【以下ニュースソース引用】
「仕事で生涯現役、セミリタイア」のどっちが幸せか…中堅医療機器メーカーを定年前に辞めた女性の結論
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marekuliasz
仕事で生涯現役を貫くのと定年前にセミリタイアするのはどっちが幸せか。
精神科医の保坂隆さんは「私は50代半ばで管理職を命じられたことをきっかけに『元気な間に自分が本当にやりたいことをやろう』と決意しセミリタイアすると、精神的に非常に満足度の高い日々を過ごせた。
定年後も同じで、収入の代わりに、時間というもう1つの人生の財産が手に入ると考えれば恵まれた暮らしとなる」という――。
※本稿は、保坂隆『お金をかけない「老後」の楽しみ方』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
■セミ引退体験で精神的には非常に満足度の高い日々 定年前に仕事を辞める……。
実は、私はそんな体験をしています。
50代半ばで勤めていた病院を辞めてしまったのです。
履歴などを書くときは次に勤めた病院を続けて書くので、前の病院を辞めてすぐに次の病院に移ったと思われている人も少なくないようですが、それは誤解。
前の病院を辞めたときには、先の見通しはまったくなかったのです。
それでも辞めたいと思ったのは、管理職を命じられたからでした。
管理職になることは組織人としては「出世」であり、一般的には喜んでいいことだと考える人も少なくないでしょう。
でも私にとっては、後進の指導をするとか部署をまとめるなどの仕事が増え、自分が本当にやりたい仕事から離れていくことを意味していました。
そこで考えた末、「元気な間に自分が本当にやりたいことをやろう」と決意したわけです。経済的な保障はなくなり、実際それ以後、聖路加国際病院(当時)のお話があるまでは週2回、ある病院で外来を担当させてもらう、いわゆるアルバイト生活を送りました。
この間、経済的には不安もありましたが、以前からやりたいと思っていた地域医療のモデルづくりなどに関わることもでき、精神的には非常に満足度の高い日々だったと胸を張れます。
それから2年後、聖路加国際病院に移ったのですが、ここでは私が本当にやりたかった領域の専門医として仕事をさせていただいたので心から満足し、迎え入れてくれた病院にも大変感謝しています。
こうした経験から私は、お金では得られない満足感があることを体験的に知ったのです。
定年後は、確かに収入は減るかもしれませんが、その代わりに、時間というもう1つの人生の財産が手に入るのです。
それを考えれば、定年後の年金暮らしというのは、別の豊かさに満たされる恵まれた暮らしといえるのではないでしょうか。
■超高齢者から高齢者に遺産が受け継がれる時代に
老後といえば、反射的に生活のダウンサイジングとか介護の不安という言葉が出てきてしまいますが、その一方で、高齢者はかなりの額のお金を持っていて、しかし、それを使おうとしない傾向も顕著なようです。
金融広報中央委員会の調査によれば、2021年時点で、二人以上世帯で世帯主が60代の世帯、70代の世帯で平均貯蓄額は2000万円を超えており、それ以下の世代と比べて突出しているそうです。
実に60代で日本の家計金融資産の26パーセント、70代以上で37パーセントを所有しているのです。
これには「超高齢化」も関係しています。
最近は、遺産が超高齢者から高齢者に受け継がれている傾向が強く、これも金融資産を高齢者に偏在させている大きな理由になっているという指摘もあります。
私から見れば、遺産を受け継いだような場合、高齢者はなぜそれを金融資産に回してしまうのか、残りの人生を楽しむために使おうとしないのか、ちょっと不思議です。
65歳、70歳ともなれば、残りの人生の展望も見えてくるでしょう。
旅行に出かけたり、おいしいものを食べるといっても、それを楽しむ時間がそう長く残されているわけではないことも自覚すべきだと思うのです。
■元気に活動できる間に、どれだけ上手に自分のお金を使いきるか
病気やケガをして健康を損ねたり、あるいは食事制限ができたり、連れ合いに介護が必要になったりする可能性は高くなる一方です。
知人のUさんは、一人で好きなところに、好きなように行けるのは70代半ばぐらいまでだろうと見込みをつけ、60代後半頃から、蓄えを惜しげもなく取り崩すようになったと笑っています。
元気でいられる残り時間を精一杯楽しもうと方向転換したわけです。
「お金は本来、貯めておくものではなく、生かして使うものだから」というUさんの考え方はまことに的確なものだと思います。
昔から「棺を閉じるその瞬間に、最後のコインをチャリンと落とす。
そんな生き方ができたら最高だ」とよく言われます。
いつまでも不安にかられて大枚を握りしめていても、あの世に持っていくことはできないのです。
人生の持ち時間、それも元気に活動できる間で、どれだけ上手に自分のお金を使いきることができるか。
生き方上手かどうかは、ここで分かれるのではないでしょうか。
■お金持ちより時間持ち
仕事で「生涯現役」を目指す生き方もあるでしょうが、一方では、好きなことをする時間が欲しいと仕事を早めに退いてしまう生き方もあっていいはずです。
Yさんも、そんなお金持ちより「時間持ち」という生き方を選んだ一人です。
Yさんとの付き合いは、もう十年以上になるでしょうか。
中堅の医療機器メーカーを定年前に辞めて、その後はフリーの医療コンサルタントをしています。
「下の子が大学を出て社会人になったので、そろそろいいかなと思ったんだ」と話していますが、メーカーを早めに辞めた本音は、好きなことを好きなようにできる体力が残っている間に、自由に時間を使える立場を確保したいという気持ちが強かったのだそうです。
会社を辞めて最初に試みたのは、アメリカでのホームステイ生活でした。
若い日からの夢をようやく実現させたのです。
目的地に選んだのはケンタッキー州。理由は特になく「バーボンが好きだったから」と笑っていますが、ここでアメリカ人家庭に滞在しながら語学学校に通い、残りの時間や週末はレンタカーであちこち旅行三昧だったとか。
アメリカの古きよき時代の面影が残っていて、ニューヨークやロサンゼルスとは一味違ったアメリカを体験できたそうです。
それ以来、Yさんはほとんど毎年のように、半月~一カ月くらいの海外ホームステイに出かけました。
北欧や、ニュージーランドへ――。
一回あたりの費用は40万円前後(当時)。
パッケージツアーに比べると割安です。
しかもホストファミリーとその後も長く親しい関係になれるなどのメリットも大きな旅の楽しみ方だと、大いに気に入っている様子です。
■明確な目的があれば、ケチケチ生活も楽しい
「言葉の壁が……」と悩む必要はありません。
カタコト英語で十分です。ホームステイを受け入れてくれるファミリーは、言葉が満足にできない人への対応は馴れっ子になっているし、乏しいボキャブラリーでもちゃんと意思の疎通はできるものです。
言葉はできるに越したことはありませんが、「達者でなくてもコミュニケーションは何とかなるものだ」という自信を得ることもできるでしょう。
これも意外なメリットといえるかもしれません。
海外のホームステイに興味のある方は「日本国際生活体験協会(EIL)」などのホームステイ斡旋機関に、コンタクトを取ってみてください。
EILは公益社団法人で、現在、加盟23カ国のホームステイプログラムを提供しています。
Yさんは、次はフリーの医療コンサルタントの仕事をもっとセーブして、半年か一年、海外で暮らすことを計画中だとか。
そのための預金にも励んでいるそうで、ふだんの暮らしは「ケチケチ生活だよ」と大きく笑います。
こんな明確な目的があれば、ケチケチ生活も楽しいかもしれませんね。
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保坂 隆(ほさか・たかし) 精神科医 1952年山梨県生まれ。保坂サイコオンコロジー・クリニック院長、聖路加国際病院診療教育アドバイザー。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学。東海大学医学部教授(精神医学)、聖路加国際病院リエゾンセンター長・精神腫瘍科部長、聖路加国際大学臨床教授を経て、2017年より現職。また実際に仏門に入るなど仏教に造詣が深い。著書に『精神科医が教える50歳からの人生を楽しむ老後術』『精神科医が教える50歳からのお金がなくても平気な老後術』(大和書房)、『精神科医が教えるちょこっとずぼら老後のすすめ』(海竜社)など多数。
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精神科医 保坂 隆
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