僕が死ぬ日・・生まれる日 -34ページ目

僕が死ぬ日・・生まれる日

僕が死んで・・生まれる日までの記録

そんな時に偶然見つけた一つのブログ・・カテゴリーは「ネットアイドル」だった気がす

る。タイトルは何だったのだろ??あ~そうだ!「平成乙女委員会!まいのブログ」だったような気がするが少し自信は無い。

なんとなく次の作品のイメージがそんなタイトルを見つめながら浮かんだ。

そうだ!アイドルを追いかけるオタク男が主人公の話を書こう!そうしょう・・

しかし、そう思っては見たものの生憎、私は芸能人を溺愛するような人間ではなかった。

正直、アイドルと言うTVの中の生き物を崇拝する人間の気持ちが理解できない。

手の届かない相手に恋をする。そんな恋愛を誠はくだらないと思っていた。

好きになると言う事はもしかしたらと言う未来が前提である。

一般の人間ならばどんな美人でも可能性が無い訳ではない!しかし芸能人は違う・・

未来も何もまず、知り合う事すら無理である。そんな相手を好きになり時間と金をつぎ込む人間の心理がどうしても誠には理解できなかった。

ふと魔が差したとでも言うのだろうか?なんとなく何時もは思わないが、自らが体験しなければそんな人間の気持ちなど解るわけが無いなどと思ったりしてみた。

誰でも良かった!などと言ってはあまりにもその相手に失礼であるが・・とりあえずこの子で良いか?そんな軽い気持ちでこの「まい」と名乗るアイドルのファンになる事に決めた。幸い?な事に彼女のブログは実に寂れたブログであった。

アイドルなんて言うがそれこそ何千人も居る。TVなどでお馴染みの人間から見た事も聞いた事も無いような人間まで・・それは作家の世界でも同じである。自称・・小説家!

そんな人間が世の中には溢れているのであるから・・

まずは何をしょう?そう考えた私は、まず、彼女にファンである事を宣言する事から始めた。

「まず、読者登録だな!」

そう私は呟き未だに誰も登録していない読者登録のアイコンをクイックした。

そうだ!コメントはどうしょう?こんな時に彼らはどんなコメントを書くのだろう?

「一目ぼれです!あなたにファンになりました!よろしければ読者登録をお願いします!」

まぁ~こんな所か?素人が書くのだから・・

そんな事を思いながらそう書き込む。なんとなくドキドキした。これがファン心理と言うものなのだろうか??

読者登録を済ませると私は速攻で彼女の事をネットで調べる作業に移った。

「平成乙女委員会」そう検索欄に打ち込み検索をする。

山梨名物!平成乙女委員会!そんな項目が画面に表示され20件の項目が表示された。

20件?こんなものか?アイドルだろ?そんな事を思いながらメインのホームページに行ってみる。そこには20名ほどの少女達の集合写真が貼られていてこんな言葉が・・

山梨名物、平成乙女委員会!参上!

その時、私は初めてこのグループが地下アイドルと呼ばれるアイドルだと知った。

私の東京での新しい生活が始まった。高卒で就職して17年間勤め上げたスーパーを辞める事はあまりも簡単であった。一応は主任なんてどうでも良い肩書きを貰っていた私であったが、会社にとって私と言う人間が引き止める程の人間では無かった事をその時、初めて実感した。ならば・・私の17年間はいったい何だったのか??私の・・

私が辞表を出した時に上司はまるで私の不幸を祈るかのように言った。

「人生はそんなに甘くないよ!」と

そんな事は自分が一番理解してる事であった。そして自分が一番、不安に感じてる事であった。私はもう一度、深々と頭を彼に下げて呟いた。

「一応、貯金が3億ほどありますから・・ご心配ありがとうございます!」と

そんな言葉がなんとなく空しく感じられた。

東京での生活が始まった。妻はまるで水を得た魚のように生き生きとし始めた。

本当は3億では無かった。残りの金は一応のへそくりとして私の個人の隠し口座に収めてある。今まで私を駄目男と罵っていた妻の両親達も自分の娘と可愛い孫が手元に戻って来てくれた事と思いもよらない大金が突然に転がり込んで来た幸運に家のリフォームをするのだと建築関係の雑誌を楽しそうに見つめていた。

「行ってらっしゃい!」の言葉も無く私は毎朝、仕事場に向う。

ただ、妻が私に言う言葉があるとすれば、今、抱えている仕事で月に幾らぐらいの原稿料が入るのか?ぐらいの会話である。

月に30万円・・そこから20万円家に入れる。それが私の価値である。

私は堅苦しい自宅を後にし仕事場に着くとホッとため息を付き自宅で禁止されているタバコを美味そうに吹かした。

作家などと言う仕事は、仕事があって無いような物である。正直、気が向かないと文字など書ける訳が無い!頭に文字が浮かばない時はパチンコに行くかボォ~とパソコンでネットでも検索しながら時を待つ。今までは仕事の合間に書いていた文字である。

それが、そのれだけになると実に時間が有り余っている事に気がつく。

多くの小説家は念密な構成の元にプロットを作成して下調べをして・・・

そして一つの物語を完成させて行く!しかし私はそれが出来なかった。

私は一度、物語を何の下調べも無く完結させる。そしてそれを読み返しながら物語を完成させて行く!そんな書き方をしていた。一度、プロの作家のように構成なんて物をやってみたが、構成をしている時に頭の中で物語がドンドン進んでしまい挙句には頭の中が空っぽになってしまい出来上がった小説はあまりにも駄作になってしまい!逃げて行った素晴らしい文字達を思い出そうと懸命になったが結局は思い出す事が出来ずに・・

自分がそんな書き方に向かない事を実感した。

そんなある日、私は別に何をする事も無くただ、ネットを見ていた。

ブログを適当に検索してはその内容を読んでいた・・



私はそんな程度の人間なのである。

「色々、先の事は考えて居るよ!」

そう呟きながら私は鞄から一冊の貯金通帳を取り出し妻に見せた。

その通帳の中身を見た瞬間に妻の顔色が変わった・・

「あ・・あんた!何でこんなにお金を持っているのよ!」

もの凄い喜びの顔と何か悪い事でもしてるんじゃと言う不安げな顔・・

妻は同時に二つの顔を私に見せながら私に罵声を上げた。

「いや・・ベッキーと言う名の作家を君は知っているか?」

まったく本など読まない妻がそんな作家を知っている訳が無かった。

「知らないけど・・それとあなたと何か関係があるの?」

「い・・いや・・それが僕なんだ!僕はベッキーと言う名前で4年ほど本を書いていたんだ!」

そんな言葉を妻が、はいそうですか!と簡単に信じる訳も無い。

仕方なく私は一冊の本を鞄から取り出す。

私の処女作の「陽炎」である。そのハードカバーの裏に作者プロフィールなんて欄があり

そこに意味無くタバコを一本、咥えている私の写真が乗っていた。

「ち・・ちょっと!待ってよ!ちょっと・・」

妻は少しだけ焦りながら読書好きの友人に電話を入れる・・

「ねぇ!ちょっと、うちに旦那!作家だって知っていた??」

そんな突拍子も無い言葉に相手の声が受話器から漏れて聞こえる・・

「そうでしょ!ベッキーでしょ!なんか似てると思ってたのよ!誠さんに・・

でもあんたが、何も言わないからさ~人違いだと思っていたの!

やっぱり!そうなのね!ベッキーなのね!なんか感激よ!

でも・・あんた、何で今頃、言い出したのよ?」

そんな彼女の言葉に妻は不機嫌そうに言った。

「今・・知ったからよ!旦那が小説家だって・・」と

それから妻は私に聞こえないようなヒソヒソ声で私の可能性の確認を始める。

私が妻に仕事を辞めると言って2週間後に結論が出たらしく、晴れて私の退職が許可されたのであった。

それを期に住み慣れた静岡を後にし、私達家族は東京に引越しをする事になる。

以前から私が仕事を理由に拒み続けて来た妻の親と同居をする為である。

私は自由と引き換えに不自由を抱え込んでしまった気になる。

いったいどちらが幸せだったのか?正直、今でも解らない。一つだけ救われたのは

「仕事場」と言う名の自分の世界を手に居いれる事に成功したくらいだろうか??

そんなこんなで・・私の小説家としての人生が始まった。

ある意味、こんな世界に身を置く事になったのは必然ではなく偶然なのかもしれない・・