続、「司法面接」の手法で 子どもの体験を聴取する方法を考える | 母親ひとり親の医療の学校の受験・修学手助けします

母親ひとり親の医療の学校の受験・修学手助けします

学資・生活費・修学の相談から受験トレーニングまで。オトナ、特に母親ひとり親が「自立できる資格がとれる学校に入る」手助けをします。合格報酬・延べ払い制(交通費・雑費・入試受験料は自己負担)問い合わせは tkano0222@gmail.com、Line公式ID@026nzpas

前回の話に引き続き
子どもの体験を客観的に聞くための方法を取り上げます。
わたしは高校教員をやっていましたからハイティーンが中心ですが
色々な場面、条件で子どもの話を聞くことは当然仕事の基本でした。
 
話してもらうことがむずかしい内容の話を聞くためにはその子との信頼関係が基本であることは言うまでもありません。
しかし
信頼関係をつくるに当たって
どうしてもその子に肩入れしやすくなり第三者的な立場で聞き取ることはむずかしくなります。
 
そのため
直接第三者的な立場から確認が必要なことであっても聞き取りがむずかし状況になります。
これが今までの学校、教育現場の状況でした。
 
つまり
オープンな形での聞き取りの技術がないか
「特別な技術」として聞き取り法があったわけです。
 
それに対して
『知的障害・発達障害のある子どもの面接ハンドブック』

本書では
「プロトコル」として
「手順・手続き」として聞き取りの方法が示されています。
本書の「監訳者のことば」からそのあらましを説明していきます。
 
欧米では面接で誘導や暗示のかからない、正確な情報を聴取するために認知心理学や発達心理学を応用する形で司法面接が開発されてきました。
これらの面接法は「導入―本題の自由報告(子どもによる自発的な報告)―質問―クロージング」という構造をもっていて
できるだけオープン質問(「話してください」など。被面接者の回答に制約をつけない質問)で
自由報告を得ることを重視しています。
 
本書で示される面接法の基盤になっているのは、心理学者であるラム教授らが米国立小児健康人間発達研究所で作成したNICHDプロトコルです。
他の司法面接と同様、構造化され、オープン質問により自由報告を得ることを重視し
より良く習得できるように、面接者の発話が具体的に示されているのが特徴的です。
 
面接の手続きは、以下の通りです。

(1)面接者は挨拶し
(2)グラウンドルール(面接での約束事:「本当のことを話してください」「質問がわからなかったら分からないと言ってください」「質問の答えを知らなかったら知らないと言ってください」等)を告げる。
(3)子どもに趣味等について話してもらい、ラポール(交流)を形成した後
(4)体験や出来事を思い出す練習(エピソード記憶の訓練)を行う。
例えば「朝起きてからここに来るまでにあったことを最初から最後まで、全部話してください」と誘いかけ、子どもの話を「それから」「それから」と聞いていく。

このようにして、子どもに話す準備ができたならば

(5)面接の本題に移り、オープン質問を用いて情報を収集する。
そして、聴取を終えたならば
(6)「他に話しておきたいことはないか」等の確認を行い、面接を終了する(クロージングという)。
 
本書では、「誘いかけ」(「~のことを話してください」)とWH質問(「誰」「どこ」等)を「オープン質問」と定義し
できるだけオープン質問を用いること
 
やむを得ずクローズド質問(回答の幅に制約がある質問:「はい」「いいえ」で答える質問や選択式の質問)を行った場合は、できるだけその回答をオープン質問で拡張するように指示している
(例えば「車を見ましたか?」に対し「はい」という返事が得られたならば、「では、その車のことを詳しく話してください」等)。
 
また、特定の内容を示唆する誘導質問「叩きましたか」や暗示的な発話「あなたは××に叩かれたから、ここに来ました」は避けなければならない。
 
特に、子どもがまだ話していないことを尋ねるような質問(「叩かれた」と言っていないのに「どこを叩かれましたか」等)は注意が必要である。
 
なお、司法面接では面接者が子どもに面接する「面接室」とは別に
必要な分野の専門家が待機し、面接を視聴する[モニター室]を用いるのが一般的である。
 
このようにして、各職種の専門家が一度で出来事に関する情報を共有できれば
子どもが複数の専門機関を訪れ、そのたびに被害報告を求められる負担は軽減される。
(この点では日本での「代表面接」形式よりも進んでいるように思えます)