短歌や俳句のころからそうだけど、文字面だけでいかに勝負するかというのが本来の姿だと思うんだよね。バンプはそれに応えてくれるバンドだと思う。それに歌詞が良いと単純に心に沁みるし。

 

O バンプは歌詞に工夫があるところも良いよね。韻とかとはまた違うけど、歌の中に一つのテーマがあって、それが伏線のようにつながっていくのが面白い。ちょっと表現するのが難しいけど、何か遊び心のようなものが歌に隠されている。

 

T ちなみに僕の一番好きな歌詞は『メロディーフラッグ』の「僕らは嫌でも明日を迎えていつかは昨日を忘れる」ってところなんだよね。

 

O 深いですなぁ。

 

T とくに失恋時なんかには効果適面(笑)!O君は何か好きな歌詞はある?

 

O そうだなぁ、すぐにぱっと出てこないなぁ。歌詞が一番好きなのは『ロストマン』だけどね。でもその中でもとくにこのフレーズがってのはすぐに出ないな。

 

T 『ロストマン』は曲全体が好きって感じなのかな?

 

O そうだね。だからライブでも『ロストマン』やらないかなって密かに期待してたんだけど、結局やらなかったから残念だった。途中で「まだこのツアーでやってない曲をやります」と藤原さんが言って、一瞬「おっ、もしや?」てなった瞬間はあったんだけど、違った(笑)。

 

T リクエストできたらいいんだけどね。アルバムだと何が好き?

 

O 『ユグドラシル』かな。大学のころすごく聴いてたからね。僕の中では『ユグドラシル』が一番印象に残ってる。

 

T 僕は『jupiter』かな。

 

O そう、だいたい『jupiter』って言う人が多いんだよね。『jupiter』派が多い中、僕はあえての『ユグドラシル』かな。さっきスルメの話があったけど、『ユグドラシル』はとくに最初聴いたときは暗くて取っ付きにくかったけど、だんだん聴いてるうちに味が出てきたパターンだった。

 

T あとは最新アルバムの『RAY』も良かったな。ここのところバンプで気に入る曲がなかなか出てこないでいたんだけど、あのアルバムは自分の中で久々にヒットして、バンプの良さを再認識した。

 

O 最近の曲だと、僕は『グッドラック』が良いと思ったね。『グッドラック』の歌詞に文字通りぐっときまして(笑)、僕も久々に自分の中でのヒットを感じたな。やっぱりこういう歌詞を書けるのが藤原さんのすごいところなんだと改めて感心したね。

 

T やっぱり結局は歌詞の話に集約されてくるね。

 

O 『グッドラック』はとくに、「さよならした時初めてちゃんと見つめ合った」とか、言葉自体はわりとありふれた言葉選びがされてるんだけど、その中で別れる者の気持ちを的確に表現しているところがすごいと思った。

 

T バンプの歌詞の良さが改めて確認できたところで、このへんで終わりますか。

 

The End.

T スルメじゃないけど、噛めば噛むほど味が出る、そんな曲もあるよね。最初はわからなかった歌詞の意図に後から気付くとか。そういうところに惹かれて藤原教(笑)みたいな人も出てくるのかもしれないけど。

 

O たしかにそういうカリスマ性はあるね。あと、藤原さん自身がどうかは知らないけど、バンプはネガティブなイメージもあるよね。

 

T 自虐色が強いところはあるね。逆にそこが今の時代にも合っていて共感を呼ぶのかもしれないけど。

 

O ちなみにこの前ライブに言ったときに藤原さんのトークも聞いたけど、意外と面白くて、そのへんのお笑い芸人よりも笑いをとっていた気がする。

 

T へぇ、そうなんだ。

 

O ライブの終わりのほうで「ずっと続けていたいけど、大人の事情で今日中に会場を片付けて返さなくちゃならないから、9時半までには終われって言われてるんだ(笑)」と言ってみたりとか、ユーモアのあることをたくさん言ってた。

 

T まあ、彼らもプロですからね。

 

O 改めてライブのMCは大事だって思ったね。お客さんは歌を聴きたくてライブに行くわけだけど、トークが面白いとより一層楽しくなるからね。これが話がつまらないと、しゃべってないで早く歌えよと思っちゃう(笑)。

 

T 今までにそういうバンドはあったの?

 

O 別にそういうわけじゃないけどね。僕もそんなにライブ行ったことないし。

 

T 藤原さんはどういう背景を持ってる人なんだろうかね。それなりに人生経験を持ってないとあんな歌詞は書けないんじゃないかと思うんだが。

 

O 僕も藤原さんの半生までは知らないな。もしかしたらそこまで好きじゃないのかもしれない(笑)。

 

T そこけっこう気になるけどね。ただ音楽が好きで音楽やってきましたというだけじゃ、ああいう言葉は浮かんでこないと思うな。

 

O 本もけっこう読んでるのかもしれないね。北欧神話に出てくる「ユグドラシル」をアルバムのタイトルに付けるぐらいだから、神話とかにも造詣が深かったりするのかもしれない。

 

T 歌詞の種類もある程度カテゴライズできるよね。「天体」シリーズだったり、「電車」シリーズだったり。

 

O でもとくに「天体」とか「宇宙」をテーマにしたものが多いよね。『天体観測』はその筆頭だと思うけど、他にもこの前のライブでは『宇宙飛行士への手紙』とか『銀河鉄道』とかもやってた。『銀河鉄道』はタイトルだけ聞くと「宇宙」も「鉄道」も両方入ってそうだね。「鉄道」シリーズの曲は意外と少ないのかな。

 

T 「鉄道」シリーズだと、あとは『車輪の唄』ぐらいかね。バンプはアマチュアバンドとかにもコピーされてたりするよね。そういった意味でもやっぱり王道なバンドなのかな。

 

O そうなんだ、コピーもされてるんだ。

 

T よくコピーされてるバンドっていうと、バンプやアジカンが思い浮かぶかな。

 

O アジカンはいかにもロックって感じがするけど、バンプは途中から雰囲気がちょっと変わってきたよね。『車輪の唄』とかでマンドリンみたいな音を取り入れるようになったり。変わったことも試してみるようになったのかな。

 

T たしかにそうかもしれないね。

 

O 初期のころはいかにも王道なロックといった感じだったね。

 

T 最初のアルバムの『FLAME VEIN』なんかはアップテンポでイケイケな感じだね。

 

O そのころの曲の『ガラスのブルース』もライブでやってたし、王道ロック時代の曲もバンプを代表する曲の一つになってるのかもしれないな。

 

T そのころって今とはテンションが違うよね。若かったころに勢いで作った感じがする。

 

O まずネガティブ色はないよね。

 

T まあ、バンドってだんだん落ち着いてくるからね。

 

O だけど僕はネガティブ色が入ってきてからの曲のほうが好きだな。『ギルド』とか。

 

To Be Continued...