【08時55分】
じっと様子を窺っていたのだが、私達の予想に反して2人はヘラヘラと笑いながら徒歩で移動を始める。
「マジか!面倒くせぇなぁ… 」
「っすねぇ… 」
必要な言葉を交わさなくとも、阿吽の呼吸でYくんは私にハンディカムを放り投げ、助手席のドアを開けた。
「行ってくるっすから、後ろ頼むっすよ! 」
「はいはい…わかったよ… 」
Yくんが徒歩で距離を取り、尾行を始める。私は清算したパーキングのフラップ板から車は出したものの、まだ駐車場からは動かないでじっと様子を見ている。
勿論、彼らが飲酒しているからの予想だったが、いつタクシーなんかに乗り換えてもすぐに対応出来るだけの準備は怠らない。彼らをYくんが尾行し、Yくんを私が車で尾行する。
出てこないと思いきや、すぐに外出…どうにも彼らと相性の良くないこの調査は、なかなかこちらが考えるイメージ通りにはいなかいと感じていた。
余程調子がいいのか、2人はじゃれ合いながら歩く。柏原幸広は大きな腕を女性の肩に掛け、後ろから見るとまるで覆い被さっている様にも見えた。
さっき買い物を済ませたばかりだろうから、どこへ行くのか全く予想も出来ない。彼らは先程コンビニから歩いて帰ってきた道を、再びなぞる様にそちらの方向へと歩いていく姿を見ながら、まさか酔った状態で病院は無いだろうと推測していた。
Yくん、そしてその先に歩く2人。更には国道を激しく行き交う車の数々が見えるのだが、忙しなく走る車の様子とは全く違っていて、まるで2人だけが別世界にいるように思える。そんな様子に、ほんの少しだけ不思議な気がしていた。
昭和世代の私には、会社から給料だけを貰い続けながら女性と2人朝から酒を煽る感覚がどうにも分からない。もっとも、それは今見ている光景からの推測に過ぎない訳だから、断定も出来ないし、実際どの様な内情があって彼が今の行動なのかも分からないのだから勝手な事は口に出せないのだが。
そして、肩を組んだ2人は国道へ出るとすぐ右に曲がる。それを見届けたYくんは距離を詰める為にその場所へ走る。私もそろそろかと思い、静かにパーキングから車を出して走らせる事にした。
【08時58分】
「なんだかなぁ… 」
Yくんから電話が無い所を見ると、2人が移動手段を買える可能性は薄いという事だろう。そんな推測を基に国道へ頭を出した私は右側を見る。その瞬間に2人が国道沿いにあるパチンコ店の方へ曲がる様子を見る事が出来た。ちょうどYくんも振り返らず、私に連絡しようと携帯電話を操作している途中だ。
「見たっすか? 」
「あぁ、見たよ。朝から店前に並ぶ感じ? 」
「多分そうっすねぇ… 」
「分かった。じゃあ、悪いがYくんも並んでくれ」
「っす… 」
開店の1時間前から並ぶくらいだから余程好きなのだろう。パチンコをしない私には、その価値が全く理解出来ないが、これも彼の行動の一部なのだからと割り切り、国道へ右折で出る。そしてすぐにウインカーを点滅させて私もパチンコ店に入った。
「あちゃ~! 」
少し早まったと後悔した。よくよく考えてみれば、まだ開店1時間前なのだから、僅かな人間が店の前に並んでいるだけで、店の前に広がる巨大な駐車場は全くではないにせよ、ガランとしていて非常に目立つ。私はそのまま2人の並んでいる様子を見届けた後、そのまま駐車場を素通りし、再び違う出入り口から店の外へ出た。
(続く)
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