「何でYくんはそう言い切れるんだ? 」
張り込みを始めたばかりだったが、酒を買い込んでたった今、柏原幸広は部屋に引き籠ったばかりだ。きっと暫くは出てこないだろう。そう踏んだので、どうでもいい会話に熱中する事にした。
「だって音源が… 」
「何だよ音源って… 」
「ドアの横に…あの…斜めに開く風呂場の窓があるっす」
「うん。そんな感じの窓ってあるなぁ… 」
「そこが開いていて、そこから漏れ聞こえてたっすから間違い無いっすよ! 」
「あぁ…そう言うこと…って言うかそれ、音源って言うか? 」
「そこじゃないっす! 」
それならば確かに柏原幸広の住む202号室から漏れ聞こえた声である事は間違いないだろう。しかし、だからといって何故それが存在する女性の「生」の声だと言える?
まだまだ疑問はさほど解消されないが、あまりにくだらなさ過ぎて後が続かない。
「そりゃそうと…結局部屋はどっちなんだ?手前真ん中の窓?それとも… 」
「奥の真ん中っす。こっちからはなんも見えないっすよ」
「そうか… 」
窓が見えていれば人影からも色んな推測が出来たのだが、Yくんからそう聞かされ、少々ガッカリしてしまう。まぁ、仕方ない。こちらから見えないという事は向こうからも同じ事が言えるのだから。
「今日は長い1日になりそうだなぁ… 」
「っすねぇ…… 」
諦めにも似た溜息をつきながら…私とYくんは彼の住むアパートの出入り口をじっと眺めていた。
【08:50】
「んっ!? 」
「おっ!? 」
私もYくんも同時に反応する。男性用の白いジャージに身を包んだ女性が、気怠そうに出てきたからだ。金髪の髪は根元から2,3㎝程が真っ黒に伸びていて、偏見なのかも知れないが、そんな井出達が柏原幸広とピタリとマッチしたのを感じたからだった。
じっと息を殺して見ている彼女は出入り口で誰かを待っている。私とYくんはハンディカムを回しながら、そんな彼女の一挙手一投足を注視している。
少し待っていると、大きなバスケットシューズの踵に指を突っ込みながら無理矢理履いている柏原幸広が姿を現した。さっきコンビニで酒を買い込んでからそう時間は経ってはいない。
「もしかしたら、さっきの買い物、ありゃ、夕方の買い出しだったのかな? 」
そんなどうでもいい事が口を突いて出る。
「どうっすかねぇ… 」
Yくんも「どうでもいいよ」と、言わんばかりに答えた。
狩野弁護士の資料通りなら、彼は車を所有していない。代わりに、私達が停まっている車のあるパーキングの中からは、先程アパート専用駐車場で確認した白い軽自動車が見えているので、万一それに乗って出て行ったとしても充分に尾行は可能な筈。
「おい、Yくん。私はとりあえずすぐに出れる様に駐車場代清算してくるぞ」
「っす! 」
運転席のドアをそっと開け、彼らに悟られぬ様、そっと車を降りた。精算機まで辿り着いてしまえば、後は堂々と清算をする。もっとも、彼らは私達の様子など気にする素振りもありはしなかったのだが…
(続く)
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