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(貧乏探偵を脱出する為・・・皆様の温かい気持ちで当ブログは成り立っています
こちらを見て頂ければお話の見方もきっと変わるはず!
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Kさんは・・・・報告書の1ページ1ページを、食い入る様に真剣な眼差しで見る。
「あの・・・・梅木さん?」
「はい?なんでしょう・・。」
「この報告書・・・・2日間になっているのですが・・・・料金は・・・」
「いえ・・・これは私達が勝手にやった事ですから・・・」
「そんな・・・・申し訳ないわ・・。」
「気にしないで下さい。」
私はKさんの気の毒そうな言葉を遮る様に笑顔を見せた・・・。
「武士は喰わねど高楊枝」・・・・ちょっと違うか・・・
Kさんは何度も何度も「すみません・・・」を連発しながら報告書に目をやった。
報告書の見方ひとつ見ても・・・その人の人となりを伺う事は難しい事では無い。
報告書に目を通しながら・・・注意深く周囲に気を遣うタイプの人は、その時の調査をイメージ出来るらしく・・・
「うわ~・・・大変だったでしょう」とか
「本当に探偵さんってキツイ仕事なんですね・・・」等とその時々の状況が浮かんでくるらしいのである。
又、それよりも自身の思いや主張が激しいタイプの人は・・・
「あ!これ女ですか?顔のアップは?」
「この女の職業は?実家は?」等と話が先に飛びすぎる傾向にある様な気がする。
勿論、どちらのタイプも同じご依頼者でお客様である事は変わり無い訳で・・・
どちらが「良い」「悪い」という事を言いたい訳では無い。
私が言いたいのは、対象者の人となりもさる事ながら、ご依頼者様の人となりも熟知しないと・・・
「本当の意味での解決」は難しいという事である。
真に「売り上げ至上主義」であれば、ご依頼者様の言う事だけを良く聞き・・・・時折不安にさせて調査契約を取ってしまえば良いという事になるし、実際に多くの「悪徳?業者」はそうしている。
しかし・・・・ご依頼者様のこれからの人生を本当に願うのであれば・・・
「妥協」出来ない部分が出てくる事も現実である。
中にはKさんの様に、ナケナシの大枚をはたいて御依頼に訪れる人も少なくは無いのである。
そんな方達の真摯な思いを食い物にする事を私は望まない。
だからと言って「感謝」して欲しいとも思っていない。
所詮私達は一企業であり、その調査に応じて「報酬」を手に入れているからである。
私は・・・自分やスタッフの事を「カラス」だと思っている。
カラスは・・・・決して見栄えはヨロシク無いが・・・
「馬鹿」では無いし・・・
その生き方にプライドも持っている・・・ような気がする・・・
結論・・・自分達の仕事に自信とプライドを持ってあたれば・・・必ずいつか道は開けるだろうと・・・
だから私達は「ご依頼者様」に妥協はしない。
時として・・・たとえご依頼者様であろうと、「間違っている」と思えば自分達の意見もぶつけてみるのである。
確かに・・・その時はご依頼者様に「ショック」を与えた事もあるが、
不思議と「苦情」や「苦言」を頂いた事は一度も無い。
だから・・・私達の会社にはご依頼者様との対話で「ストレス」を感じた事はほとんど無い。
そりゃそうだ・・・言いたい放題言ってんだから・・・
だから未だに「貧乏」であるし・・・・・
スタッフの皆さんが私に「冷たい」のである・・・・。
そんなどうでも良い事を・・・・ぼんやり考えながら私はKさんを見ていた・・・。
「梅木さん」
「はい?」
「これだけのお仕事をして頂いて・・・・本当にすみませんでした。」
「あ~・・・いえいえ・・・気にしないで下さいよ。それよりも・・・どうなさいます・・・今後・・・」
「・・・・・・・・・・・」
正直驚いた・・・・
「別れます」の一言が出てこないのである。
実際に誰がどう見ても・・・これは明らかに「離婚」に結びつくケースである。
私も普段、滅多な事では「離婚」を勧めたりしないが・・・今回はさすがに躊躇する理由が無い。
Kさんと・・・対象者の生い立ちが・・・二人をここまでの状態にしてでも離婚する気にさせないのだろうか・・・。
事実、対象者からも・・・
あれだけの「ご乱交」であるにも関わらず
Kさんに「離婚」を突きつけた事は一度も無いらしい。
対象者の中では・・・他のどんな女性も
自分が飽きるか・・・逆に飽きられるかまでの「遊び」なのである。
私は再び聞いてみる。
「ご離婚なさるおつもりはないのですか・・・」
「・・・・・・・・・わかりません」
「・・・・・・・・・・」
「梅木さん!」
「はい・・・・何でしょう・・・」
「随分とずうずうしいお願いで申し訳無いのですが・・・」
「何でしょう・・・」
「一度主人と話をしてみたいのです・・・主人が何を考えているのか知りたいのです。」
「お気持ちは察しますが・・・」
「そこで・・・」
「はい・・・」
「報酬は時間さえ頂ければお支払いします。一度私と一緒に主人の所に付いて来ては戴けないでしょうか・・・」
「・・・・・・・・・・・」
正直・・・・あの大男と対峙した時の記憶が脳裏を過ぎった・・・。
いきなり殴りかかってくる様な「今時珍しい人」である・・本能のまま生きてるっていうか・・・
頭が痛かったが・・・・Kさんが行くという以上、危なっかしくてとても一人ではやれない。
それに・・・
Kさんに冷静に考えて貰う為には、どうしても避けられない「道」の様な気がしたのである。
「仕方無いですね・・・・分かりました。」
「すみません・・・宜しくお願いします・・・。」
「ただ・・・・」
「はい・・・・」
「私達は調査以外の目的でご依頼者様から報酬を戴く事は出来ません。ですから、私達の都合の良い時間に・・・という事になりますが、仕事が終わったらKさんをお迎えに来てお連れする格好になりますが・・・。」
Kさんは良く分かっていなかった・・・
「要は報酬なんていりません。ですから私達の都合良い時間に合わせて戴きますって事ですよ。」
「そんな・・・・」
「気にしないで下さい・・・それが決まりなのですから・・・・」
私は笑った・・・・
Kさんは下を俯いた・・・。
私は笑っていたが・・・・・
実は
「あの大男どうしよう・・・暴れたら・・・・」
という気持ちと・・・・・
「うちの妻(R)とY君が暴れたらどうしよう・・・こんな安請け合いして・・・」
とふたつの不安が入り混じっていた・・・・。
(続く)