【以下ニュースソース引用】
老齢医療の現場で医師は見た…「元気なうちにやっておけばよかった」と多くの人が死に際に思う"後悔の内容"
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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/eclipse_images
高齢者はお金とどう向き合えばいいか。医師の和田秀樹さんは「高齢になったら、お金に対する考え方を改めるといい。
体も心も元気で、頭もしっかりしているうちに、お金をどんどん使って人生を楽しむべきだ。
老年医学に長い間携わってきた中で、患者さんが死ぬ前に後悔していたことの一つが、『お金をもっと使っておけばよかった』である。
自分の楽しみにお金を使うこと、余裕があれば他人のためにも使うことで幸せを感じられ、それが心の健康や免疫力アップにつながり、ひいては老いを遅らせることにもなる」という――。
※本稿は、和田秀樹『みんなボケるんだから恐れず軽やかに老いを味わい尽くす』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■良妻賢母よりスケベじじいが愛される理由
ある老人ホームのスタッフから、こんな話を聞きました。
その施設には、同じ認知症なのに、みんなに好かれているおじいさんと、えらく嫌われているおばあさんがいるそうです。
おじいさんは、いわゆる「スケベじじい」で、ときどきヘルパーさんのお尻をさわったりするのですが、いつもニコニコしていて朗らかで、スタッフからは「どこか憎めない」ということで、笑ってゆるされます。
一方、おばあさんのほうはいつも不機嫌で、すぐに他人を責め、ヘルパーさんや看護師さんにも文句ばかり言っています。
物を盗られたという被害妄想も強くて、入所者は誰も近づきません。
興味深かったのは、その二人の生い立ちです。
おじいさんは若いときからスケベで、浮気が絶えなかったそうです。
妻からはもちろん、子どもたちからも尊敬されることはありませんでした。
かたや、おばあさんは、ずっと家族に尽くしてきた良妻賢母でした。
周りからは「偉いねえ」「よくやるねえ」と感心されていたといいます。
■真面目一筋の人は、いつも自分を厳しく戒める
「ボケても愛される人」と「ボケて疎んじられる人」との違いは何なのか?
認知症の高齢者を数多く診てきた私の経験から言えるのは、若い頃から我慢を重ねてきた人のほうが、高齢者になったとき、人あたりが厳しくなる傾向があるということです。
真面目一筋の人は、いつも自分を厳しく戒めています。
中には自分と同じように他人にも厳しい目を向ける人が少なくありません。
老いても、その姿勢は変わることなく、脳の老化によって感情だけがコントロールできなくなっていく。
その結果、頑なで嫌われるような言動が多くなってしまうのだと思います。
若い頃から浮気ばかりしてきたような人は、ボケてものびのびしていて、周りから愛されている。浮気をするのが良いとは言えませんが、自由に生きていたほうが結果的にいいということではないでしょうか。
■認知症は、自分の欠落症状に対する人格の反応である
私が浴風会病院に勤めていたとき、当時、精神科の部長だった故竹たけ中星郎(なかほしろう)先生には、ずいぶん多くのことを教えていただきました。
その後の私にとって実に意味のある学びだったと感謝しているのですが、竹中先生は認知症について、こんなことをおっしゃっていました。
「認知症は、自分の欠落症状に対する人格の反応である」
簡単に言えば、認知症の症状は、いままでの自分に備わっていた能力が欠け始めたことに対して、もとの性格が反応し、さまざまな形で現れるのだというのです。
たとえば、欠落症状の一つ「記憶障害」が起きて、財布をどこに置いたか思い出せないとしましょう。
もともとの性格が疑り深い人なら、盗まれたと騒ぐ。
生来クヨクヨしがちな人であれば、気分が落ち込んで、ひどいときはうつになる可能性もあるでしょう。
もともとおおらかな人なら、まったく気にしないかもしれません。
要するに、認知症であれば欠落症状は誰にでも起こるものですが、その人のもとの性格によって、現れる症状はまったく異なるということです。
■お金を使うことが心の健康や免疫力アップにつながる
認知症に限らず、高齢になると、もともとの性格の「先鋭化」が起こります。
前頭葉の機能が低下して、感情の抑制が緩んでくるため、怒りっぽい人はより怒りっぽく、心配性の人はより心配性に、頑固な人はより頑固になるわけです。
認知症を発症すると、ますますそういう傾向が強くなります。
個人の性格は、その人が長い年月をかけて培ってきたものですから、根こそぎ変えるのはとても難しい。
しかし、もともとの性格を変えることは無理にしても、思考のクセは変えられるはずです。
できるだけ早いうちから考え方を楽観的な方向へ、明るく気楽なほうへと転換したほうが、とくに第二の人生は生きやすくなると思います。
高齢になったら、ぜひ、お金に対する考え方も改めてください。
将来への不安が強いためか、年金をもらえるようになってからも、お金を貯め込んでいる高齢者が少なくありません。
しかし、老年医学に長い間携わってきた中で、患者さんが死ぬ前に後悔していたことの一つが、「お金をもっと使っておけばよかった」なのです。
人間は体が弱ってきたり認知症が重くなってきたりすると、意外とお金を使えません。
旅行やグルメを楽しむ体力も気力もなくなりますし、介護保険を使えば特別養護老人ホームに入ったところで、費用はたいがい厚生年金の範囲で収まります。
そのときに初めて、一生懸命に節約して貯金しなくてもよかった、もっと使っておけばよかったと後悔するわけです。
だからこそ、体も心も元気で、頭もしっかりしているうちに、お金をどんどん使って人生を楽しむべきだと思います。
お金は持っているよりも使ってこそ価値がある、というふうに考え方を変えてほしいのです。
自分の楽しみにお金を使うこと、余裕があれば他人のためにも使うことで幸せを感じられ、それが心の健康や免疫力アップにつながり、ひいては老いを遅らせることになります。
■たまの贅沢をすることで、前頭葉は刺激される
実は、お金を何に使おうか、と考えるだけでも前頭葉は働きます。
ちょっと奮発して欲しかったものを買ったときなどアドレナリンが放出されて気分がガッと上がり、「よし、明日からも頑張るぞ!」とやる気が湧いてくるでしょう。
これが前頭葉が刺激されている証拠で、いつもは躊躇(ちゅうちょ)するような高価な買い物をしたときのほうが、前頭葉への刺激は大きくなるのです。
質素倹約を心がけている人でも、たまにはぜいたくしたほうがいい。
月に一度くらいは豪華な食事をしたり、温泉に出かけたり、何らかのぜいたくをするだけで、前頭葉は刺激されて心も豊かになります。
私は、ワインが好きなので、何か仕事を頑張ったときは、いいワインを飲みます。
お金はかかりますが、おいしいワインを飲んでいるときは何とも言えない至福のひとときです。
そんな私もコロナ禍でワインどころではなくなりました。
代表を務めている通信教育の会社のお客さんが激減して、講演などの依頼もどんどんなくなり、毎月のマンションのローンが払えない状況にまで陥りました。
そのため借金もつくりましたし、いつか大事なときに飲もうと思って大事にストックしていたワインを泣く泣く手放して、ローンの返済にあてたこともあります。
■輝く思い出があれば、寝たきり人生の支えになる
でも、そのとき、「高いワインを買ってぜいたくをしなければよかった」などという後悔はまったくしませんでした。
「おいしいワインを飲む」という経験ができたことに満たされていましたし、このまま貧乏になったとしても、あのときの経験を糧にして生きていけるとさえ思ったのです。
幸い、コロナ禍が終わって経済が回復し、そのうえ、著書も売れたので、どうにか持ち直すことができましたが、その経験から、「奮発して楽しんだ思い出は、自分を支える一生の財産になる」と気づかされました。
実際、ホームに入っている高齢者たちを見ていても、「若い頃、こんなすごい経験をした」「あのときは大金すってすっからかんになったけど、あんなに愉快だったことはない」などと、楽しい思い出を語るときは生き生きとしています。
もし寝たきりになったとしても、そういう輝く思い出が、その後の人生を支えてくれると思います。これこそ、生きたお金の使い方ではないでしょうか。
結局のところ、人間、死ぬ間際まで残るのは「思い出」しかありません。
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和田 秀樹(わだ・ひでき) 精神科医 1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」
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精神科医 和田 秀樹
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