学校間での「健康格差」は公式に発表されることがないので「教育格差」で話題に取り上げられることはあることはりませんが
子どもの成績と健康に直接の関係があることは
何となく直感でも理解できることです。
「有病率」というものがあります。
「ある指定された時点における所与の人口集団内で特定の疾病や健康状態を有するものの数」と説明されています。
簡単に言えば集団の中で何人病気をもっているかということです。
厳密に言えば何をもって病気とするか
病気が妨げるものは何かというむずかしい問題を抱えていますが
ここでは今まで話題にならなかったものを話題にするということで勘弁してもらいたいと思います。
これから書くことはわたしが以前、口頭できいた事ですから
数字を確かめたわけでもありません。
現在でも守秘義務のため公式に確認できないと思います。
その前提での話です。
かつて、勤めていた大阪府立の〇〇高校のことです。
よく知られているように受験ランキングの低い学校の保健室では
ひっきりなしにくる子どもを
ここで相手しないといけないのか
そのまま説得して授業に戻すのかを
区分けしないといけない
いわばトリアージをしないといけない戦場のような状態です。
そのケアのために担任をすると保健室との行き来ができます。
相談したりされたりという関係です。
そこで世話話をしていると養護教諭(いわゆる保健室の先生です)がぼそっと口にしたのが
「学校有病率」のことです。
「うちの学校は全国有病率平均の2倍以上だ」というのです。
自分のクラスで病気をもった子が目立っているのは実感していましたが
他のクラス、ましてや他の学校と比べる発想はもっていませんでした。
学校の保健部では「生徒保健カード」で有病率の推定ができます。
ですから、全体では政府統計があり公表されていますが
社会問題になるので学校ごとのデータが公表されることはないでしょうね。
話をいったん変えます。
昨年7月に上梓した『教育格差』から最近の「読売新聞」「文藝春秋」での活動へと
早稲田大学准教授の松岡亮二さんが活発に論陣を張っています。
松岡さんはデータからすると
今の日本は「出身家庭の社会経済的地位(経済的・文化的・社会的要素を統合した地位)」と「出身地域」という、本人が選んだわけではない「生まれ」によって最終学歴が異なる「教育格差社会」だとしています。
ただし
「データが示す社会全体の実態」と「個人の見聞に基づく実感」に食い違いがあり
その食い違いを明らかにすることからしか「教育格差」の議論は出来ないとしています。
狭い意味では「病気」は「教育格差」ではありません。
確かに、どんな「出身家庭」の子でも、どんな「出身地域」の子でも病気になります。
しかし
病気が子どもを不利にするのは「出身家庭の社会経済的地位」や「出身地域」です。
実際
わたしが在職中に驚いたのは子どもの虫歯へのかかり方です。
十数年前ぐらいからだと思いますが
全く虫歯が無い子と虫歯だらけの子にはっきり分かれて来たことです。
これは親が子どもにどれだけの手間をかけているかの証しだと考えられます。
それと医療が十分に行われているかです。
予防歯科の発想をもった歯科医や小児歯科がいないところでは
やっぱり予防はむずかしいと思います。
さらに
高校の場合は成績で受験校が分けられます。
当然上位校は内申成績の高い子が受験します。
成績には当然体育も入っています。
トップ校(公立の場合ですが)を受験しようとすれば
たいてはオール5(5段階で)に近い成績を求められます。
ですから
上位校受験者のほとんどが健康体で運動能力が高い子である率が高いのです。
つまり
今の日本では健康体でない者は学歴でも非常に不利な立場に置かれます。
親が子どもの病気を理解する教養
病気の子どもを不利にしないだけの収入がなければ
「健康格差」はそのまま「教育格差」になります。