「意見と事実-事実を正確に伝えるためには-」 その3
前回の練習問題の続きです
[5] 「断定」について理解するためには、一つのことがらを①よい感じの表現②悪い感じの表現と、二通りの言い方をしてみるとよい。
例えば「役員会から提出された新規の事業計画について、社長は三日後にようやく決断を下した。」という事実に対して、
①よい感じの表現 … 社長はきわめて慎重に対処する。
②悪い感じの表現 … 社長は決断力に欠けるところがある。
という二つの「断定」ができる。
それでは、次のことがらについて、二通りの断定を試みてみよう。
ア、彼はただ一人、その提案に反対し続けた。
①よい感じの表現
②悪い感じの表現
*ヒント ①信念 ②がんこ
(解答例)
①彼は自分の信念からただ一人、その提案に反対し続けた。
②彼は頑固さからただ一人、その提案に反対し続けた。
①よい感じの表現 →
②悪い感じの表現 →
*ヒント ①一生懸命 ②だらだらと
(解答例)
①野球部は毎日七時過ぎまで一生懸命練習している。
②野球部は毎日七時過ぎまでだらだらと練習をしている。
※このように同じことでも立場の違いによって同じ事実から全く正反対の内容で表現することができることに注意したい。
自分に有利になるように文を書くのは当然のことであるが、相手が事実を有利に表現するために行っていることを鵜呑みにしてはならない。
[文章を書く時の心得]
①文章を書く場合、事実だけを羅列したのではよい文章にはなりにくいし、書き手の意見だけを繰り返しても説得力のある文章にはならない。
具体的な事例と、自分の判断や見解などとを、適切に組み合わせることが大切である。
②その際、自分の推論や断定については、それが自分の意見であることを明示した形にするよう心がけたい。
事実と意見との区別には難しい点もあるのだが、表現方法などを工夫することによって、読み手にもよくわかるようにしたい。
③なお、文章中に他人の意見(著書・論文・話など)を引用することがある。とりわけ論説的な文章においては有効な方法であるが、その場合も、引用する部分と、自分の意見を述べる部分とを、明確に区別して、両者が混同しないように書かなければならない。
「事実と意見」
その1 事実を正確に伝えるためには
その2 事実と推論と意見とを区別する