翌日、私は約束した午後3時を少し前に、狩野省吾弁護士の事務所へ到着する。ビルの駐車スペースを見ると、ピカピカに艶出しされた真っ黒い高級車が停まっていたので、もしかしたらクライアントは既に到着しているのかも知れないと考えていた。
「はい、どちら様でしょうか? 」
「いつもお世話になっております。梅木と申しますが… 」
「お待ちしておりました。どうぞ、お入り下さい」
最近、先生の事務所へ伺う機会が多くなってきたせいか、少しだけ慣れてきていて、人見知りの私でも気持ちに余裕が出てくる。すぐに扉は開き、いつもの女性が顔を覗かせた。
「こんにちは。どうぞ」
「はい。失礼します… 」
初めて彼女の微笑を見たような気がするが、考えてみれば、弁護士事務所にいきなり「探偵」なんて、どこの誰だか分からないのが来訪すれば、誰だって構えるかも知れない。そういう意味においては少しだけ受け入れてくれたのかなと、私の表情もつられて明るくなる。
「失礼します…先生、梅木さんいらっしゃいました」
女性が相談室の扉をノックしながら言う。思った通り、既に狩野弁護士とクライアントは中で話をしていた様で「どうぞ」と、狩野先生の声がした。
「失礼しますぅ… 」
彼女がドアを開け、半身かわした先には狩野弁護士と、向かい側に私と同じくらいの年齢だろうか、濃紺のスーツ姿で座る男性の姿があった。私はすぐに頭を下げ「お世話になります」と、小さな声で言った。すると男性はすぐにその場で立ち上がり頭を下げる。
「河原です。宜しくお願いします… 」
「いえ、こちらこそ。今日は宜しくお願いします」
頭こそ下げた河原氏だが、表情は硬い。初めて会った人物なのだが、悪く言えば「疑い」の眼差しを向けていると言っても過言ではないくらいの厳しい視線を送ってくる。
「梅ちゃん、いつも来て貰って悪いね。こちらはドラッグストアの… 」
「あの、先生! 」
河原氏はいきなり狩野省吾弁護士の言葉に割って入る。不意を突かれたのか先生も珍しくキョトンとした表情を見せていた。
「あの…梅木さん…と、仰いましたか」
「はい、私は梅木ですが… 」
「大変失礼かとは思うのですが…免許証を見せて戴いても宜しいでしょうか? 」
「免許証…ですか?…あ、はい。構いませんけど… 」
まさか初めて会ったばかりのクライアントに免許証を見せてくれなんて、想定すらしていなかったので戸惑ってしまう。慌てて鞄の中を探りながら財布を探した。先生の方を見ると無言だったが、申し訳ないと言わんばかりの表情が見えた。
それなりに自分達の存在が、初見の人達にとって未知に感じてしまうのは仕方のない事なので、こんな事で怒ったりはしないのだが、考えようによってはどんな理由があるにせよ、初対面の人間に「免許証見せろ」は無いだろう。
何も疚しい事は無いので、別段構わなかったが、黙って見せるのも癪に触ってしまい、思わず言ってしまう。
「構いませんが…一体何をお知りになりたいんですか? 」
(続く)
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