T 今大会はとくにPKにスポットが当たった大会だったと思うね。日本がそれで負けたからというのもあるけど。

O ここで今大会の3つめのキーワード「スーパーセーブ」というのも入ってくるんですね。それこそ日本が敗れたクロアチアのキーパー、リバコビッチもすごかったけど。

T クロアチアのあの圧倒的なPKの強さは何なんだろうね。

O 蹴るほうもけっこうど真ん中に蹴ったりしてたよね。あとリバコビッチだと印象的だったのは準々決勝のブラジル戦。ブラジルの猛攻を何度も防いでいて、本当にすごいと思った。

T 今大会のキーパーにおけるMVPの一人であることは間違いないよね。ゴールデングローブ賞はアルゼンチンのエミリアーノ・マルティネスが受賞したけど。

O あのもらったゴールデングローブを股間に当てるっていう最悪な…(笑)

T (笑)。あれはけっこう批判されてたよね。他にも彼はエムバペをディスりまくったりもしたし。

O 結果的に後味はすごい悪くなったけど(笑)、試合においては彼はPKも何本も止めたし、素晴らしかったね。

T やっぱりPK強い国と弱い国は如実に分かれるね。とくにスペインはPK弱いことで有名だったけど、今回もPKで終わっちゃった。あれも何だろうね。伝統的なトラウマがあるのかな。日本もこれまでに2回PKで負けたことになるから、トラウマにならないといいけど。

O 南アフリカ大会に続いて、今回で2回目ということになったのか。

T 南アフリカのときはとくにトラウマになりそうな感じではなかった。でも今回は南野や吉田麻也があんな軽い蹴り方はないと批判されたりもしてたけど、縮こまって普段の力が発揮できなかったようにも思える。外したらどうしようという負のマインドに引っ張られたかな。

O でもPKを蹴るのって相当なプレッシャーだよね。PKを外すことができるのはPKを蹴る勇気のある者だけだって言葉もあるけど、その通りだと僕は思う。日本を代表してPKを蹴っている時点ですでに賞賛に値するんじゃないかな。

T その点、クロアチアは自信満々にやってるように見えるんだよね。PKに持ち込めば勝てるぐらいの気持ちを持っているような。

O PKもそうだけど、クロアチアにはそもそも延長戦を厭わない姿勢を感じたね。延長上等!みたいな。

T クロアチアはロシア大会の実績もあって、PKに持ち込まれたら負ける可能性が高まることは見えていたから、その前に総攻撃をかけて延長戦の中で終わらせるって戦い方もあったとは思うね。

O でもクロアチアは土壇場での踏ん張りもすごいよね。ブラジル戦は延長でネイマールが決めて、これはもうブラジル勝ったなって雰囲気になったのに、そこから1点取って同点に追いつける底力はどこから来るんだろうと思った。メンタルの作り方が違うんだろうね。

T 誰しもがブラジル勝ったと思っただろうにね。それを覆した。そう考えると、番狂わせもそうだけど、今大会はこの展開からこうなるの?っていう、普段からサッカーを観ている人ほど裏切られる展開が多かったように思う。日本のドイツ・スペイン戦も前半だけ観たら厳しい展開だったわけだし。

O そりゃあゲームもしちゃうか(笑)。

T あれは作戦で、後半巻き返す森保監督の戦術だったと後付けでは言えるけど、あの段階ではどう考えても無理そうに思えた。そういう試合が日本だけじゃなくていくつもあった。アルゼンチン対オランダで、2点リードされたオランダが追いつくって展開もあったし。

O しかもオランダの2点目は後半のアディショナルタイムでの得点だったんだよね。

T 同じ南米勢での比較だと、追いつかれて意気消沈したブラジルと、追いつかれてから持ちこたえて勝利したアルゼンチン。その差が2チームの明暗を分けることになったね。

O まさに決勝戦も同じような展開だったよね。2点先制のアルゼンチンが後半追いつかれて、オランダ戦の再現を観てるようだった。

T 後半30分ぐらいまではアルゼンチンが完璧だったからね。フランスは全く良いところがなくて、前半のうちにジルーとかを交代させてたし。

O 解説の本田さんにもボロクソに言われてた(笑)。

T そもそもシュートを全然打ててなかったし、これはアルゼンチンで決まったと思ったところからの、エムバペの2発。

O 最終的には3発決めて、メッシの得点王も消されちゃったからね(笑)。

T 延長戦でメッシが決めて、これはアルゼンチンが勝ってメッシも得点王になって美しい展開だと思ったのに、そこからエムバペにPKを決められるというまさかの展開。メッシの優勝への道はどれだけ遠いんだって思った(笑)。ほんとあの決勝戦は今までのサッカー観戦歴の中で一番と思える試合だったな。

O たしかにワールドカップの決勝でこんな劇的な展開が起きえるんだというのが驚きだったね。

T やっぱり追いつかれても勝ちきるアルゼンチンのメンタルがすごかったということか。

O いやぁ、話そうと思えばいくらでも話せてしまうのだけど、時間もだいぶ経ったのでこのあたりで一旦締めますか。必要とあらば、延長戦は受けて立ちますので(笑)。

T そうですね、では4年後の大会にも期待をしまして、このあたりでカタール大会を語ーるのは終わりにしますか(笑)。

O あぁ、それ言わないでいたのに、最後に言っちゃったか(笑)。

 

The End.

O この流れで日本戦について話させてもらうと、今までの大会って、日本戦は日本戦として観るんだけど、ワールドカップ自体の楽しみとはまた別物だった気がするんだよね。でも今大会はそれが一致してて、日本の試合を観るのがワールドカップを楽しむこととイコールになったという印象が強かった。

T それは日本がドイツやスペインに勝ったから?

O 結果的にそうかもしれないね。間違いなく日本がドイツやスペインに勝ったことは大会を盛り上げる大きな要素になったと思うし。

T そもそも日本はドイツ戦で逆転勝利したけど、日本代表がワールドカップで逆転勝利したのはあれが初めてだったんでしょ。その初めての出来事がその後のスペイン戦でも再現されたから、その点ですごく価値があったと思う。

O 前回大会のベルギー戦は逆転で負けてるわけだから、今回は本当にその逆だったよね。僕はそのベルギー戦をリアルタイムで観なかったから、今回はその忘れ物を取りに行く意味でも(笑)、絶対にスペイン戦はリアルタイムで観ようと思った。

T なんか、ビジネスホテルに泊まって観てたよね?

O 仕事も忙しいタイミングだったから、会社から徒歩5分ぐらいのビジネスホテルを取って、通勤時間を無くした状態で観た。仕事終わってウィダーインゼリーだけ飲んで寝て(笑)、早朝に起きて試合観て、余韻を残しながら出社した。

T わざわざお金使ってホテルに泊まってまで観る気合いの入りように驚いたんだけど(笑)。

O 忘れ物がありますから(笑)。

T (笑)。自分の中でのね。だからぜひここでも話題に出しておかないとと思った。

O あの試合は衝撃的で、日本がスペインに勝って決勝トーナメントに進んだということで、大げさかもしれないけど、ホテルを一歩出たら世界が変わってるんじゃないかと思ったのね。でもいざ外に出てみると、そこには通学の小学生とか、いつもと同じ日常があって、世界は何も変わっていなかった(笑)。

T そうなるにはワールドカップ優勝するぐらいじゃないと厳しいかもしれないね。

O で、会社に行ってもそんなに話題になってなくて、ちょっとビックリした。

T 普段サッカー観ない人も観てるから、僕の周りでは話題にはなってたけどね。

O それでもスペイン戦はタイミングが熟してきてたから多少話題になってたけど、ドイツ戦の次の日は、ドイツに勝ったよ!と思って話題を振っても、ゲームしてたんで観てませんって言われたり、前半だけ観て勝てないと思ったんでゲームしちゃいましたって言われたりで、みんなそんなに観てない感じだった。そしてなぜかみんな日本代表が戦ってる裏でゲームをしている(笑)。

T それはたまたま話した人がそうだっただけじゃないの?感動した人はたくさんいると思うよ。

O それと、スペイン戦のときは裏の試合で一瞬コスタリカがリードして、日本とコスタリカが決勝トーナメント行くんじゃないかって時間があったんだけど…

T あったあった。あれは爆笑したね(笑)。

O それなんかは会社で話して少し盛り上がったけどね。

T あれは3戦目の2試合同時キックオフならではの面白い展開だったね。

O 圧勝する国がない限りは、3戦目までグループ内でどの国が残ってどの国が落ちるかわからない状況になってるから、3戦目は緊張感があってほんと面白いよね。

T それこそロシア大会のときの日本はイエローカードの差でグループリーグを突破することになったし、そういう薄氷を踏むような展開になることだってあるからね。

O 今回のポーランドも同じような状況だったんだよね。3戦目を戦っているときに、フェアプレーポイントで決勝トーナメントに進めるかどうかが決まるような状況になっていた。

T 最終的には裏の試合の結果から得失点差での突破になったんだけど、そういう時間帯はあったね。奇しくも前回の日本の3戦目の相手だったポーランドというところがまた面白い。ある意味、あのときのノウハウもあるわけで。

O ポーランドは実は今大会で個人的に注目して観ていたチームだったんだよね。決勝トーナメントに進んだ国以外では一番印象的だった。

T 意外だね。そのこころは?

O 主にはキーパーのシュチェスニーが良いと思ったからなんだよね。僕はサッカー詳しくないから今大会まで彼のことを知らなかったけど、サウジアラビア戦で、PKを止めてさらにそのこぼれ球を打たれた2発目も連続して止めるシーンがあって、そのスーパーセーブに感動した。「おお、キミやるね!」って(笑)。

T シュチェスニーはユベントスの世界的なキーパーだからね。

O 知ってる人はもともとすごさをわかってたんだろうけどね。彼はその後、アルゼンチン戦でメッシのPKも止めていたよね。あのときはPKを与えてしまったのがシュチェスニー当人だったんだけど、それをちゃんと自分で火消ししたところがかっこ良かった。

T メッシは散々PKを決めてきていたから、それを止めたシュチェスニーはすごいよね。あれが決まっていたらメッシが得点王だったね。

O そうか。だから結果的にはシュチェスニーがメッシの得点王を阻んだことになるのか。

 

To Be Continued...

T ではさっきの番狂わせの話につなげていくと、今大会は初めての冬季開催ということで、普段であればクラブチームが終わってから1か月近く、代表チームで合宿をしたりする準備期間があって、そこでチームとしての完成度を高められるんだけど、それができないのと、クラブのリーグ戦を中断しているから日程的にもキツキツでやらなきゃならなくて、今までは中4日で試合をしていたのが中3日になっていたんだよね。

O そうだったね、日程のタイトさについてもずっと言われていたね。

T ただ今回は長距離移動がない分、長距離移動がある中4日と負担的には変わらないんじゃないかとも言われたけど、やっぱり試合間隔が短かったりしたのが番狂わせが起きやすい要因になったんじゃないかとは言われているね。

O 番狂わせでまず最初に起きたのがサウジアラビアがアルゼンチンに勝った一戦だったね。それによってサウジアラビアが祝日になるという、インパクト満点の出来事が大会序盤にぶち込まれてきた(笑)のが印象的だった。

T それを言うと、アルゼンチンも優勝した後で祝日になったらしいからね。

O みんな祝日にしたがりますね(笑)。

T 日本も優勝したら祝日になるかもしれないね。

O でもサウジアラビアに至っては、勝ってすぐ翌日を祝日にできるという即決力に怖さも感じるんだけど…。

T まあそれは政治体制の違いでしょうね。やっぱりサッカーは政治とつながってるものなんだよ。

O 他にも今大会ではたくさんの番狂わせが起きたけど、やっぱり一番の番狂わせはドイツとスペインに勝った日本でしょうかね。

T その前段から話すと、開幕戦でカタールがエクアドルに負けて、翌日にはイランがイングランドに完敗して、アジア開催の大会なのでアジア勢が有利かと思いきや、やっぱりアジア勢は厳しいのかと思われたところの3日目にサウジアラビアがアルゼンチンに勝ったから、その良い流れを日本が引き継いでドイツに勝てたのかなと思う。

O たしかに流れが来ていたかもしれないね。

T 終わってみれば決勝トーナメントにアジアの国が3か国残ったし、アジア勢の勝利数も過去最多だったらしいけどね。

O 同じアラブ圏という意味で、モロッコがアフリカ勢で初めてベスト4に進んだのも特徴的だったね。

T だから結果的にはアジア圏の国に地の利があったということになるのかな。

O モロッコの試合観てると、現地の人たちは圧倒的にモロッコを応援してたよね。敵がボールを持つとブーイングしたりして。スタジアム全体の雰囲気がモロッコ側に付いてる感じだった。これじゃあ相手チームもやりにくいだろうなと思って観てたんだけど。

T サポーターが圧倒的に多かったのがモロッコとアルゼンチンなんだよね。この2チームが出てくるとスタジアムが一色に染まっちゃう感じだった。だからこそアルゼンチンとモロッコの対戦は観てみたかったけどね。どっちのサポーターのほうが強いのかを(笑)。

O そうだね、モロッコが決勝まで進んだら面白かったかもしれないね。

T でもモロッコはまだ距離的にも近いけど、遠方のアルゼンチンのサポーターが多かったのはそれだけの情熱を感じるね。

O メッシ効果もあったのかな。大会始まる前から、メッシが今大会で代表を退くような話が出ていたから。

T アルゼンチンサポーターが熱くて世界中どこにでも行くのは知ってたけど、今大会はとくに多い気がしたな。だからその後押しを受けて優勝できたのかなという気もする。

O でも最初いきなりサウジアラビアに負けちゃったから、アルゼンチンサポーターは相当ショックだっただろうね。

T それまで36戦無敗だったし、終わった今言うのもかっこ悪いけど、僕は今大会の優勝国はアルゼンチンと予想してたんだよね。それが序盤でいきなりつまずいちゃったから、あれ?と思った。結局あの試合で活躍したのが半自動オフサイドテクノロジーで、それでアルゼンチンはオフサイドに引っかかりまくって、点が取れなかった。

O あの試合は観てないんだけど、今大会はとくにテクノロジーの進歩を感じた大会だったね。これも今大会を振り返る上での一つのキーワードになると思う。日本戦でも話題になった三笘の折り返しとか。


T 「三笘の1ミリ」ね。


O あれは今までだったら認められてなかったかもしれないしね。あのプレイはVARをもってしても結論を出すのにかなり時間を要していたから、テクノロジーがない時代には到底認めるのが難しかったと思う。リプレイ映像でも肉眼ではラインを割っているように見えるわけだし。

T ゴールラインを出たかどうかというのは機械が判断してくれてすぐに答えが出るはずなのに、それでも時間がかかったというのは、本当にギリギリだったんだと思う。競馬で言うと写真判定でも時間かかるときみたいな(笑)。

O ハナも同着だなみたいなやつね(笑)。それにその判定が勝敗を分けたところにもまた面白さがあるよね。

T そうだね。ボールにICチップが入ってたりしたから判断できたんだろうけど。

O 前回の対談でT君はVARが入ると議論をする面白さが無くなるようなことを言っていたけど、「三笘の1ミリ」に関してはその判定結果が話題のタネになっていて、逆説的だと思ったんだよね。テクノロジーが入ったことで作り出される話題もあるんだなと。


T たしかにそういう面はあるね。あれが出ていたか出ていなかったかという議論はできないけど。

O もしテクノロジーの発達が無い頃にあの判定がされていたら、誤審だと言われていたかもしれないよね。

T そう考えると4年後にはどんな新しいテクノロジーが入ってくるのかも楽しみになってくるね。

 

To Be Continued...