抗菌薬④セフェム系:第3世代セフェム(注射) | 消化器内科ゴロ寝お勉強日記

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病棟スタッフの皆さんに、日常業務の役に立つ情報を提供しようと思います。ゴロ寝しながらでもサクサク読めて、必要な知識だけ頭に入るような内容にしようと思いますので、是非暇なときに一読して下さいね!

なんと前回抗菌薬のことを書いてから気がつけば1ヶ月。

もう再開せねば!

ということで本日は抗菌薬について。

 

順番的に次は第2世代セフェム内服でしたが

需要低めなので後日に回しました。

 

さて、第3世代セフェムです。

なんやかんや、一番お世話になる頻度が高い抗菌薬が

第3世代セフェムではないでしょうか。

セフメタゾンもかなりいい勝負だとは思いますが。

 

以前まとめ的なところで書きましたが

第3世代セフェムのスペクトラムはGNRのみ!

と覚えていただいて構いません。

例外がありますが、末尾に付け加えておきます。

 

覚える必要があるお薬は3つだけ!

 

一般名:セフトリアキソン(CTRX)

商品名:ロセフィン、セフトリアキソン

特徴

・半減期が長く1日2回投与で十分

・腎排せつの割合が低く、腎障害がある患者に使いやすい

 

一般名:セフォペラゾン/スルバクタム(CPZ/SBT)

商品名:スルペラゾン、ワイスタール

特徴

・胆汁中に高濃度で排泄⇒胆道感染症の治療に向いている

・緑膿菌にも効く

 

一般名:セフタジジム(CAZ)

商品名:モダシン

特徴

商品名:モダシン

・緑膿菌に効く(第3世代の中で抗緑膿菌作用が最も強い)

 

GNRのみを叩けばそれでよいという症例が

第3世代セフェムが登場するに最もふさわしいです。

そういうときに

腎障害がある⇒CTRXがいいかなぁ

胆道感染症⇒CPZ/SBTがいいかなぁ

緑膿菌をカバー必要⇒CAZがいいかなぁ(あえてCAZを避けてCPZ/SBTに行く理由がない)

という発想で抗菌薬をチョイスしていただくので結構です。

 

最頻用抗菌薬の第3世代ですが意外とシンプルじゃないですか?

 

以下、冒頭で述べた例外について書きますので

余力のある方だけで結構です。

 

例外①

実は嫌気性菌にも効くが「ちゃんと効きます」っていう程期待するな

第3世代セフェムは実はモダシン以外は嫌気性菌に効きます。

でも嫌気性菌に対する作用では

ABPC/SBTやCMZにはかないません。

ですからガッツリ嫌気性菌感染を疑っているとき、

特にBacteroidesなどの下部消化管の嫌気性菌

の関与を疑っているときは避けましょう。

「嫌気カバーかぁ、じゃあ第3世代セフェムにしようぜ~、

だって効くもんね~」

と考えるのは間違いです。

嫌気性菌をカバーしないといけないということが

はっきりしている場合には

ABPC/SBTやCMZを選択して下さい。

 

例外②

GPCは苦手なはずだが、実はCTRXはPRSPに効く

セフェムの概説で述べた通り、セフェムは進化に伴い

GPCへのスペクトラムを弱めていく

という風に覚えていただきました。

でもCTRXはPRSPにも効きます。

PRSPって何ぞ??

Penicilin Resistant Streptococcus Pneumoniae

すなわちペニシリン耐性肺炎球菌です。

肺炎球菌は消化器内科では敵に回すことは少ないので

なおのこと、消化器病棟の皆さんには不要な知識かもしれませんが

市中肺炎に対してエンピリックに抗菌薬を投与するとき、

GPCもGNRも想定しないといけないけど

耐性のことも考えるとGNRに対しては第3世代セフェムにしときたいなぁ

と考えるシチュエーションが起こります。

そうなったときGPCの肺炎球菌にも効いてくれて

しかも耐性株のPRSPにも効く、ってことは

ありがたいことなんですね。

ですから市中肺炎の入院が来たとき最初に使う抗菌薬として

CTRXはとても使い勝手の良い優秀な薬です。