なんと前回抗菌薬のことを書いてから気がつけば1ヶ月。
もう再開せねば!
ということで本日は抗菌薬について。
順番的に次は第2世代セフェム内服でしたが
需要低めなので後日に回しました。
さて、第3世代セフェムです。
なんやかんや、一番お世話になる頻度が高い抗菌薬が
第3世代セフェムではないでしょうか。
セフメタゾンもかなりいい勝負だとは思いますが。
以前まとめ的なところで書きましたが
第3世代セフェムのスペクトラムはGNRのみ!
と覚えていただいて構いません。
例外がありますが、末尾に付け加えておきます。
覚える必要があるお薬は3つだけ!
一般名:セフトリアキソン(CTRX)
商品名:ロセフィン、セフトリアキソン
特徴
・半減期が長く1日2回投与で十分
・腎排せつの割合が低く、腎障害がある患者に使いやすい
一般名:セフォペラゾン/スルバクタム(CPZ/SBT)
商品名:スルペラゾン、ワイスタール
特徴
・胆汁中に高濃度で排泄⇒胆道感染症の治療に向いている
・緑膿菌にも効く
一般名:セフタジジム(CAZ)
商品名:モダシン
特徴
商品名:モダシン
・緑膿菌に効く(第3世代の中で抗緑膿菌作用が最も強い)
GNRのみを叩けばそれでよいという症例が
第3世代セフェムが登場するに最もふさわしいです。
そういうときに
腎障害がある⇒CTRXがいいかなぁ
胆道感染症⇒CPZ/SBTがいいかなぁ
緑膿菌をカバー必要⇒CAZがいいかなぁ(あえてCAZを避けてCPZ/SBTに行く理由がない)
という発想で抗菌薬をチョイスしていただくので結構です。
最頻用抗菌薬の第3世代ですが意外とシンプルじゃないですか?
以下、冒頭で述べた例外について書きますので
余力のある方だけで結構です。
例外①
実は嫌気性菌にも効くが「ちゃんと効きます」っていう程期待するな
第3世代セフェムは実はモダシン以外は嫌気性菌に効きます。
でも嫌気性菌に対する作用では
ABPC/SBTやCMZにはかないません。
ですからガッツリ嫌気性菌感染を疑っているとき、
特にBacteroidesなどの下部消化管の嫌気性菌
の関与を疑っているときは避けましょう。
「嫌気カバーかぁ、じゃあ第3世代セフェムにしようぜ~、
だって効くもんね~」
と考えるのは間違いです。
嫌気性菌をカバーしないといけないということが
はっきりしている場合には
ABPC/SBTやCMZを選択して下さい。
例外②
GPCは苦手なはずだが、実はCTRXはPRSPに効く
セフェムの概説で述べた通り、セフェムは進化に伴い
GPCへのスペクトラムを弱めていく
という風に覚えていただきました。
でもCTRXはPRSPにも効きます。
PRSPって何ぞ??
Penicilin Resistant Streptococcus Pneumoniae
すなわちペニシリン耐性肺炎球菌です。
肺炎球菌は消化器内科では敵に回すことは少ないので
なおのこと、消化器病棟の皆さんには不要な知識かもしれませんが
市中肺炎に対してエンピリックに抗菌薬を投与するとき、
GPCもGNRも想定しないといけないけど
耐性のことも考えるとGNRに対しては第3世代セフェムにしときたいなぁ
と考えるシチュエーションが起こります。
そうなったときGPCの肺炎球菌にも効いてくれて
しかも耐性株のPRSPにも効く、ってことは
ありがたいことなんですね。
ですから市中肺炎の入院が来たとき最初に使う抗菌薬として
CTRXはとても使い勝手の良い優秀な薬です。