「書類送検」を刑罰のように報道するマスコミの悪意 | 母親ひとり親の医療の学校の受験・修学手助けします

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親知らず抜歯のため全身麻酔、17歳が死亡 歯科医師2人を書類送検
親知らずを抜く手術のための全身麻酔で適切な処置を怠り、特別支援学校の男子生徒(当時17)を死亡させたとして
大阪府警は26日、いずれも歯科医師で堺市重度障害者歯科診療所(堺市堺区)の男性所長(55)と女性歯科麻酔科医(34)を業務上過失致死容疑で書類送検し、発表した。
府警は大阪地検に起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。(2024/8/26)

この報道を見て多くの人は歯科医師と麻酔医が罰せられるか、あるいは裁判で訴えられることが決定したような印象をもつと思います。
「厳重処分」の意見がつくとたいていは裁判になるのですが
書類送検だけではまだそうなるかは決定していません。

書類送検とは、被疑者(犯罪の疑いのある人)で身体拘束されていない者の事件記録や捜査資料を検察官に送る手続のことをいいます。
書類送検時点では前科は付きません。
前科がつくのは書類送検後に被疑者が検察官に起訴されその後の刑事裁判で有罪判決が確定した場合です。

刑事事件ではほとんどの事件で警察の捜査が先行して証拠物が収集し参考人・被疑者の取り調べによって供述調書が作成されます。
検察官(検事)は警察から送られた証拠物と供述調書をチェックし
有罪を証明するために足りない証拠物の捜査を警察に求めると共に
自らも取り調べを実施して供述調書を作成します。
こうした警察・検察の捜査によって集められた証拠資料に基づき
検察官が被疑者を刑事裁判にかけるか否かを決します。(起訴便宜主義)
欧米では「予備審問・予審」といって重罪の場合起訴するかどうかを裁判所が決める手続きがある国があります。

被疑者が逮捕されていない場合
刑事事件の捜査では警察から検察に調書を送ることが必要になります。
これが「書類送検(書類を検察に送る)」です。

裁判制度の上では
取り調べた警察官が自分が作った調書をもとにして証言する場合でも
その警察官は「証人」扱いとなり
訴えることができるのは「検察官」だけです。

つまり
「書類送検」とは身体拘束(つまり逮捕)が必要でないとされた被疑者に対する司法手続きということになります。
刑事告発・告訴された案件はすべて検察に「送付」する義務があります。
書類送検は単なる司法手続きであって刑罰でも何でもないことがわかってもらえたでしょうか。

ここでの「送付」は「刑事訴訟法242条」での法律用語です。
それに対して
書類「送検」は法律上の呼び名ではなく
言ってみれば「職場?」での通称ということになります。

話が長くなりました。
肝心な話です。
単に検察に送る手続きことを
警察が高い検挙率を上げているという印象を与えたいことや
被害者・告発者の処罰感情を報道機関が忖度して
勝手に刑罰の一部であるかのようないい方をしたために収まりがつかない状況になってしまいました。

以前
愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)を求めた署名運動を巡る報道では
愛知県警は精神科医の香山リカ氏やジャーナリストの津田大介氏ら計4人を名古屋地検に書類「送付」したそうです。

ここではいつもの「書類送検」ではなくわざわざ「書類送付」という言い方をしました。
ここでつかい分けたのは
愛知県の大村知事のリコール派の犯罪行為をかばっているように見られたくないか
香山さんや津田さんのような有名人を敵に回したくないという
気の回し方からきているのでしょうか?

「書類送検」と「書類送付」をつかい分ける身勝手すぎる日本の報道機関

今回の件は死亡事故という点では重大なことですが
身柄拘束なしの在宅捜査であったということでは悪質な犯罪とはみなしていなかったわけです。

「種類送検された。きっと犯罪を犯した(かかわった)かもしれない・・・」
やられていることを知らせない知らないということがどれだけ人の「疑心暗鬼」を生むのか。
それを操っている人たちがいることは何とも危険なことではないでしょうか。

そんなわけですから
警察が検察に事件を送致するときには「処分に関する意見」を付け加えます。
「送致書」の文例集には「処分に関する意見」として
(役所の定型の書類にはすべて「例文集」があります)
「厳重な処分を願いたい」のほかに「起訴相当と思料する」「軽く処罰願いたい」などがあります。
起訴猶予が相当の場合は「寛大な処分を願いたい」と書くそうです。
嫌疑なしが相当の場合の例文はないようです。